絵本 エルマーのぼうけん

絵本 エルマーのぼうけん

絵本 エルマーのぼうけんの表紙です

絵本 エルマーのぼうけん
◆年齢◆
読んでもらうなら5、6才から
自分で読むなら小学校低学年向き


◆ジャンル◆
◆ファンタジー絵本

◆シチュエーション◆
◆おでかけしよう!絵本



ルース・スタイルス・ガネット 作:ルース・クリスマン・ガネット 絵:渡辺茂男 訳

編集・発行 福音館書店
発売 福音館書店

初版年月日:1963年07月15日 ISBNコード:4-8340-0013-3

128ページ 22X16cm 1155円(本体1100円+税55円)


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この童話は、出版以来40年、すでに120刷に近づいています。

童話のなかで、最長のロングセラー、いまなおベストセラーを続けています。
でも、最初に読んだとき私は、少しも面白いとは思いませんでした。子どもには、この本のどこが、どうして面白いんだろうと、以来ずっと考えていました。
あるとき、「声の文化と文字の文化 (W‐J・オング/〔著〕 桜井直文/〔ほか〕訳 藤原書店 )」という本を読んでいて、はたと気づいたのです。
「そうか、エルマーのぼうけんは、声の文化圏と文字の文化圏の中間にあるのだ。そして、この本は文字面を読んでいるだけでは、その魅力の半分くらいしか分からないのではないか」と。
(1)5、6才児は声の文化から文字の文化への入り口期
子どもはこのころから、文字に興味をもち、文字を読み始めます。それがほぼ完成するのは10才ころで、黙読するようになります。この黙読と耳から聞く文芸の享受の仕方は、大きく異なっています。
声の文化の人びとは、まず物語全体をまるごと飲み込みます。そして、反すうするように、部分を味わいます。文字なら最初からそこに立ち止まったり、前へ帰って読むところです。5、6才児は声の文化から、ちょうど文字の文化への入り口期にいます。ですから、声からイメージをつくることの方が得意です。
声の文化には、昔話と同じ文法が成り立ちます。その特徴は「形」と「線」がくっきりしていて、繰り返しがたくさん使用されるということです。
エルマーのぼうけんの物語のなりたちは、昔話とそっくりです。
それもそのはず、このお話は、エルマーというお父さんが、子どもに語ったものです。最初から語りの文学の設定を持っていました。
エルマーはリュックにいろんなものを詰め込んで出かけますが、ゴム輪をのぞいて、それぞれの動物と対決する際、一種類のものしか使いません。たとえば、歯みがきブラシと歯磨きは「サイ」のときにしか使用されないし、虫めがねはのみ取りに、クシとブラシはライオン用です。だからその伏線となる、リュックへそれらを詰め込む場面では、ていねいに、ひとつひとつ表現されます。図式的といっていいでしょう。耳から聞いていると、そのことはイメージを結びやすく、あとで反すうし、クローズアップするとき、その場面がくっきりとした位置を、全体像のなかで与えられます。
その他にも、この本には、声の文化(神話・昔話・音楽)の手法が、随所に見られます。
●食べる場面が多いこと
「お前を食ってやる」「ちょっとまってください」
これは定型の問答ですね。食べるというモチーフには、深い意味が隠されています。食うと食われる関係には、自然と人間の対等な時代が背景にあります。人間も食べられる存在だったのです。
●音の面白さーネズミの言い間違い。
「やたしも、わだや」
「おっと、まちがい。わたしも、やだわ」
●ワニを並べ橋にする
これはまるで、日本神話の「いなばのしろうさぎ」ですね。
でも、むしろこのイメージは、世界に散らばる、どこにでもある神話で、日本神話が特別というわけではなさそうです。
●知恵を絞って、相手をやっつける、だます、切り抜ける
「人をだます」ことは現代ではあまりよい倫理ではなくなりましたが、昔は、それによって生き抜くかねばなりませんから、「知恵」は、むしろ賞賛されました。人間はか弱いものでした。
●猫に導かれて
昔話には、主人公の望みを聞いて、その方法を教え、旅や冒険に誘い、守ってくれる神さまや精霊が登場します。エルマーの猫は、この神さまや精霊に重ねられています。
エルマーは『猫の言っていたこと思い出したのです。
「とらは、しまではめったに手に入らないチューインガムが特別すきだ」と』、これで取り巻かれた虎から脱出します。
(2)エルマーのぼうけんは、以上のように語りの文学の系統をはっきり受け継いでいることが分かりますが、他方、文字の文学にも足を踏み入れています。
●2ひきのイノシシはどうぶつ島の番人
昔話や神話では次々に出会う相手は二度と登場しません。登場する場合には出会った者がついてくるか、主人公が出会った相手に、逆順に再び会っていくというのが一般的です。この本でも、エルマーが出会った虎、サイ、ライオン、ゴリラは、最後に追いかけてくる場面に、全員がまとまって出てくるだけです。ところが例外の動物がいます。それはイノシシとネズミです。このイノシシは3回も登場しますが、最後までエルマーの姿を見てはいないのです。イノシシはどうぶつ島に侵入した者の痕跡を、ずっと追いかけています。イノシシの疑惑や探索、調査行動について彼ら自身が話すのを、エルマーはこっそりと聞いています。
こうしたいわば前後に困難がある形は、このお話に緊迫感を与えていますが、昔話的ではありません。昔話にも、逃げて逃げてというのはありますが、逃げるその先に起こる出来事は、アクシデントであって、主要な関心は後ろー追いかけてくるものにあります。
エルマーにとっては、二重の意識が必要となります。
●猫の教えとエルマー自身の知恵
前半部では、猫に導かれ、その言葉を思い出すことによって、エルマーは難題をクリアーしていきます。
ところが後半になると、自分が持ってきたリュックの中から、どうすれば当面の難題を解決できるかという知恵を、自分で働かせるようになっていきます。昔話は終始一貫、教えのまま行動しますからね。
●数字
この本には、出てくるものの数が具体的に示してあります。エルマーがみかん島でとったみかんの数は38こ、リュックにつめたももいろぼうつきキャンデーは2ダース、7種類のりぼん。どうぶつ島の7ひきの虎、虫めがねの数と猿の数、ワニの数。あるいは1匹だけのライオン、サイなど。これらの数はすべて辻褄があっているのでしょうか。
そのことは、耳で聞いただけでは、けっしてわかりませんね。
もちろんこれは数あそびであって、教科書のように「エルマーはいくつみかんをたべたでしょう。残っているみかんの数はいくつですか」などとやるのはとんでもないことです。
でも、ふと、たしか2ダースのキャンデーを持って行ったはずなのに、ワニの数は17匹でした。それで橋はかかるの?といった疑問がわくと、やはり文字や数字を何回も読んでいかねばなりません。
「次はどうなる、次は」だけが気になるような、物語の中へどっぷりつかっていた幼児期から、ある日、「エルマー君、こうしたらいいよ」「エルマーはきっとこうするだろう」といった聞き方に気づいてくるのは4、5才からでしょうか。そのとき、たしかに僕・私は、エルマーといっしょにりゅうをたすけにどうぶつ島にいます。エルマーと同じことをし、考えています。
でも、「こうしたらいいよ」と言っている僕・私は、本の外のここにいます。こうした僕・私の行動を、もう一つの目でみることを、5、6才児は発見します。これは成長のあきらかなステップで、日常においてもそのことは「だれそれは、こう考えているはず、でも僕・私はこう思える」などと気づくはずです。いわば自分をモニターする能力が育っているといえます。
こういう時期こそが、文字文化への入り口となります。たとえば、『漁師さんはがたがた震えなかなか教えてくれません。でも、やっと口を開きました。「いままでおおぜいの人が、行ったけれど、だあれも生きて帰ってこねえ。みんな食べられちまったんだろう」』と聞いても、やはりりゅうを助けにいくエルマーは、どんな勇気を持っているんだろう。「僕・私にも、そんな事件は起こらないかな、そのとき僕・私はどうするだろう」と、文字を読む読書は、ここでしばし立ち止まることになります。このように、このモニター能力を促進するのが、自分で読む読書の大きな力なのですね。
「エルマーのぼうけん」は、そういった時期の子どもの欲求に、実によく答えてくれる本だし、実際そうだからこそ、40年を超えるベストセラーであり続けているのではないでしょうか。



内容紹介です

●ぼくのとうさんねこに会う!
『ぼくのとうさんのエルマーが小さかったときのこと』
冷たい雨の日に、街角で年取った猫に会いました。猫はびしょぬれ。こっそり地下室でやしなうことにしましたが、三週間目、とうとう母さんに見つかって、猫は放り出されてしまいました。
エルマーは猫を追いかけて、公園にいきました。
「ぼくは、大きくなったら、飛行機をもつよ。…」
「とってもとっても、空を飛びたいと思いますか?」
「それなら、大きくなってからではなくても、飛ぶ方法があるかもしれませんよ」
こうして、猫はかつて旅行家であったこと、そして最後の旅行「どうぶつ島」で見た、泣きたくなるほどの体験を語りました。

どうぶつ島とみかん島〜

●エルマーにげだす
猫は話を続けました。
「この島の動物たちは大変ななまけもの。どうぶつ島は真ん中を大きな川が流れていて、一方からもう一方へ行くことをすこぶる面倒がっていました。ある日、ちいちゃなりゅうが羽を怪我してして落ちてきました。どうぶつ島の動物たちは、その赤ん坊りゅうを捕まえ、その川の渡し(りゅうですから飛ばすのですが)をするために捉えられてしまいました」
猫はりゅうと友達になり、「いつかきっと助ける」と約束したものの…。
「あなたが飛行機の話をするので、そうだ!」と思ったのです。
「どうです、ひとつやってみては?」
「うん、やってみるとも」とエルマーは答えました。
こうして、「クランベリ行き」の船にこっそり乗り込んだのでした。
エルマーがとうさんのリュックに詰めたものは、
「チューインガム・桃色の棒付キャンデー2ダース、輪ゴム1箱、くろいゴムながぐつ、磁石が1つ、歯ブラシとチューブ入り歯磨き、虫めがね6つ、ジャックナイフ1つ、くしとヘアブラシ、違った色のリボン7本、それから食料となるサンドイッチ25こ、りんご6つ。
●エルマー しまをみつける
(略)
●エルマー 川をみつける
どうぶつ島は、狭い海岸があって、そこから先は、すぐジャングルになっていました。
「川をみつけることだ。川岸のどこかにりゅうが繋がれているはず」
「川は、海に流れ込んでいる。海岸をずっと歩いていけば川がみつかるに違いない」
エルマーは夜中歩きました。怖いことが二つありました。
くしゃみを亀に聞きつけられたことと、もうちょっとで、2ひきのイノシシの間にわりこみそうになったことです。

2匹のイノシシ

「ちかごろ、この島に忍び込んだヤツがいるらしい。その証拠がある。第一にみかんの皮が捨ててあった。第二にネズミの報告によると、おかしな岩があり、詳しく調べたところ、その岩は行方不明である。第三にその岩のあったところに新しいみかんの皮がある。この島にはみかんはないから、誰か運び込んだにちがいない」
●エルマーとらにあう
エルマーは川に沿っていきました。みかん3つ食べましたが、皮は落とさないよう長靴にいれました…。
●エルマー さいにあう
エルマーは空き地から奥に進む道をみつけました。警戒しながら進んで、もう大丈夫と思ったとき、ある曲がり角をまがったひょうしに、そこ2ひきのイノシシがいたのです。
「どうも、なにものかが進入したことはまちがない」
「おれは探すぞ。しんにゅうなんてきらいだぞ」
「やたしも、わだや」
「おっと、まちがい。わたしも、やだわ」
これはネズミだと分かりました。
あまりぐずぐずしていられません。まもなく小さな小川にいきあたり、水をのもうと、じゃぶじゃぶ入っていきました。そのときです。
何か堅いものが、エルマーのズボンを引っかけて持ち上げました。
「かってに、おれさまのなきべそプールにはいってくるやつは、みんな、水のなかに沈めてしまうぞ!」
「泣きたいことってなんですか」
「おれさまが、若かったさいのとき、つのはしんじゅのように白かったのだ」
「まってください、角を白くするいいものがありますよ」
●エルマー ライオンにあう
小川をこえしばらくいくと、大きな声でわめくライオンがいました。ライオンのたてがみは、くしゃくしゃにからみあって、くろいちごの小枝がいっぱいくっついています。ライオンは自分に向かって怒鳴っていたのです。エルマーは空き地のはしをくぐり抜けようとしました。が、ライオンはがあっと飛び上がり、すぐ近くに止まりました。
「だれだ、おまえは?はらをたてたので、おれさまははらぺこだ。おまえを食うのにおあつらえむきだ」

「あなたのたてがみをきれいにするいいものをあげましょう」
エルマーはリュックからくしとブラシと七色のリボンを取り出しました。(表紙画像参照)

表紙です

●エルマー ゴリラにあう
エルマーはパンヤンの木の下で、みかんを4つ食べました。立ち上がろうとすると、あのイノシシの声。
「たまげたこっちゃ。だれもかれも忙しくって、返事もない」
「おれなら、聞き出してみせる!」
「こんどこそ、げんいんをつきとめるぞ!」
話しながら道を曲がっていきました。
エルマーはいそぎました。十字路にでると、道路標識がたっていました。
「右にまがればりゅうの渡し場」
……
●エルマー はしをかける
エルマーは川を横切る方法を考えました。
りゅうはつなで繋がれていて、こちら側からハンドルを回して巻き取るようになっていました。りゅうがこちら側にいるときは、ゴリラが羽をねじまげ、いたくてがまんできなくなったら、むこう側へ飛んでいくという寸法です。
なんと、かわいそうな、りゅうの子どもでしょう。
エルマーは、つなにぶら下がっていこうと、竿に登ろうとしました。そのときバシャンと音がしました。
「おれだよ、わにだよ。いいきもちだよ。ちょいと水の中へ、入ってこないかね?」
「けっこうですよ。ぼくは日が暮れてからは、泳がないことにしているんですよ。うまいものなら持っています。棒付キャンデーはお好きですか?」
「そいつはすてきじゃないか!おうい、みんなきいたか!」17ひきのわにが頭を出しました。
エルマーは1本目を地面にさし、わにがそれをなめている間に、1匹目のしっぽに輪ゴムで2本目を結び、2匹目がなめているあいだにそのしっぽにキャンデーをくくりつけるというやり方で、わにをずらり一列にならべました。ちょうど17匹めのしっぽが川むこうにとどきました。
●エルマー りゅうをみつける
エルマーが15匹目のわにの背中を渡ろうとしたとき、島じゅうのどうぶつの吠え声が川に近づいてきました。
「だまされたあ!だまされたあ!あいつが侵入者だ。りゅうを助けにきたやつだ!」
さあ、エルマーは無事りゅうを助け出せるでしょうか?…







読み聞かせのポイント
長いですから、いっぺんに読めないときは、章ごと分けて読んであげるといいですね。それから、ところどころに挿絵があります。話の進行に合わせ、そこで立ち止まり挿絵を見せてあげてください。
この本は、読んであげただけでは、その面白さのすべては伝わりません。必ずお子さんの身近に置いておきましょう。気になるところが、あちこちにありますから、再度自分で読んで確認するはずです。その意味でも、自分で読む読書のきっかけになりやすい本でもあります。

絵本 エルマーのぼうけん
◆年齢◆
読んでもらうなら5、6才から
自分で読むなら小学校低学年向き


◆ジャンル◆
◆ファンタジー絵本

◆シチュエーション◆
◆おでかけしよう!絵本


ルース・スタイルス・ガネット 作:ルース・クリスマン・ガネット 絵:渡辺茂男 訳

編集・発行 福音館書店
発売 福音館書店

初版年月日:1963年07月15日 ISBNコード:4-8340-0013-3

128ページ 22X16cm 1155円(本体1100円+税55円)


通常版はこちら!  定価1155円(本体1100円+税55円)

「えほんおじさんセット」はこちら!  セット価格1355円(税込)

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ルース・スタイルス・ガネット 作 
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「エルマーと16ぴきのりゅう」
「文庫版  ミス・ヒッコリーと森のなかまたち」キャロライン・シャーウィン・ベイリー 作 坪井郁美 訳
翻訳者 渡辺茂男さん関連図書
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「オズの魔法使い」ライマン・F・バウム 作ウィリアム・W・デンスロウ 画
「クリスマスのまえのばん」 クレメント・C・ムーア 文 ウィリアム・W・デンスロウ 絵
著作 渡辺茂男さん関連図書
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