かにむかし

絵本 かにむかし

絵本 かにむかしの表紙です

絵本 かにむかし
◆年齢◆
読んであげるなら5、6才向き。
自分で読むなら小学校低学年向き。

◆ジャンル◆
◆むかしばなし絵本

◆シチュエーション◆
◆おやすみの前に絵本


木下 順二 文:清水 崑 絵 岩波書店

初版年月日:1959年12月5日 ISBNコード:4-00-115121-9

44ページ 20.7×16.4cm 定価672円(本体640円 + 税32円)

通常版はこちら!  定価672円(本体640円 + 税32円)
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昔話は、同じモチーフのお話が、国や地域によって、登場する「人物やもの」が変化して語られますが、この「かにむかし」は、すでにHPに掲載している「カニのマーヤ(奄美大島の昔話)」と同じお話ですので、較べてお読みください。

その解説に、どこが同じでどこが違うかも書いていますから、ご参照ください。なお、この「かにむかし」は、佐渡の昔話が原話となっています。他に「さるかに合戦」「さるかに」というタイトルでもたくさん本が出版され、その原話(柿争いー仇討ち型)は、ロシアから、東アジア一帯、ネイティブアメリカンまで分布しています。(世界昔話ハンドブック・三省堂)

昔話の原話(注1)と再話(注2)について
昔話の再話者では第一人者である稲田和子さんに、以前インタビューしました。その折の一部、稲田さん(カニのマーヤは稲田和子再話)の再話心得の再掲載と、このお話「かにむかし」の再話者である木下順二さんの文章を引用します。

【稲田】
再話するときは、「原話を尊重すること」を第一に心がけますね。もちろん原話を単に素材とみて、民話物語にする作家のような方法もあります。でも、私は創作的な展開を避け、昔話の表現方法のもつ文体を原話の形のまま留めること、風土(地域的独自性)を大切にしたいと思っています。
ただ、原話がすべていいかというと、そうでもありません。伝承している語り手ががんばりすぎて、あれやこれや飾り過ぎたり、意識しすぎることがあります。…

(注1)原話
耳から耳へ、口伝えに伝わってきた昔話のその元の形。人によっては200も300話も語ることが出来ました。現在ではほとんどいなくなりました。それらをできるかぎり忠実に文字化したものが本になっている場合もあって、日本昔話通観は全国のそれを網羅しています。鈴木サツ全昔話集と語り(福音館書店)のように、部分的にはCDになっている場合もあります。
(注2)再話
原話は地方語ですから、他の地方の人が聞くと全く聞き取れない場合があります。たとえば鈴木サツさんの語りを聞いてもさっぱりわからないですね。それを文字化したものを見ながら聞くと、話は理解できるし、昔話の雰囲気も感じることができます。また、そのまま文字化したものは、口語の無駄がたくさんあります。それらは、やはり子どもには無理でしょう。そこで、だれにでも分かるように原話をわかりやすく文字にしたものを再話といいます。この再話にはいろんな方法があって、同じ昔話でも、再話者ひとりひとり違います。私はマックス・リューティの昔話の文法(これについては、ももたろうなどHP昔話解説をお読み下さい)をふまえ、かつ稲田さんのいう風土を生かしたものがいいと思っています。児童文学作家のものの中には、昔話とはいえないものが横行しています。
【木下順二】
〈…これは佐渡の話を元にして書いた。(鈴木棠三採集『佐渡島昔話集』の中の「蟹ムカシ」)話の運びに一種のリズムがあるので、こちらはそれに乗って言葉のほうに多少リズムを与え、段取りなども少々整理してみたというだけのことだ。言葉のリズムというのは難しいもので、七五調式の口調のよさがリズムがあるということには、必ずしもならない。この話など、生きのいいというか、エネルギギッシュなというか、そんな調子が大事だろうと思う。
一カ所原文を引いてみるがー
 『そうすると、まづパンパン栗に行逢うた、パンパン栗が言ふにャ「がんどん がんどん何処へ行く」「猿の馬場へ親の敵討ちに」「腰につけて(た、ではない)は何で候」「日本一の黍団子」「一つ下せェお供しませう」「俺と行ったら呉れう」そこで一つやって、供にしたとさ』
…、私の書いたテクストと上の原文の両方を音読してみることなどからも、さまざまなことに気づかれるのではないかと思う〉


原話文と比較のために同じカ所を引用します。
「かにどん かにどん、どこへ ゆく」
「さるのばんばへ あだうちに」
「こしに つけとるのは、そらなんだ」
「にっぽんいちの きびだんご」
「いっちょ くだはり、なかまになろう」
「なかまになるなら やろうたい」

稲田さんと木下さんのおしゃることに共通性があることにお気づきでしょう。
昔話は口承文芸ですから、耳から聞くものでした。それを再話するということは、「文字」にするということですね。文字にするときに、多くの文学者がやってしまうことは、文学的民話風物語にしてしまうことです。
それに対して、稲田さんは「昔話の表現方法のもつ文体を原話の形のまま留めること」を再話の留意点の第一においています。木下さんは、「音読」してどうかと言っています。この「かにむかし」のもつ、「生きのいい」言葉のリズムは一度聞くと、そのどこかをすぐに口ずさみたくなります。
『「がしゃがしゃ がしゃがしゃ、ころころ、ぶんぶん、ぺたりぺたり、とんとん、ごろりごろり」というさわぎになって、サルのばんばへ近づいた』はどは、お供が増えるたびに、擬態語が積み重なっていき、とうとうこんな騒ぎになっている場面などはその典型だろう思います。





内容紹介です

『むかしむかし、かにが しおくみを しようと おもうて、はまべへ出たところが、すなのうえに』一粒の柿の種が落ちておった。カニは、「こらあ ええもんが あった。いっちょ うちの にわに まいてみよう」と拾って帰り庭の隅にまいた。

それからというもの、カニは毎日水やこやしをやったりしては、
「はよう、芽をだせ かきのたね、ださんと、はさみでほじりだすぞ」とゆうておったら、やがて芽だしたそうな。
カニは、さあ次だとおもうて、
「はよう、木になれ、かきの芽、ならんと、はさみで、つまみきるぞ」とゆうておったら、大きな木になったそうな。
今度は、「ぶったぎるぞ」とゆうておったら、やがてたくさんの実をつけ、「はよう、うれろ」とゆうておったら、あわててまっかにうれた。

けれども、カニは、「はいのぼちゃ落ち、はいのぼっちゃ落ち」して、柿の木に登れん。
すると、山の上から、サルが駆け下りてきて、
「そんなら、おらがもいでやろうか」というたが早いか、木のてっぺんに登って、つぎつぎ食い始めた。
「おおい、さるどん さるどん、おらの かきの木を。おまえは また、なんだ、それは」
カニが木の下で怒っていると、サルはまだ青い大きな柿をいきなりぴゅーんとなげつけた。
すると、その柿はカニにあたって、カニは潰れてしもうた。
つぶれたカニの甲羅のしたから、カニの子どもがたくさん這いだしてきたそうな。

カニの子どもたちは、あちこちの石の間へかくれ、じっとしておったが、だんだんにおおきくなった。
それから、そこらにはきびの畑が多くあったが、自分たちもきびを蒔いて、きびが実ると、ある日、きび団子をつくった。
そうして、みんながひとつずつきび団子を腰につけ、親カニの仇討ちに、サルのばんばとゆうてサルが住んでいるところへ、出かけた。

うちそろうて、「がしゃがしゃ がしゃがしゃ」ゆくと、ばんばん栗にゆきおうた。
「かにどん かにどん、どこへ ゆく」
「さるのばんばへ あだうちに」
「こしに つけとるのは、そらなんだ」
「にっぽんいちの きびだんご」
「いっちょ くだはり、なかまになろう」
「なかまになるなら やろうたい」
こうして、「がしゃがしゃ がしゃがしゃ」歩いていって、ばんばん栗は、「ころころ」とついていくと、蜂が「ぶんぶん」とんできて、
(**同じ問答の繰り返し)
蜂も、仲間になった。
次には牛のふん、はぜぼう、石うすも(**同じ問答の繰り返し)仲間になった。
そこで、みんなは、「がしゃがしゃ がしゃがしゃ、ころころ、ぶんぶん、ぺたりぺたり、とんとん、ごろりごろり」というさわぎになって、サルのばんばへ近づいた。
みんながサルのばんばについてみると、サルは留守、そこで、栗はいろりの灰の中、子ガニたちは水おけ、蜂は戸口のかもいのところ、牛のふんは戸口のしきい、石うすははぜぼうに突き上げてもらって軒下に、うんときばって待っておった。

そこへ、サルはもどってきて、
「ああ、さむか さむか」といろりの縁にとまって背中をあぶっておった。
すると、栗が、もうがまんしきれんようになるまできばったところで、サルの背中へ「バーン」とはねくりかえった。
サルは背中に火のたまでもぶち込まれたかとおもうて、
「きゃあっ」
……
(以下はご想像ください)
…おおきな石うすが、どしーんと落ちてきて、サルはひらとう、へしゃげてしもうたそうな。
これでおしまい。





読み聞かせのポイント

この絵本の文章は、リズムや口調がとても良く、読み聞かせしやすいと思います。
ただ一つ注意点があります。
それは、最後のクライマックスに近い、「栗がはねくりかえるところから、蜂がサルの頭を刺すところまで」が、絵だけの見開き場面が先にあって、文章は次のページにまとめられているところです。ここをどう読んであげるか、工夫が必要かもしれません。
ひとつの方法として、見開きの絵場面をみせながら、裏側の文章を読んであげると、その展開が分かり安いかもしれません。

絵本 かにむかし
◆年齢◆
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◆ジャンル◆
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木下 順二 文:清水 崑 絵 岩波書店

初版年月日:1959年12月5日 ISBNコード:4-00-115121-9

44ページ 20.7×16.4cm 定価672円(本体640円 + 税32円)

通常版はこちら!  定価672円(本体640円 + 税32円)
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