絵本 プンクマインチャ

絵本 プンクマインチャ

絵本 プンクマインチャの表紙です

絵本 プンクマインチャ
◆年齢◆
読んであげるなら5、6才向き
自分で読むなら小学校低学年向き


◆ジャンル◆
◆むかしばなし絵本

◆シチュエーション◆
◆特になし


大塚勇三 再話:秋野亥左牟 画

編集・発行 福音館書店
発売 福音館書店

初版年月日:1992年02月10日 ISBNコード:4-8340-1082-1

28ページ 20X27cm 780円(本体743円+税37円)


通常版はこちら!  定価780円(本体743円+税37円)

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子どもたちに昔話を読んであげようとすると、いくつかわからないことやなぜこんなものがこんなところに登場するのだろうと、疑問に思われることに出くわします。

子どもたちはすんなり受け取ってくれますが、大人のほうはやはり気になりますね。
このプンクマインチャにもいくつかそんなモチーフやキーワードがあります。
(1)食べるということ食べられるということ
昔話や神話で最も多いのがこのモチーフですね。
「三びきのこぶた」「おおかみと7ひきのこやぎ」、日本では「くわずにょうぼう」「やまなしもぎ」などいくらでも例をあげることができます。
どんなに文化が進んでも、この「食べる食べられる関係」から逃れることはできないし、この関係を残酷だと避けて通る訳にはいきません。私たちの命は、食べることによって支えられているからです。
ではどのように昔話や神話(人類)は、「食べる食べられる関係」を考えてきたのでしょうか。
人類は、「食べる食べられる関係」を倫理観に高めてきました。
つまり、生かされていることを「感謝」する生活スタイルを築いてきたのです。多くの季節行事がありますが、それらは宗教行事ではなく、ほとんどは感謝を表す方法=儀式といっていいと思います。

  ・食べ尽くさないこと(例・アイヌの昔話「ウバユリ」
  ・食べものを丁寧に扱う

とってきた食べもの(植物・動物を問わず)はすべてきれいに食べること。
そして残った「骨」はとりわけ大事にしました。骨は完全に残し、きれいに葬ると「向こうの国」で再生し、再び食べものとしてやってきてくれると考えられたのですね。
元来自然からの贈りものは、根こそぎとってしまわないかぎり無尽蔵ですから、それへの感謝として人間が「おかえし」できる物はありません。形のないもの「こころ」を返さざるえません。だからていねいに尊敬をこめて「おかえし」の儀礼をおこないました。
この絵本「プンクマインチャ」にも、そのモチーフがありますね。
継母は「ドーン・チョーレチャ」をみんなで食べてしまおうといいます。プンクだけは食べず、骨を丁寧に扱って、牧場に埋めます。(他の話では食べる例が多い、食べてもいいのです。問題はその後の感謝の仕方にあるのです)
するとどうでしょう。次の日行ってみると、そこに無尽蔵ともいえるヤモリーというまんじゅうがどっさり成る木を、自然(ドーン・チョーレチャ)はプレゼントしてくれました。

(2)主人公のもつ欠落状態、アンバランス
昔話はすべてハッピーエンドですね。ハッピーエンドになるためには、物語の最初の部分に欠落やアンバランスがあって、最後にそれらが回復されなければなりません。
プンクマインチャは、継母やその娘につらい仕事をさせられます。それはやサンドリヨン(灰かぶり・グリムの昔話・シンデレラ物語)と同じです。でも最後には、プンクはおにのところから宝物を手に入れて幸せになります。

(3)主人公を支えたり、助けるものの存在
・ドーン・チョーレチャ
このお話は、ネパールでは「ドーン・チョーレチャ」が原題だそうです。このお話を採集した画家の秋野亥左牟さんが「プンクマインチャ」という題に変えたとおっしゃっていました。
ドーン・チョーレチャは「きつねの頭とやぎの頭の、二つ頭の雌やぎ」でした。この動物はネパールでは神獣だそうですが、プンクがお腹空かせていると、その角からパンや豆のスープを出してくれます。
ドーン・チョーレチャは、明らかに死んだお母さんの代理で、支え助ける存在、プンクの守護霊です。灰かぶりにある、お父さんが土産としてくれた小枝がお母さんのお墓の横で大きくなった木(ヘーゼルナッツの木)と同じ役割をします。ドーン・チョーレチャは継母らに食べられると、ヤモリーを成らす木に変身してプンクを助けます。
二つ頭の動物とはどんな動物なのでしょうか。ネパールでどのように信じられているかを全く知りません。でも、そういった二重性(二つ頭)をもった動物は、いつも「むこうの国」とこちらの世界を繋ぐ役割をはたします。だから死んだお母さんの代理を務めることができます。そして変身した木は(特に高い木は)どこの神社にもあるように、神の依代(よりしろ・木をつたって神はおりてくる)で、同じく「向こうの国」とこちらの世界を世界を繋ぎます。

・消し炭
このお話でいちばん不思議なのは「消し炭」が、おにが帰ってきたときに、「はい、はい」としゃべって、プンクに代わって時間稼ぎをすることですね。プンクが戸口の側に「つば」をかけるのはまさしくプンク=つばを意味しますが、ここになぜ「消し炭」が出てくるのでしょうか。プンクはパンを焼いているところに留意しておいてください。
サンドリヨン(灰かぶり・グリムの昔話、シンデレラの原話)を間に入れて考えると分かりやすくなります。灰まみれの女の子がどうして王子と結婚できたのでしょうか。実は台所の隅の炉、カマドには重要な神・精霊がいます。
日本にも「カマドの神」がいますね。世界中どこもおなじです。カマドの神とは「火の神」のことです。人類の歴史にとって、「火」を手に入れたことは画期的な出来事ですね。それは向こう国から授かったものですから、「火」を大事し、崇拝しました。カマドには火の神がいて、火を大事にする人のことを助けてくれるのですね。サンドリヨンもプンクも、いつも火の神の近くにいました。だから火の神(灰、消し炭)は二人の心の根っこをよくしっていましたから、いざというときには助けようと思っていたのです。

・豆
ドーン・チョーレチャがプンクに食べさせるのはパンと豆のスープでした。
プンクが食べるスープは「豆のスープ」でなければなりません。それはプンクを慰め、力づける素なのですから。豆も、向こうの国(死んだお母さん)とこちらの世界(生きているプンクの世界)を繋ぐ役割をします。繋ぐ役割のドーン・チョーレチャが、繋ぐ役割の食べ物をプンクに与えています。「灰かぶり」にも豆は出てきます。
アメリカ・インディアン、古代ギリシャでは豆をまく儀礼があり、ギリシャ・ローマのユピテル祭では神に豆をお供えしました。それらはいずれも死者を迎える儀礼です。
生者(こちらの世界)と死者(向こうの国)の間には、境界があります。その境界の間を取り持つ「もの」として、豆は死者と生者を繋ぐ役割をします。
ではなぜ、豆が生者と死者を取り持つものになりうるのでしょうか。

(・)『広い地域で共有されていた神話的思考において、「豆」は男性性の中の女性的なものを表すとともに、女性性の中の男性性を表す』(人類最古の哲学・中沢新一)。
豆は二重性を持つ、つまり、両方の世界に属する性格をもつゆえに、対立するものや世界を繋ぐ働きを持つという説です。
(そういえばドーン・チョーレチャも二重性=二つ頭を持ちますね)
(・)「ジャックと豆の木」を思い出して下さい。
ジャックは豆のつるによじ登って向こうの国へいきます。ここには両方の世界を繋ぐ豆のつるのイメージがあります。
あるいは、たとえば、「七夕」のお話では、天稚彦(アメワカヒコ)=牽牛は鬼の息子でしたが、ある時、天上へ帰ってしまいます。それを追いかけて、おり姫は天上(向こうの国)へ登るのに、「一夜瓢」の乗って行きます。「一夜瓢」とは一夜で延びる「ひょうたん」のこと。つまり「つる科」の植物は、向こうの国との橋の役目をしています。
また、「鬼が出た」でも書きましたが、鬼が出現するところは決まっていました。そこは時間的にも、空間的にも《境界》でしたね。境界に掛かる橋、それが「つる科」の植物というわけです。豆の多くはつる科の植物の実ですから、豆自体が《橋渡し》の役になりうる資格を持っていると考えてもいいと思われます。日本の豆まきは、鬼をやっつける行事ではなく、インディアンの死者の儀礼と同じく両世界を繋ぐことを意味していました。
豆まきの豆は投げつけるものではなく、まくものが本来のありかただったと思います。

・おに
「鬼が出た」の解説をお読みください。
人は死ぬと向こうの世界(異界)へいき、魂や神となって自然界と一体化します。その「たましい」は、今に生きている人びとを、守ったり、恵みを与えたり、時には脅しや災害を引き起こし、恐怖を与えます。このようにおにと神は、本来同じものだったと考えられます。この絵本の「おに」は〈悪〉の面を表していますが、どこか間が抜けてユーモラスです。

・ネズミ
多くの昔話では、ネズミは宝物に導く役をもっています。日本の「おむすびころりん=ねずみじょうど」など。隅っこに住むものは、虐げられた者、心優しい人を助けるものだというのが古来からの人類の考え方ですね。それは世界中同じです。
こうしてプンクマインチャは幸せを手に入れます。
さて、このお話を絵本にする場合、お話の奥に隠された大事なことを、この解説のような長々とした文章ではない方法で、つまり絵で、読者の心のひだに織り込まれ、何か大事な啓示がここにはあるぞと感じてもらう必要があります。
この絵本の画家秋野亥左牟さんは、次のように語っていました。
「僕は自我表現の絵、近代的絵画を描きたくなかった。ネパールでそうではない絵画(宗教画、神・仏・大自然・大宇宙との交感の絵、神や精霊をこちらの世界に呼び込んでくる絵)に出会ったとき、絵を描こう、そしてこのお話を採集した」と。
秋野さんのおっしゃるとおり、この絵本の絵からは、大自然や大宇宙との交感を感じることができます。まさにこの絵本そのものが、向こうの国とこちらの世界を繋ぐドーン・チョーレチャではないでしょうか。



内容紹介です

『むかし、ネパールにプンク マインチャというおんなのこがいました』
プンクの今のお母さんは継母でした。継母にはチャンパという娘がいました。継母はプンクには少ししか食べものをくれません。そのうえ、仕事はみんなプンクにいいつけるのでした。だからプンクは毎日やぎをつれて山の牧場に行きました。

やぎたちのなかに〜

やぎたちのなかに、ドーン・チョーレチャというやぎがいました。このやぎは、きつねの頭とやぎの頭の二つ頭の雌やぎでした。
山の牧場でプンクがお腹空かせていると、いつもこれをお食べと、頭のつのからパンをだし、あまい豆のスープもかけてくれ、慰めてくれるのでした。
ところがある日、チャンパがそれを見つけ、「私にもちょうだい、でないと、いいつけるから」といいます。プンクは誰にも話さない約束をしてチャンパにもパンとスープをあげました。
でも、チャンパは帰るとすぐお母さんにいいつけました。
継母はくやしがって、明日はみんなでドーン・チョーレチャを食べてしまおうと決めました。

ドーン・チョーレチャは、きつねのみみで、なにもかも きいてしまいました。〜

それを知ったドーン・チョーレチャは、プンクにいいます。
「よくお聞き、私は今日殺される。みんなが私の肉を食べるけれど、お前は食べてはいけないよ。お前は私の骨を集めて牧場に埋めておくれ」
プンクはやぎの言ったとおりして、その夜のうちに、牧場に骨を埋めました。
次の日、プンクが牧場にいってみると、夕べ骨を埋めたところに大きな木が生えています。その木にはヤモリーというまんじゅうがどっさり成っているのです。プンクはヤモリーを次から次へ食べました。
すると、そこへおにの夫婦がやって来ました。
「むすめさん、ヤモリーをおくれよ」
プンクがヤモリーをいっぱい持っておりると、おにたちはプンクをさっと担いで山奥の深い洞穴に連れて行きました。
おにたちはプンクにパンとスープを作るようにいいつけると外へ出て行きました。
プンクがパンを作っていると、小さなネズミが出てきて、パンがほしいといいます。ネズミたちに七回パンを投げてやると、1匹のネズミがいいました。
「はやくお逃げ、でも、その前に奥の部屋をみてごらん。宝物がある。もう一つ大事なこと。逃げるときには戸の側につばをはいて、その上に消し炭を置いて置きなさい」と教えてくれます。
プンクはネズミのいう通りして逃げ出しました。
おにたちは帰ってくると戸の前で、開けておくれといいました。すると消し炭は「はい、はい」と答えます。でも戸はちっとも開きません。おにたちは戸を破って入りましたが、プンクはいません。おにたちはくやしがり、この次はきっとくってやるとわめきました。
こうしてプンクは宝物を持ち帰りました。
継母はプンクが宝物を手に入れたのがくやしくてたまりません。そこで、チャンパにもとってこさせようと決めました。
チャンパは出かけ、プンクと同じように、おにの洞穴に連れていかれますが…。







読み聞かせのポイント
いくつか疑問に思われるだろうという点について解説にくわしく書いておきました。
でも、子どもたちには、そういった点を気にすることなく読んであげていいと思います。意外とすんなり受け取ってくれますよ。そこに何か重要なことや何十万年という人類史の知恵が隠されていることを感じるはずです。
淡々と、ゆっくり読んであげてください。

絵本 プンクマインチャ
◆年齢◆
読んであげるなら5、6才向き
自分で読むなら小学校低学年向き


◆ジャンル◆
◆むかしばなし絵本

◆シチュエーション◆
◆特になし


大塚勇三 再話:秋野亥左牟 画

編集・発行 福音館書店
発売 福音館書店

初版年月日:1992年02月10日 ISBNコード:4-8340-1082-1

28ページ 20X27cm 780円(本体743円+税37円)


通常版はこちら!  定価780円(本体743円+税37円)

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