よみたいききたいむかしばなし 2のまき いたずらぎつね

絵本 よみたいききたいむかしばなし 2のまき いたずらぎつね

絵本 よみたいききたいむかしばなし 2のまき いたずらぎつねの表紙です

絵本 よみたいききたいむかしばなし 2のまき いたずらぎつね
◆年齢◆
読んであげるなら5〜6才から。
自分で読むなら小学校低学年向き

◆ジャンル◆
◆むかしばなし絵本

◆シチュエーション◆
◆おやすみの前に絵本


中川 李枝子作:山脇 百合子絵

初版年月日:2008年02月 のら書店

ISBN:4931129358  ISBN13:9784931129351

142ページ 20x1cm 定価1365円(税込)

通常版はこちら!  定価1365円(税込)
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中川李枝子さん文による、この昔話集は、タイトルに『よみたい ききたい むかしばなし』とあるように、本来の耳から聞く昔話とは異なり、むしろ幼年童話に近く、自分で読む(目で読む)読書への橋渡し、入り口の本として最適です。

〈同じ昔話の表現法の違いについての比較〉
いずれも、優れた本であると思われるもの同士の比較を行いました。その違いは、主に読者の享受の仕方にあることを前提にしています。また、一般に、人は、「口承文化」から「文字文化」へ、多様化の方向に、文化の享受は拡がっていきます。あるいは、子どもの読書の面からみると、「読んでもらう」から目で読む(自分で読む)読書へ移行していきます。(基本的には絵本から童話へ移行します)口承文化にしろ、視覚文化にしろ、人は生まれながらに享受できますが、「文字文化」だけは、その享受やそれを愉しむのは、10歳以降になります。

比較を具体的に、そして分かり易くするために、同じ昔話の同じ場面を選びました。
(1)絵本「ずいとんさん」日野十成再話 斎藤隆夫絵 福音館書店(昔話絵本用に再話された文章部分)
(2)「にせ本尊」(耳から聞くことを前提にした再話による昔話)(日本の昔話5より おざわとしお再話・福音館書店))
(3)中川さんのこの本。「いたずらぎつね」
(幼年童話・目で読むことも配慮した文章)

それぞれ、タイトルは違いますが、
こぞうさんに追いかけられ、本堂に逃げ込んだいたずらなきつねが、仏さまに化け、見分けがつかなくなります。そこでこぞうさんは機転をきかせ、きつねの変身を見やぶるというのがこの昔話のクライマックスです。

この場面をまず、中川さんの(3)を読んでみましょう。以下のようになっています。
【…きつねはおどろいて、こぞうさんのわきをするぬけ、おしょうさまの足もとをとびこし、すばしっこく、右へ左へ、本堂じゅうをにげまわりました。こぞうさんとおしょうさまはおいかけました。なにしろ、いたずらもののきつね、やすやすとはつかまりません。とつぜん、きつねのすがたがきえました。
そこでこぞうさんは、おしょうさまに、そっと、でも、きつねには、よくきこえるように、
「いい方法があります、おしょうさま。お寺のあみださまなら、お経をあげると、お首をこくんこくんと、おふりになります。ひとつ、お経をあげてください」といいました。
「そうじゃった、うっかりわすれておったわい」
おしょうさまは、あみださまのまえにすわると、木魚をぽくぽくたたきながら、おごそかにお経をあげました。
すると、ならんだあみださまの片方が、こくんこくんと首をふりました。】

(1)絵本「ずいとんさん」では以下のようになっています。

【…きつねは あわてて ほんどうに にげこんだ。
「こら まて きつね」
ずいとんも ほんどうに とびこんだ。ところが、きつねのすがたは どこにもない。
「おかしいな、どこにかくれたんだろう」
ほんどうを みまわすと なんと なんと、いつもひとつしかない ごほんぞんさまが、ふたつ ならんどる。
「さては きつねめ、ごほんぞんさまに ばけたな」
けれども あんまり そっくりなので、どちらが ほんとうの ごほんぞんなのか わからん。
ずいとんは よくよく かんがえると、ふたつの ごほんぞんのまえに すわった。
「うちの ごほんぞんさまは、おきょうを あげると、およろこびになって したを ぺろりと おだしになる。したを おだしになったほうが、ほんとうの ごほんぞんさまだ」
それから、ずいとんは すまして、
「なみあみだぶつ なむあみだぶつ」と おきょうを あげた。
すると、かたほうの ごほんぞんが ぺろりと したを だした。】

(2)「にせ本尊」はこのようになっています。

【…きつねは座敷にあねあがり、ちょろちょろと本堂のほうへ走りこみました。小僧さんは追いかけましたが、みうしなってしまいました。
「はてな、どこにかくれたんだろう」
ひろい本堂の中をあちこちさがしましたが、きつねのすがたはありません。ふと気がつくと、ご本尊の観音さまが、いつもは十二体なのに、十三体にふえていました。
「こんどは観音さまにばけたんだな。どれがきつねだろう」
小僧さんは近よってみましたが、どれもおなじ観音さまで、見わけがつきません。
小僧さんはしばらく考えていましたが、
「よし よし」
と、うなずくと、お赤飯をたいて、十三ある観音さまにおそなえしました。そして、
「観音さま 観音さま。きょうはひさしぶりにお赤飯をおそなえいたします。どうぞ、いつものようにいっぺんだけ、けらけらとわらってみせてください」
とおがみました。これをきくと、きつねは、
(ははあ、観音さまは、お赤飯をそなえられると、わらうものなんだな)
と思い、けらけらとわらってみせました。】

●この三つの場面を較べて、最大の特徴は、(1)の絵本「ずいとんさん」の文章が一番短く、次ぎに、(2)の「にせ本尊」ですね。それらはおもに出来事だけが書かれています。
ところが、(3)の中川さんの文では、たとえば、、きつねが逃げていく様子が目に見えるように書かれてあったり、「なにしろ、いたずらもののきつね、やすやすとはつかまりません」といった説明の文章が書かれてあったりします。(2)の昔話再話では、【…きつねは座敷にあねあがり、ちょろちょろと本堂のほうへ走りこみました。小僧さんは追いかけましたが、みうしなってしまいました。】とだけ書かれています。このドタバタの追っかけ場面は、緊迫感をともなうけっこう面白いところですが、あまりにシンプルですね。でも、これが耳から聞く昔話の再話の特徴です。なぜなら、このあとすぐに、クライマックス場面がきます。昔話は時間芸術ですから、語られるとすぐに場面は消えてしまします。この追っかけ場面があまりに長く語られると、この場面に聞き手がこだわってしまい、クライマックス場面を聞き逃すおそれがあります。
絵本「ずいとんさん」の文章はこうです。【…きつねは あわてて ほんどうに にげこんだ。「こら まて きつね」ずいとんも ほんどうに とびこんだ。ところが、きつねのすがたは どこにもない。】としか書かれていません。
これもシンプルな昔話に特徴的な文章です。ところが、絵本「ずいとんさん」の解説をお読み下さい)では、ずいとんさんが棒を振り上げ、きつねの逃げる場面が絵にあって、その絵には、きつねのあわててすばしっこく逃げる絵が緊迫感を伝えてくれます。ですから、中川さんのこの文章「「なにしろ、いたずらもののきつね、やすやすとはつかまりません」は、絵本では必要ないですね。つまり、中川さんの追っかけの様子やこの説明は、自分で読む(目で読む・立ち止まって読む)ことが期待されていることが分かります。それでいて、耳から聞いていると次のクライマックスに障害になっては困りますから、最低限の表現になっているのですね。

●また、(3)中川さんのこの本、「いたずらぎつね」では、この場面にいるのは、こぞうさんとおしょうさまのふたりです。昔話には「孤立性」という法則があります。お寺は人里はなれた場所にありますし、こぞうさんは同じお寺にふたりとはいないのに決まっています。その意味では、この場面にいるふたりは実に微妙な人数です。ほんの少し昔話的ではないかもしれませんね。(1)の絵本「ずいとんさん」では、おしょうさんの留守中のできごとですから、徹底して「孤立的」に描かれています。(2)の「にせ本尊」では、おしょうさまはお寺にいたはずですが、この出来事が起こっているあいだ顔をだしません。少し気になりますが、昔話は語った後には忘れますから、「孤立性」の範囲内でしょうね。(3)のこの本では、おしょうさまとこぞうさんは、最初から懲らしめようと相談しながらずっとやっていますから、この場面もふたりでいます。その意味では、極めて論理的で、文字を立ち止まりたちどまり読む場合には、矛盾を感じることはありませんね。

●同じことが、(2)「にせ本尊」の、お赤飯に言えます。
【…小僧さんはしばらく考えていましたが、「よし よし」と、うなずくと、お赤飯をたいて、十三ある観音さまにおそなえしました】
ここのところは、文字で読むとちょっとおかしなところです。お赤飯を炊いて供えるまでには、時間的すき間ができてしまう、あるいは見張りがいなくなる、ですから、きつねは逃げられることになります。(本堂は閉め切るとにげられないのかなあ)
ところが、耳で聞く昔話にとっては、この点は聞き流すことができる場面なのですね。重要なのは「お赤飯」であり、それは特別な日の、極めて印象的な食べ物ですから、聞き手はこれにこころを奪われます。ですから、それがどんないきさつで供えられようが細部はこだわらなくていいのですね。

●このように「いたずらぎつね」の一場面だけみても、(3)中川さんのこの本の特徴がはっきりしてきます。絵本にはできる情景・心情表現を、きわめて短く的確に、最低限に抑える文章によって、耳から聞いた場合の煩雑さという障害を避けています。それは同時に、立ち止まって(目で読む・自分で読む)場合にも耐えられる味わいを表現しています。だからこそ、読んでもらった、その同じ本を自分でも読むと面白いのです。





内容紹介です

全12編のお話は以下の通りです。
「がんとかめ」「ききみみずきん」「いたずらぎつね」「鬼と三人の子ども」「かみなりのてつだい」「きつねとかわうそ」「五分太郎」「ねずみのおむこさん」「にいさんとおとうと」「たにしときつね」「おどるひょうたん」「マミチガネのぼうけん」

〈いたずらぎつね〉
『むかしむかし、あったおはなし。村のはずれに、小さなお寺があって、おしょうさまとこぞうさんが、すんでいました』
おしょうさまは村へお経をあげにいって、お酒をよばれるのが楽しみでした。でも、ほろよい気分で帰ってくる途中、かならず、野はらできつねにだまされて、道に迷ったり、水たまりで転んだり、おみやげのおまんじゅうを取られたりするのです。こぞうさんは悔しくてたまりません。
こぞうさんは和尚さんと相談して、きつねをこらしめることにしました。

そこである日、こぞうさんは、からっぽのかますをもってお寺を出ました。
野はらにつくと大声で、
「おしょうさまあ おしょうさまあ」とよびました。
とおくで、「ほう」と返事があったので、もういっぺん、
「おしょうさまあ、よっぱらいおしょうさまあ」とよびました。
「おお、こぞうか。うまいさけをよばれての、なかなかよい気分じゃ」
とでてきました。
「おむかえにきました。おしょうさまは、お酒に酔うと、『かますにはいる、かますにはいる』とおっしゃるので、どうぞ入ってください」
すると、きつねは「かますのなかはごくらく ごくらく」と中に入りました。
こぞうさんは急いでかますの口をきっちりしめて、背中にしょってお寺に帰りました。
それから、こぞうさんと和尚さまは本堂にいって、「きょうこそこらしめてやる」と棒でたたこうとしました。

以下【】内は原文のまま
【…きつねはおどろいて、こぞうさんのわきをするぬけ、おしょうさまの足もとをとびこし、すばしっこく、右へ左へ、本堂じゅうをにげまわりました。こぞうとおしょうさまはおいかけました。がなにしろ、いたずらもののきつね、やすやすとはつかまりません。とつぜん、きつねのすがたがきえました。
こぞうさんが、「はてな」と、よくよく見まわすと、あみださまの台座に、そっくりおなじ、あみださまがならんでおすはりです。
「ははあん、きつねのやつ、ばけたな」
こぞうさんは目をこらして、両方のあみださまを、じっと、みくらべました。よくにていて、どちらがほんとうのあみださまで、どちらがきつねなのか、さっぱりわかりません。
そこでこぞうさんは、おしょうさまに、そっと、でも、きつねには、よくきこえるように、
「いい方法があります、おしょうさま。お寺のあみださまなら、お経をあげると、お首をこくんこくんと、おふりになります。ひとつ、お経をあげてください」といいました。
「そうじゃった、うっかりわすれておったわい」
おしょうさまは、あみださまのまえにすわると、木魚をぽくぽくたたきながら、おごそかにお経をあげました。
すると、ならんだあみださまの片方が、こくんこくんと首をふりました。
「こっちがきつねだ!」】
(以下略)





読み聞かせのポイント

とにかく一度は読んであげてください。
そうして、本棚の目立つところへ置いてください。
そうすると、ふと、読んでもらった安心感から、もう一度手にするかもしれません。
自分で読んでみると、読んでもらったときに素通りしたところに引っかかって、その場面に立ち止まるかもしれません。
そうなれば、そのことがひとり読みのきっかけになると思います。

絵本 よみたいききたいむかしばなし 2のまき いたずらぎつね
◆年齢◆
読んであげるなら5〜6才から。
自分で読むなら小学校低学年向き

◆ジャンル◆
◆むかしばなし絵本

◆シチュエーション◆
◆おやすみの前に絵本


中川 李枝子作:山脇 百合子絵

初版年月日:2008年02月 のら書店

ISBN:4931129358  ISBN13:9784931129351

142ページ 20x1cm 定価1365円(税込)

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●中川李枝子・山脇百合子コンビによる作品
「よみたいききたいむかしばなし 1のまき ねこのおんがえし」
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