絵本 あな

絵本 あな

絵本 あなの表紙です

絵本 あな
◆年齢◆
読んであげるなら4、5才向き。
自分で読むなら小学校低学年向き。


◆ジャンル◆
◆まいにち絵本

◆シチュエーション◆
◆該当なし


谷川俊太郎 文:和田誠 画

編集・発行 福音館書店
発売 福音館書店

初版年月日:1983年03月05日 ISBNコード:4-8340-0921-1

32ページ 20X27cm 840円(本体800円+税40円)


通常版はこちら!  定価840円(本体800円+税40円)

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まず表紙を見ますと、タイトル「あな」とあって、周囲がつち色、真ん中に空色の大きな丸が描かれています。

その丸の中をちょうちょうが飛んでいます。これが穴?少し変ですね。どんなお話なのでしょうか?
この絵本は、縦開きの絵本です。そこで上に開くと、見返しは真っ白。絵本は隅から隅までお話で埋まっています。ですからこの見返しの真っ白も何かを物語っていますが、まだここではわかりません。
見返しを上に開くと扉です。上、三分の一ほどが白く、下がつち色です。扉の下ページの一番上に、「あな」というタイトル。上の白い部分が空で、下のつち色部分が、地面なのでしょうか?。
扉をあけますと、男の子が立っています。これで扉絵はやはり上が空間、下が地面であることが判明しました。
「にちようびの あさ、なにも することがなかったので、ひろしは あなを ほりはじめました」
空は、真っ青。非常に天気のよい日曜日のことです。
ひろしが穴を掘っていると、いろんな人がやってきて、「なにをしているの」と聞きます。
人が何かをやっていると、必ずその目的を聞きたがります。まるで意味のない行動は、この世にはないかのように。
あるいは、その行為をなぜか、手伝いしたがったり、同じことをやりたがります。
はては、人の行為を解釈しないと気が収まらないようです。
ひろしは手に豆ができても、汗まみれになっても「もっと ほるんだ。もっと ふかく」と掘り続けます。
人は、ひろしのように、自分でもなぜしているのか分からないことをやり続け、その行為自体が自己目的なる場合があります。
とくに子どもの遊ぶ姿をみていると、行為の意味は後からついてくる場合も多いのです。
たとえば、砂場遊びや積み木遊び。
砂場にくると、なにはともあれ穴を掘り始めます。たまたまそこに水が入ってきたりすると、それは池になってしまいます。
積み木遊びでは、とにかく積むことから始まります。どんどん高く積んでいきます。それがビルになるかどうかは結果です。
穴を掘り続けるひろしにはそんなところがあります。そして、たまたま、いも虫に出会って、ふっと肩から力が抜けます。気がついてみれば、結果として深い深い穴をほってしまっているのです。
「これは ぼくの あなだ」
これは実感でしょうね。まぎれもなく自分の掘った穴なのですから。
この穴の中に、じっと座っていると、ひろしは意外なやすらぎを見いだすことができました。それは自分で掘ったという満足感と、穴そのものがもたらすやすらぎです。
「あなの なかは しずかだった。つちは いいにおいがした」
やすらぎを得ようとして掘った穴ではないけれど、穴の中から上をみあげると、「井の中の蛙大海を知らず、されど、空の深さを知る」ということわざを文字通り体験できたのです。いつもの空が、驚くほど新鮮に感じられたのです。
(表紙の空色のまん丸は、ひろしの穴から空を見たところだったのですね。そこをちょうちょうがふわふわ横切っていきました)
「ひろしは、はずみをつけて穴から上がりました。そして穴をのぞき込んだ。穴は深くて暗かった…」
空は夕方の空になりました。
「これは ぼくの あなだ」
そうしてゆっくり穴を埋めはじめました。
最後のページは、ひろしもいなくなり、夜になりました。地面は何事もなかったように埋められています。
ひろしが穴の中にじっとしていることを、胎内(ぬくぬくとした世界)めぐりと考えることもできます。ひろしはしかし、「はずみをつけて」日常の世界へ帰ってきます。「ぼくの穴だ」と確認しつつも、きっぱりとその穴を埋めて(心の底へしまって)しまいます。ひろしは生まれ変わり、再生したのです。
胎内めぐりを目的に穴を掘った訳ではないのですが、穴は元来そういった向こうの、別の世界だったことをひろしは知りました。むこう側からみた「日常世界」は、実に新鮮な世界であることを体験したことによって、ひろしは再生したと考えられます。もう穴を掘る前のひろしとは別人になったのです。これは成長といわれるものでしょう。
いも虫にご注目ください。
いも虫も、ひろしが掘り進むと同時に、左方向から掘り進んできます。そして穴の中で、ひろしと出会います。
それはひろしにとって、「ふっと肩から力の抜ける」出会いでした。
夢中で何かやっているとき、ある出会いがそうしたきっかけになることがあります。この出会いによって、ひろしは「この穴は、ぼくの穴だ(僕自身なのだ)」と、いも虫に教えてもらう訳でもないのに、気づくことになりました。
《定点観測》
この絵本を見る読者の視点は、まったく動きません。画家は同じ視点から等距離にひろしの行動を見つめています。そして、読者の意識は、この視点とひろしのこころをいったりきたりします。
物語というものは、人(自分も含めて)の行為をどう見るかという《納得》の仕方ですから、見方は多様ですが、この定点観測は、いらないものは一切排除でき、見ている対象に集中度を高めることができます。
その意味で、この絵本の場合の定点観測は、ひろしのこころのありように読者の意識を集中することができます。



内容紹介です

『にちょうびの あさ、なにもすることがなかったので、ひろしは あなを ほりはじめました』
お母さんが来た。「なに やっているの?」
「あな ほっているのさ」
妹のゆきこが来た。「あたしにも 掘らせて」
「だめ」
隣のしゅうじくんが来て、お父さんも来た。
「あせるなよ、あせっちゃ だめだ」
ひろしは穴を掘り続けた。
手のひらのまめがいたい。汗が流れる。
「もっと掘るんだ。もっと深く」とひろしは思った。

もっと、ほるんだ。

そのとき、大きないも虫が穴のそこから這いだしてきた。
「こんんちは」
いも虫は、だまってまた土の中に帰っていった。
ひろしはふっと肩から力が抜け、座り込んだ。
穴は静かだった。土はいいにおいがした。ひろしは穴の壁をさわってみた。
「これは ぼくの あなだ」
お母さんが来て、また同じことを聞いた。妹が来て、隣のしゅうじくんもきた。
またお父さんもやってきて、
「なかなかいい 穴ができたな」
ひろしは、答えた。「まあね」
そうして穴に座り続けた。
ひろしは上を見上げた。
穴から見る空は、いつもより青く、もっと高く思えた。その空を一匹のちょうちょうが横切った。

うえを、みあげた。

それからひろしは、穴から上がり、穴をのぞいた。
穴は深くて暗かった。
「これは ぼくの 穴だ」







読み聞かせのポイント
この絵本は、けっして大きなドラマが起こるわけではありません。
たんたんと穴を掘って、穴の中に座って空を見るだけのお話です。しかし定点観測によって、そのことを見つめると、微妙な「ひろし」のこころの動きが伝わってきます。
だから、そういった微妙さが伝わるように、むしろ声がじゃまにならにように、読み手の声は淡々としてていいと思います。

絵本 あな
◆年齢◆
読んであげるなら4、5才向き。
自分で読むなら小学校低学年向き。


◆ジャンル◆
◆まいにち絵本

◆シチュエーション◆
◆該当なし


谷川俊太郎 文:和田誠 画

編集・発行 福音館書店
発売 福音館書店

初版年月日:1983年03月05日 ISBNコード:4-8340-0921-1

32ページ 20X27cm 840円(本体800円+税40円)


通常版はこちら!  定価840円(本体800円+税40円)

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