絵本 くわずにょうぼう

絵本 くわずにょうぼう

絵本 くわずにょうぼうの表紙です

絵本 くわずにょうぼう
◆年齢◆
読み聞かせするなら5〜6才向き
自分で読む場合は小学校低学年向き


◆ジャンル◆
◆むかしばなし絵本

◆シチュエーション◆
◆おやすみの前に絵本


(ただし、最後まで、読み通すことができる日に限ります)

稲田和子 再話:赤羽末吉 画

編集・発行 福音館書店
発売 福音館書店

初版年月日:1980年07月31日 ISBNコード:4-8340-0789-8

32ページ 27X20cm 840円(本体800円+税40円)


通常版はこちら!  定価840円(本体800円+税40円)

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表紙をみると、タイトルの下、桶に入った男は、情けなさそうな感じです。

それにひきかえ、怖そうな女の人は、上目遣いに、右方向をきりっと見つめています。
どうもこの女の人が「くわずにょうぼう」らしい、どんな人なのか興味が湧いてきます。男と女房の眼の違いが印象的ですね。
扉を開けると、夕方ひと仕事を終えた男は、倒木に腰掛けて、「おらも女房が欲しいなあ。よっく働いて飯を食わない女房がほしいもんだ」とつい本音(?)をもらしてしまいます。
このことが、すべての始まりでした。
さて、これは、昔話再話者の第一人者と、ご存じ国際アンデルセン賞作家が取り組んだ絵本です。
この絵本の面白いところはたくさんありますが、すぐに気づくことを何ヶ所か見てみましょう。
(1)口にだして言うことが本当になる
口承(耳)文化圏(文字を持たない人びとの文化)では、言葉には、言った通りに実現する力があります。たとえば、「めっきらもっきらどおんどん」で、かんたが「おかあさん」と言ったために、その世界は消えて、お母さんが迎えに来ます。「くわずにょうぼう」でも、「女房が欲しいものだ」と言うと、すぐ女房がやって来ますね。口承文化圏ではよく起こる事だったようです。それほど「ことば」の力は大きかったのです。そこには、ものごとはみだりに言ってはならないという倫理があったはずです。そんなことを言うと、思ってもない事がおこるのですね。
(2)くわずにょうぼうの変身
くわずにょうぼうの正体(本当の姿。稲田さんインタビューを参照下さい)は、原話によると、西日本では蜘蛛・蛇と語るのが多く、東日本では「鬼」が多いそうです。この絵本は「おにばば」ですね。でも、「髪の毛をほどくと、頭のてっぺんから、大きな口がざくっと」出てきて、頭の口へぽいっ、ぽいっとやって、握り飯を食べます。このイメージはやはり蜘蛛や蛇から来ていますね。
さて、「にょうぼう」の変化がみどころです。
文章の方はこの変化については、ただ「うつくしい女房は、たちまちでっかいおにばばになって」としか表現されていません。しかし絵の方は、このときはまだ、それほど怖い感じはしませんが、だんだん変身していって、最後の「おにばば」の顔は、本当に恐ろしい姿になっています。その場面は、巨大な鳥のようになったおにばばが、菖蒲が群生するところに逃げ込んで小さくなっている男を、今にも、そのかぎ爪でひっかけそうです。
(3)地色について
この絵本では、たとえば(2枚目の画像)の右ページのような、文字だけがあるページが数カ所あります。そこの地色が実に効果的に使われていることも大きな特徴ですね。そのよもぎ色は、もちろん「よもぎ」を象徴しています。それは「おにばば」がよもぎに溶かされることの予兆なのでしょうか。
(4)菖蒲とよもぎについて
菖蒲とよもぎは薬草であることはよく知られています。
子どもの頃、よく切り傷に、よもぎをすりつぶして、塗っていました。昔の蚊取り線香にはよもぎが入っていたと聞きますから、虫除けに使われたのでしょうね。
菖蒲については、束にしたものを5月5日に屋根に投げあげました。これは鎌倉期にもその風習があったことが、絵巻物などにもみえ、私の子どもの頃もやってました。またその日菖蒲湯にも入りました。
お風呂に菖蒲の葉を数枚入れると、独特の香りがします。菖蒲湯は無病息災を願ったものでしょうね。お湯につかったやわらかい葉を頭にまくと、頭が良くなる、腹のまわりにまくと病気をしないなどと言われました。菖蒲は煎じて飲むと腹痛・虫下し・打ち身の治療に使われました。根は漢方薬。胃薬、解熱、ひきつけ、創傷の薬。
また、菖蒲の葉が刀のような形をしていますから、それも大きな力を持つと考えられたのでしょう。
「おにばば」は刀のような菖蒲に近づくことはできませんし、よもぎの汁に溶かされてしまします。
菖蒲とよもぎに共通しているのは、その独特な香りです。こうした香りは、虫を引きつけたり、排除したりしますから、その力について昔の人はだれでもよく知っていたのですね。
この「くわずにょうぼう」には、昔の暮らしのイメージが背景にしっかりあります。
(5)欲張りについて
昔話は、「やまのものたち」と里のもの(人間)が対立するようには語られません。本来それは共存関係にありましたからね。共存関係がやぶられたのは「欲張り」なことからはじまっています。
このお話は確かに主人公(男)から見て、ハッピーエンドですが、結局、欲張りなことから、男がとんでもないはめにあって、命からがら逃げ帰ってきたというふうにも読めますね。このタイプの昔話は比較的新しいと思われます。というのは、「やまのものたち」と人間が結婚する(共存関係)話はいくらもあります。身元がわかったとき別れがやってきます。そしてその結果、人間は自然から大きな贈り物を受け取ります。この原形(原話という意味ではありません)に、「欲張り」という人間が登場するに及んで、「くわずにょうぼう」が生まれたと考えられるのです。人間はいつから「欲張り」になったのでしょうね。



内容紹介です

『とんとん むかしが あったそうだ。
 むかし、うんと よくばりの おとこが ひとりで すんでいたそうだ』

男は山へ仕事にいって、
『おらも にょうぼうが ほしいいなあ。よっく はたらいて めしを くわない にょうぼうが ほしいもんだ』といったそうだ。
晩になって、家に帰っていると、誰かがあとからついてくる。
『だれだ おまえは?』
『おらは めしを くわない おなごだ。…にょうぼうにしてくんろ』
美しい娘だったから、男はすぐに承知した。なるほど、飯は食わないし、くるくるよく働くので、今に倉に入りきらんくらい米がたまるぞと男はほくほく喜んでいた。
ある日、男は倉を開けてびっくり。
『おかしいなあ。あれだけ いっぱい あったのに。
 よし、あしたは どこへも いかずに みとどけてやる』
あくる日、男は出かけるふりをして、天井からのぞいていたんだと。
すると女房は、倉から米俵を持ってきて、炊き、釜の飯をにぎり、ずらりっと並べた。
『そして、ながい かみのけを ほどいたら、あたまのてっぺんから、おおきな くちが ざくっと でたんだと』
女房は握り飯を、つぎつぎつかんで
『ぽいっ ぽいっ ぽいっ ぽいっ』
『ああ うまかった』
女房はけたけた笑って、髪をきちんと元通りに結ったんだそうだ。欲張り男はたまげてしまって、がたがたふるえだした。
それでも、男は知らん顔して、
『おらは やっぱり ひとりぐらしが いちばん いいから おまえは でて行ってくれ』といったところが、

うつくしいにょうぼうは たちまちでっかいおにばばに…

女房はたちまちでっかい鬼婆になって、
『みたな、このやろう。おまえも くってやる』
男の首をつかんで、風呂桶のなかにほうりこんだ。
そうして、桶を頭にのせると、山へ向かった。

おにばばは 菖蒲を避けている様子です

途中、鬼婆は菖蒲の生えた所では、回り道、よもぎが生えたとところにくると、回り道をしていく。
鬼婆が一休みしたとき、木の枝が下がってきたので、男は天の助けと桶からはい上がった。鬼婆はそんなこととは思いも寄らず、びゅうびゅう走って棲みかへ帰った。
帰って、山のものたちをみな集め桶をおろしたところが、からっぽ。怒った鬼婆はものすごい早さで、追いかけてくる。
男は逃げて逃げて、やっと菖蒲がしげったなかへ隠れた。
今にもつかまりそう……







読み聞かせのポイント
本来昔話は、昼間には「昼むかしをするな」といわれ、決して語られませんでした。夜のいろり端などで、夜なべをしながら、語られるものだったそうです。昔話は子どもも大人もいっしょに聞くものだったようです。
だからそれは、昔の人にとって、昼間のきつい仕事を終えて、ほっとする時だったのではないでしょうか。そうしてみると、昔話絵本の読み聞かせも、そんな雰囲気こそ望ましいことになりますね。
これは怖い話です。少し大きい子は大好きですが、名作昔話だからといって、あまり早くから与えなくともいいかもしれませんね。

絵本 くわずにょうぼう
◆年齢◆
読み聞かせするなら5〜6才向き
自分で読む場合は小学校低学年向き


◆ジャンル◆
◆むかしばなし絵本

◆シチュエーション◆
◆おやすみの前に絵本
(ただし、最後まで、読み通すことができる日に限ります)


稲田和子 再話:赤羽末吉 画

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発売 福音館書店

初版年月日:1980年07月31日 ISBNコード:4-8340-0789-8

32ページ 27X20cm 840円(本体800円+税40円)


通常版はこちら!  定価840円(本体800円+税40円)

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画家赤羽末吉さんの主要な絵本
「ももたろう」松居直 再話
「かさじぞう」瀬田貞二 再話
「だいくとおにろく」松居直 再話
「おおきなおおきなおいも」
再話者 稲田和子さん関連図書
 *稲田さんについてはインタビューがありますので、そちらをご覧下さい。

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