木の実のけんか

絵本 木の実のけんか

絵本 木の実のけんかの表紙です

絵本 木の実のけんか
◆年齢◆
読んであげるなら5〜6才から。
自分で読むなら小学校低学年向き

◆ジャンル◆
◆ファンタジー絵本

◆シチュエーション◆
◆おでかけしよう!絵本


岩城 範枝作/片山健画

初版年月日:2008年03月 福音館書店

ISBN:483402329X  ISBN13:9784834023299

36ページ 25x2cm 定価1365円(税込)

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伝統芸能「狂言」・《菓争(このみあらそい)=木の実の精霊たちが、花見の場所をめぐって、「ああ言えばこう言い、こう言えばああ言い」、ついには地謡をバックに(華やかな?)合戦をする、そして突然起こった花あらしに、木の実たちは逃げ出す》が、絵本になりました。

まずこの絵本の作者あとがきを引用します。
【「木の実のけんか」は、狂言の「果争(このみあらそい)」を下敷きにして生まれた絵本です。狂言の舞台では、木の実の精たちは、みな面をつけ、タチバナ、クリなどの作り物の冠(かんむり)をつけて登場します。争いの場面も、囃子(はやし)や地謡(じうたい)が入って、とても華やかです。
木の実の精たちの「けんか」は、いきなりポカリ、とはなりません。プライドやら縄張り意識やら、それぞれの思惑から、ああ言えばこう言い、こう言えばああ言い、ついには暴力沙汰に到るのです。(中略)
その昔、古歌(古典の有名な和歌)を知っているかどうかは、教養を試されるものであり、和歌の心得がないのは恥でした。狂言では大友黒主の作だという古歌をめぐり、どちらの古歌が正しいかと争うのですが、この絵本では、うたう歌と、和歌の勘違いという形にしました。(以下略)】

能は少し難しいですが、狂言は、いきなり見ても充分楽しむことができます。この狂言がいつごろからあるのかは知りませんが、仮に室町期からだとすると500年をはるかに越えており、それでも、「笑える」のは、縄張り争いや教養のないことをバカにするなど、現代人もあまり変わっていないことを示しています。
そんな木の実どもの合戦(ケンカ)にたいして、桜は花あらしを起こして、蹴散らしてしまいます。ここらあたりは現代人にはわかりにくく、あっけない結末と受け取られるかもしれません。
でも、この「桜の花の精」の思いがまっすぐに伝わるのは、現代人では「子どもたち」にではないかと思われます。
古来、桜の花の下は「聖地」でした。ですから、「花見」は、花の精に生命力をいただく場であって、宴会も降りてきた花の精といっしょに喜び合うものでした。
ところが、木の実たち(タチバナ一族=キンカンだけは子方だそうですがーも、クリ一族も大人として描かれています)は、「失礼な」を理由として、桜の木の下で合戦を始めるのです。礼を失しているのは両族ともですね。縄張りやちょっとした教養など、花の精の元では無価値ですね。こういうことが狂言になるのは、すでに中世において、近現代の意識が始まっていたのですね。木の実たちも人間の悪しき影響を受けつつあったのでしょう。そんなものたちを花の精は許すはずがありませんから、花の精が蹴散らしたのです。
そんな木の実たちの振る舞いを笑うことが、この狂言ではないでしょうか。現代人でも子どもの心性は、満開の桜の下では、自然と神聖な気持ちになると思われます。

ですから、このお話は、「桜の花の精」が本当の主人公ですね。
それまで大らかに木の実たちを見ていた、桜の精が、ことここに至って、
「…そのとき、桜の木が身をよじった。すると、
  ごおおおおーっ
大風が吹きわたった。
あたりいちめん、たくさんのはなびらが、風に舞った」
となります。

この場面の桜が圧巻です。木の実たちはどうなったでしょうか。
この狂言の舞台はみたことがなく、どのように表現されるか知りませんが、「絵本」のこの場面には、桜の精の思いがあますところなく表現されています。絵本ならではの場面です。

《登場人物たち》
タチバナ一族に、現代ではみなれない柑橘類が登場します。私もよく知らなかったので調べました。ご参考ください。


橘(タチバナ)
 「橘は 実さえ花さえその葉さえ 枝に霜降れど いや常葉の樹 万葉集」

 わが国に野生している唯一のかんきつ類だそうです。小果実で黄色で酸味が強く食用にはならないとのこと。万葉集には、萩・梅についで66種も登場し、初夏のふくいくたる香りを放つ花が好まれたとか。

九年母(クネンボ)

橙(ダイダイ)
『正月のお飾りとして使われる。酸味と苦みが強いので、生食には適さない。葉は互生で厚い。葉柄には広い翼があり、葉身との境にくびれがある。果汁を絞って砂糖を加え、ダイダイ湯などにして飲んだりする。果実は長持ちし、木に残しておくと2〜3年は枝に付いている。果実の色は、11月頃までは緑色を帯びてくすんでいるが、12月になると鮮やかな橙色になる。そのまま残しておくと春には再び緑色を帯びて目立たなくなってしまう。和名は代々の意味で、年を越しても木に付いている事による』

仏手柑(ブシュカン)
ビックリするのはこの柑橘の形です。絵本ではブシュカンが美しい着物で踊っています。
『果実の形が手の指の形をしているのでこの名がある。初めて見る人はこの千手観音をほうふつさせる奇妙な姿、形から果物とは信じ難いが、 まさしくかんきつの一種なのである。名前にふさわしく、釈迦の生まれた国、インド東北部原産のシトロンの一品種で、生食はできない。 鉢植えや盆栽として愛されてきたが、熱帯性で低温や霜には極めて弱いのでハウス栽培で安定生産をしている。お茶会などにはなくてはならないもの(中略)。果実を砂糖漬けにした仏手柑漬けを販売している』





内容紹介です

『むかしむかし、ある山に、いち早く花を咲かせる おおきな桜の木が あった。ある日、山ひとつむこうから、タチバナがやってきて、この桜をみつけた』

むかしむかし、ある山に、〜

「もう、満開の桜がある。みんなに知らせよう」
タチバナは一族(ダイダイ・クネンボ・ユズ・ブシュカン・ブンタン・ミカン・キンカン)を引き連れ花見にやってきました。

「なんとみごとな桜じゃ」
桜の下に、酒やご馳走をひろげて宴会を始めました。

ブンタンが にもつを おろした。〜

クネンボが歌を歌い、ユズとブシュカンが踊り出しました。

ところが、木の陰から、その様子をじっとみるものがあります。
この山に住むクリの実でした。
「失礼なやつらだ。この山の者でもないくせに、私にことわりもなく花見をするとは」

「もしもし」
クリは声をかけました。
「長年この山に住むクリの実です。あるじに取り次いで下さい」

タチバナはクリを迎えました。
「これは、よくおいでになりました」
「いや、よくもないですが、わたしが伺わないのも失礼かと思いまして」
「さあさあ、クリさんにお酒をおすすめして」

クリは酒を飲み干していいました。
「よほど、この桜が気にいられたともえますな。では、どなたか歌でも咲かせてくださらぬか」
「もちろんです」
クネンボがしずしずすすみでて、歌い始めました。ユズとブシュカンは扇をかざして踊り出しました。

すると、
クリがお腹かかえて笑い出しました。
「その歌ではないわ。よく聞きなされ」
《よしの山 たがうえそめし桜だに
        数さきそむる 花のはじめぞ》
「花見に来て歌といえば、和歌にきまっておる。そんなことも知らないとは、いやはやあきれたものじゃ」

これを聞いたダイダイが顔を赤くしていいました。
「なんという言いぐさ。花見のあるじにそんな悪口をいうなら帰ってくれ」

クリは言い返しました。
「あるじだと? この山に住んでいるのはわたしだ。私こそあるじだ。断りもなく花見をするなんて、この山から帰ってくれ」

言い争いは続き、とうとう、クリはよってたかって扇で打ちすえられました。

「今に思い知らせてやる」
クリは逃げ出しました。

そうして、再びタチバナ一族が花見を楽しんでいると、
「たいへんだ。クリ一族が押し寄せてきた」
「ヤリ、長刀、カマ、マサカリをもっています」

タチバナ一族が棒や杖など手にして待ち受けていると、
「わーっ、かかれ」
クリを先頭に、カキ、ナシ、ウメ、ザクロ、ナツメにモモが攻め込んできました。

木の実たちは入り乱れ、合戦になりました。

そのとき、…





読み聞かせのポイント

華やかな花見と、言い合い、ケンカ場面が多いですし、原作が狂言ですので、少々お芝居がかって読んでもいいかもしれません。
和歌も和歌風に詠んだ方がいいでしょうね。

絵本 木の実のけんか
◆年齢◆
読んであげるなら5〜6才から。
自分で読むなら小学校低学年向き

◆ジャンル◆
◆ファンタジー絵本

◆シチュエーション◆
◆おでかけしよう!絵本


岩城 範枝作/片山健画

初版年月日:2008年03月 福音館書店

ISBN:483402329X  ISBN13:9784834023299

36ページ 25x2cm 定価1365円(税込)

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