なぞとき名人のお姫さま

絵本 なぞとき名人のお姫さま−フランスの昔話

絵本 なぞとき名人のお姫さまの表紙です

絵本 なぞとき名人のお姫さま
◆年齢◆
読んであげるなら5、6歳から。
自分で読むなら小学校中学年向き。

◆ジャンル◆
◆むかしばなし絵本

◆シチュエーション◆
◆おやすみの前に絵本


山口智子 編・訳:パトリス・アリスプ 絵 福音館書店

初版年月日:1995年11月15日 ISBNコード:4-8340-1343-X*

192ページ 22X16cm 定価1365円(本体1300円 + 税65円)

通常版はこちら!  定価1365円(本体1300円 + 税65円)
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この本には、フランスの各地方の昔ばなし11編、短いお話から比較的長いもの、笑い話から本格昔話まで、地方の人びとが育んだお話が集められています。

しかも編・訳者本人も書いているとおり、人から人へ口伝えそのままの「原話」から直接訳されていますから、どこか鄙びた感じがあります。私たちがよく知っている西欧的な昔ばなしも含まれていますが、どこか日本の昔ばなしに近い感じのもあります。
それら各昔話の表題の括弧内に採集された地域名を記しておきますが、現在の行政区分とは必ずしも一致しないそうです。(巻末のフランス地図に地域名が示されています)
なお、この本の書名「なぞとき名人のお姫さま」は、最後のお話から採られています。

1、小さな半分のおんどり(ポワトウ地方)
『むかし、ふたりの小さな息子のいる男が、もっていたたまごを半分ずつ、ふたりにわけてやった。ひとりの息子は、半分のたまごをやいてもらったが、もうひとりは、自分の半分のたまごを食べないで、それをあたためた。そう、半分のたまごをあたためたんだ。すると、小さな半分のおんどりが生まれたのさ』

ある日、半分のおんどりが、金貨のつまった財布を見つけます。ところが、ちょうど通りかかった男に財布を取りあげられてしまいました。そこで、半分の雄鳥は男を追いかけます。

追いかける途中、おおかみに出会います。
どこへ行くのと聞くので、ついておいでといいました。
ふたりが遠くまできたとき、おおかみはもう歩けなくなります。

「もう歩けんよ」
「じゃ、ぼくのおしりにお入り。つれていってあげるよ」

また歩いていくと、きつねに出会い、きつねもついてきますが、疲れてしまいます。
そこで、きつねもおしりに入れてやり、大きなヴィエンヌ河を渡りました。
するとヴィエンヌ河もついてくることになります。
ところが、河も疲れたので、おしりに入れてやりました。
次には、モンスズメハチも。
そしてつとう男の家に着きました。
半分のおんどりはさっそく、「返せ」といいます。
ところが、夫婦は、「そうだ、今晩こいつをラバのところへやっとけば、ラバが踏みつぶしてくれるぞ」とラバの小屋に閉じこめてしまいました。

「おおかみくん、おおかみくん、きみがおしりから出てくれないと、ぼくたちおしまいだ!」

たちまちおおかみは飛び出してきて、あっという間にラバをやっつけてしまいました。
朝がきて夫婦はびっくり。

「どうしてくれよう!そうだ七面鳥たちと寝かせるんだ」

夫婦は七面鳥の小屋に閉じこめました。
でも、きつねが出てきて、たちまちやっつけてしまいました。
朝になると、夫婦が見たものは死んでいる七面鳥でした。

「うわあ!どうしたらいいだろう。そうだ天火を熱くしてこいつを放り込むんだ」
「ヴィエンヌ!ヴィエンヌ!出てきてくれ、そうしないとおしまいだ」

たちまち、ヴィエンヌ河は出てきて、かまどを押し流してしまいました。
そして最後に、夫婦は、半分のおんどりを、ふたりの間に挟んでしめつけ寝かせることにしました。しかし、今度はモンスズメハチが出てきて、夫婦の耳や鼻に入り込んで刺しまくりました。
夫婦はたまらなくなり、財布をそっくり返しました。
こうして半分のおんどりは小さな主人のところへ帰りました。

**このお話はフランスではもっともよく知られている昔ばなしだそうで、さまざまなバリエーションがあります。たとえば、半分のにわとりが同じように金貨のつまった財布を拾います。別のお話では、王様が利子をつけて返すからと借りたまま返さないので、取り返しに行く道中、「きつね」「おおかみ」「川の水」を翼のなかに入れてつれていくというのがあったり、なかには「半分の子ども」というのもあります。
それにしても、「半分のおんどり」がお尻に河までも入れて連れて行くというのは、実に途方もない、面白い想像ですね。このようなお話は、「昔ばなしは極端に表現するという法則」通りですが、これは耳から聞くお話だからこそ表現できるのです。これは映像や絵本にはけっしてできないですね。そういった自由な想像力も人間には具わっているのですね。

2、金の星とろばの耳(ガスコーニュ地方)
典型的な継母物語。いじめられる娘は額に金の星のある美しい娘になって幸せになりますが、継母の娘は「ろばの耳」を持ってしまうというお話。

3、プチジャンとかえる(ニヴェルネ地方)
やっと授かったお姫さまの洗礼の日、妖精たちを招き大宴会を開いた王さまは、ひとりだけ妖精を招くのを忘れました。

お姫様の洗礼の日の様子

その年取った妖精はお姫さまをカエルに変えてしまいます。他の妖精たちもその願いを変えるよう懸命に頼んだので、「お姫さまがいちばん美しい池に住み、いちばんりっぱな王子と結婚するように」という願いに変えました。
さて、となりの王国に三人の王子がいました。一番下の王子をプチジャンといいました。

4、かぜひきたちが聖ゲルリュションさまへおまいりにいく(モルヴァン地方)
動物たちが風邪引きを治しにいくお話。ブレーメンの音楽隊によく似ています。

5、船長とへび(バスク地方)
まったくついていない船長がいました。船もなくし家族に養ってもらっている船長は、海辺の散歩をして毎日暮らしていました。船長は毎日へびに声をかけてやっていました。
ある日、へびが船長にいいました。

「大きな船を頼んでください」

こうしてふたりは航海にでます。困難な航海をへびが助けるお話。
実は、このへびは、魔法によって変えられた王子だったのです。

**3、の「プチジャンとかえる」もそうですが、魔法によって、へびやかえるに変えられる話が多いですね。このような話は、変えられた者が主人公を助けて物事を成し遂げ、その結果、変えられた者も本来の姿に戻るというのがほとんどです。
変えられるものはへびやかえるで、これらはいわば「野性」です。あるいは、精神分析学によると「無意識」の次元ということになります。これらの話はおそらく「人間は二度生まれる」ことを暗示しているのでしょうが、特に西欧に多い話型のようです。
日本やインディアンでは、はじめから動物と人間は一体化(動物との婚姻話多い)しています。つまり、こちらでは「本来の姿」という考え方は希薄のようですね。
そういえば、4の「かぜひきたちが聖ゲルリュションさまへおまいりにいく」も、ご存じの「ブレーメンの音楽隊」も、「野性」の動物を「飼いならされた動物」がやっつけてしまうことが、お話の中心です。
このように西欧の「自然」感は、やはり日本のそれとは異なっているようです。とはいえ、動物が主人公であったり、重要な役割を果たす点から見て、このような西欧昔ばなしにも、近代化以前の古代的な思考が今でも残っていることは疑いありません。とくに昔話の「原話(この昔ばなし集も)」の中ではそうですね。

6、お百姓トロメと悪魔(ニヴェルネ地方)
むかし、ピカルディのある村にトロメというお百姓が、家族といっしょに暮らしていました。トロメにはお父さんをなくしてからこっち、家族が病気になるなど不運が続きました。そして最後の一撃は一頭だけのこっていた馬が死んだの火事でした。これでなにもかも失いました。
トロメは思わず叫びました。

「こんなおれを助けてくれるのは、悪魔だけだろうな!」

と、言い終わったときにはもう、トロメの肩で、小さな男が飛び跳ねていました。
悪魔は何をして欲しいか聞くので、トロメは立派な百姓家、小麦や干し草のつまった大きな納屋をいくつもに、牧場と牛や馬など欲しいもの全部いいました。
悪魔は、明日の朝、お前のおんどりが夜明けを告げるそのとき、朝5時までに全部用意しよう、でも、それと引き換えに長男の魂をよこせといいました。
トロメはぞっとしましたが、ついに羊皮紙にサインをしました。

小さな悪魔は〜

トロメは夕暮れまで歩き回って、家に帰ってくると、数え切れない悪魔が働いていました。トロメはおかみさんに約束のことをはなし、「きっとお前ならなんとかしてくれるだろうと思った」といいました。
おかみさんは、

「悪魔がおんどりの朝のココリコより前に仕事を済ませると約束したんだね」

そこでおかみさんは、朝の4時そうっと起きあがって、鶏小屋へいきました。

7、青い鳥(高ブルターニュ地方)
羽に金文字を表して予言する、青い小鳥のお話。
「わたしの頭を食べる者は、王となり、わたしの心臓を食べる者は、毎朝、頭の下に金の山を見いだすだろう」
ふたりの息子とひとり娘が、みんなそろってしあわせを手に入れます。

8、けちんぼうのおばさん(オーヴェルニュ地方)
とんでもなくけちんぼうで、亡くなっただんなさんをときにもボロボロのシーツで埋葬するほどでした。

9、世界の馬(低ブルターニュ地方)
小さな小さな馬がリワルを助け、美しいお姫さまと結婚する話。

10、ジャネットの求婚者(ニヴェルネ地方)
おろかな家族のジャネットに結婚を申し込んだ若者は、ジャネットのおろかさにあきれ、世の中に、同じようなおろかな人、三人に出会ったら、帰ってきて、ジャネットと結婚しようと、旅に出ます。

**どんな意味がかくされているのかよく分かりません。でも、とてものんびりとしたほんわかした気分にさせられるお話。

11、なぞとき名人のお姫さま(低ブルターニュ地方)
謎解き名人のお姫さまがいました。お姫さまは、自分にとけない謎を出した者と結婚するが、とける謎を出したものは殺すと国中におふれを出しました。
するとあちこちから志願者がやってきましたが、その人たちは全てつるし首にされてしまいました。
ファンシュも謎をもっていこうと思っていましたが、なかなか母親が許してくれません。ある日、ファンシュはヤニックという兵士と仲良くなります。ヤニックがファンシュを手伝うというので、お城に向かいました。
ファンシュが出した「なぞ」は以下の通りです。

『家から でたとき、われらは 四つ
 四つから ふたつが 死に
 ふたつから 四つが 死んだ
 四つから 八つをつくり 
 八つから 十六が 死んだ
 かくて われらは ふたたび 四つで
 あなたの前に あらわれた』
さて、ふたりは首尾良くいくでしょうか。





内容紹介です

*この本は昔話集なので、上記の解説が内容紹介を兼ねています。





読み聞かせのポイント

日本のであれ、世界の昔ばなしであれ、その想像の巾の広さや深さについて、現代の創作のものはとてもおよびがつかないでしょう。昔ばなしには、人類の2、3万年の経験や知恵や知識や思考がつまっています。人間は口伝えでそれらを営々と語り繋いできました。現代人には口伝えする能力は失われましたが、そのかわり「書き文字ー本」を発明しました。そして幸いグリム昔ばなし集、ジェイコブスのイギリス昔ばなし集やこの本を残すことができました。現代人は「本」を読んでやるという方法を手に入れました。
昔ばなしには、けっして絵本や映像にできないものがたくさんあります。(半分おんどりをどうやって映像化できるでしょうか)
それらはやはり耳から聞くほかないのです。また、昔ばなしを下手に絵本化やテレビ化すると、その与えられたイメージによって、その世界が固定されてしまいます。昔ばなしは想像性ということでは無限なのです。意味やわからないことはそのままに、(耳で聞くとあまり気にならないのです)、あるいは自由に想像にまかせればいいのです。とにかく読んであげることです。昔ばなしはどれもそんなには長くありませんから特に小学生低学年向きからですね。子どもが成長の過程でかかえる困難を乗り越える知恵と力を、昔ばなしは隠し持っているのです。

絵本 なぞとき名人のお姫さま
◆年齢◆
読んであげるなら5、6歳から。
自分で読むなら小学校中学年向き。

◆ジャンル◆
◆むかしばなし絵本

◆シチュエーション◆
◆おやすみの前に絵本


山口智子 編・訳:パトリス・アリスプ 絵 福音館書店

初版年月日:1995年11月15日 ISBNコード:4-8340-1343-X*

192ページ 22X16cm 定価1365円(本体1300円 + 税65円)

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