絵本 ぼくらの地図旅行

絵本 ぼくらの地図旅行

絵本 ぼくらの地図旅行の表紙です

絵本 ぼくらの地図旅行
◆年齢◆
親子で絵本(地図旅行)をいっしょに体験するなら小学校低学年から
自分で読むなら小学校中学年から


◆ジャンル◆
◆科学絵本

◆シチュエーション◆
◆ともだちとあそぼ!絵本


◆おでかけしよう!絵本



那須正幹 文:西村繁男 絵

編集・発行 福音館書店
発売 福音館書店

初版年月日:1989年01月31日 ISBNコード:4-8340-0826-6

56ページ 27X31cm 1995円(本体1900円+税95円)


通常版はこちら!  定価1995円(本体1900円+税95円)

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この絵本には
 (1)地図の面白さ
 (2)旅の魅力
 (3)ともだちの存在、二人旅の魅力
 (4)絵本ならではの楽しさ
などにあふれていて、実際の旅以上の旅を体験できる絵本です。

(1)地図は面白い
1枚目の画像が、左端の中辻駅から右端の花香崎の岬までのシンちゃんとタモちゃんが灯台を目指して歩くことになる全行程の地図です。
地図は平面上に、地表の高低や状態がことこまかに書き表されています。地図記号を読めば、道の広さ、傾斜、主要な公共建物、まわりの風景を想像することができますし、土地の歴史などわかってきますね。現地にいかなくても、地図上での旅を楽しむことができます。
たとえば地図によると、「天田川」は現在水は流れていませんが、野浜町の西に広がる田んぼは、その天田川ともう一つ(川の名前は不明)川が運んで出来た州を干拓や開発して作ったものと考えられます。そしてその際、川沿いに堤防(自然堤防)を整備したために、天田川は天井川になり、堤防上の道はかなり高くなっています。だからそこから東側をながめると、ちょうど目的地・花香崎がうっすらとみえるはずです。
タモちゃんは「へえ、あんなところまで歩くの」と言っています。周りは田んぼですね。振り返るとすぐ後ろにかなり高い山(385m)が見えるはずです。
タモちゃんは言っています。
「それにしてもよくここまでこられたもの。地図がなかったらと考えました。『地図があると元気が出る』ということをぼくは始めてしりました」
もちろん地図は、現在自分たちのいるところや目的地までの距離、どんなところかをある程度教えてくれます。タモちゃんが言っているように私たちが持っているもう一つの目(メタ認知能力=自分が自分を鳥が見るような目でみる、客観的な視点)をかなり正確に意識させてくれるのが地図ですね。
(2)旅の魅力
この絵本の旅は、本来の旅とは少し違って、売り言葉に買い言葉に始まった、いわば「地図」は絶対に正しいと考えるシンちゃんの考えを証明しようという旅です。だからこの旅は、地図記号と磁石に従って旅をすれば、目的地に間違いなく到着するはずという「地図旅行」ですから、旅先での人との交流はほとんどありません。実際の旅では、これほどまで地図を重視することはなく、方々で道を聞いたり、見慣れぬものを何だろうなどと、そこに住む人びとに聞くものですね。(もちろん二人は史跡や港を見学していますが)
がしかし、そのような旅は旅慣れた大人のものでしょう。むしろ子どもだけのはじめての旅の最大の魅力は、目的地に到達する「達成感」にあるのではないでしょうか。
この絵本のシンちゃんにはあまり周りは見えていないと思われます。「きっと行ける」と呪文のように思いながらシンちゃんは歩いていたと思われます。
(3)ともだち、二人旅
目的地灯台へ着いたとき、この旅への二人の思いが対照的なのが興味深いですね。タモちゃんが、「地図」ってすごいと思うのに、シンちゃんは「ともだち」がいたからといいます。
この旅がシンちゃんひとりだったとしたら、もっと迷路にはまったにちがいありませんね。シンちゃんの性格もあると思われますが、それだけではなく、ひとりというのは思いこみを修正できにくいものです。
日常においてもこの二人は、この絵本のような関係でしょう、でも、旅というのは自然に配役を決めてくれる面があります。あるいは旅は選択や決断場面で、はっきりその性格を表します。コンビにおける「つっこみ」と「ぼけ」は、目的達成において大きな役割を果たしますね。
(4)絵本ならではの楽しさ
なんといってもこの絵本の楽しさは、二人がいく先々の土地で、人びとがどんな日常生活を送っているかが細かく描かれていることです。
この絵本を見ていると、日本の伝統的絵画(「絵巻物」や洛中洛外図の「屏風絵」)を見ているようですね。
たとえば、二人は野浜町へ入りました。野浜の交差点をすぎ、役場の前を通ってちょうど野浜町派出所の前を東に向かって歩いています
向かいの南病院からは足を骨折した人が松葉杖をつきながらでてきました。南病院の西となりは民家風ですが、その看板から判断すると洋装店のようです。南病院の駐車場と洋装店の間には路地があります。路地の入り口にちょうど野菜行商のあばあちゃんが来ています。目を野浜交差点の方に移しますと、東西に走る道が今青信号ですね。バスが東西道を西に向かって、交差点を通り過ぎるところです。交差点の南西角には魚屋「魚勝」さんがあります。交差点の歩道を電動車イスで渡っている子がいますが、この子は別の絵本の主人公ですね
。 もう一場面(2枚目の画像)を見ましょう。
二人は野浜の町をすぎ、海岸沿い(ここは車エビの養殖場になっています)を東へ、郵便局をすぎるともうここは花香崎の根元にあたります。「こばと保育園」では先生が布団を干しています。子どもたちは木に登ったり、外で遊んだりしていますが、なにやら泣いているらしい子もいます。画面の一番手前では、民家の畳替えに来た畳屋さんが、ちょうど休憩なのでしょうお弁当を食べています。このお家の方がポットにお茶を入れてきました。その右側のお家は鉄筋2階建て。二階のベランダに布団を干していますが、家の人は見あたりません。左官の人が黙々とこの家のブロック塀をついています。その民家の手前は畠になっています。
それから今この町は町長選挙中です。選挙カーから「よしだ候補」らしき人が身を乗り出しています。応援の人が二人、橋のたもとに出て手を振っています。画面右上には海が見えています。増田屋さん(新しく店をオープンしたようでですよ)の角の標識によると、花香海水浴場がもうすぐ、二人はその海岸へ向かう道との十字路にさしかかりました。
『四層の体験』
さて、この絵本のどの場面も、それほど高い位置からではありませんが、俯瞰(ふかん)図ですね。この町にいる人びとの一人一人が、じつにくっきりと何をしてるかまで描かれています。町の全景を俯瞰図でみる場合こんなにはみえないはずですね。選挙カーを見るときはそこに注目しますし、同じようにその反対側、酒屋さんをみるときには目はそこを注視します。そのときその両方を同時にはっきりと同じ視点からみることはできません。この絵本はただ一点から世界を見ているのではなく、人物を見る際には画家もその人物に近寄って見ていることになります。つまりこの絵本は違った位置から見たものを、同じ画面に描いていることになります。
こうして私たち読者は、この絵本によって、・地図によって旅の全行程を想像すること・シンちゃんとタモちゃんを遠くから見ること・二人の視点・位置から旅をすること(ところどころに、二人のクローズアップの絵も添えられています)・二人とは関係なく、二人が通った道の周辺の人びとが、金曜日のその時間にどんな生活をしているかを見ること、を体験することができます。つまり私たちは四つの層の体験を同時にしたことになりますね。これこそ絵本だからできる楽しい体験ではないでしょうか。



内容紹介です

『そもそものはじまりは、シンちゃんと安井くんのけんかだった』
安井くんが「ドライブに行って、道に迷い、岬についたけれど灯台なんかなかった」と教室で話していました。
そのとき、
「地図がボロっちかったか、地図の見方を知らなかったからだ」とシンちゃんが口をはさみました。
「へえ、そんなら地図があったら迷わないのだな。それなら行ってこいよ」と安井くん。
「タモちゃん、どうする?歩いてみようか」
「え?ぼくも行くの」
けっきょくシンちゃんは、みんなの前で中辻駅から野浜の岬まで(8キロの)地図旅行をする宣言をしてしまいます。
こうして二人は下の地図の岬の灯台に行くことになりました。

あんのじょう〜

シンちゃんのお兄さん(高校生)が、地図を見せてくれました。地図の右端の岬にあるマークが、目指す灯台にちがいありません。「野浜へ行くには、半島を東に向かって歩けばいい」とお兄さん。
そして金曜日(学校が休みになった)、午前7時50分の電車に乗り込み、10分ほどで中辻駅に着きました。
こうして二人は、野浜に向かいました。
やがて、「陶ヶ岳登山口」という道標のそばにやってきました。二人は陶ヶ岳を見ながら地図を広げました。地図の陶ヶ岳にはぐにゃぐにゃ線やいろんなマークがついています。
「このマークは岩のがけを表し、ぐにゃぐにゃの線は等高線といって、同じ高さを結んでいるんだ。線が詰まっている山は険しく、間が開いているのはなだらかな山なんだ」とシンちゃんは教えてくれました。
なるほどほんとの雨乞山はなだらかに見えました。
二人はまた歩きはじめました。
「もう、2キロ歩いてるなあ。この先は山道、梅の木峠を越えるんだ」
行く手に山が迫ってきて、道が2本に分かれています。アスファルトの道は山裾に沿って大きく右に曲がっていました。
ぼくらの道は舗装していない山道。
ぐにゃぐにゃ道に息をきらせたころ、やっと峠の頂上、前方が明るくなりました。峠を下っていくと再び広い田んぼが現れました。
ふもとの村、天田のお堂で休憩。9時20分でした。
そこから天田川土手を下っていると、この土手は天井川なので見晴らしが良く、青くかすんだ山がぽつんと地平線からみえました。
「あれが岬じゃないかな」とシンちゃん。
「へえ、あんなところまで歩くの」
「行けるよ、ぜったい行けるさ」シンちゃんは自信満々。
が、その10分後のこと。
道が天田川の土手をそれて、北の山の麓に近づいたとき、ふたまたの分かれ道にやってきました。
シンちゃんは迷わず左の道を歩き始めました。道はどんどん山あいに入っていきます。
「ねえ、これでいいの?磁石で調べてみたら?」とタモちゃん。
シンちゃんはやっと磁石を取り出し調べてみました。
「あれ、ぼくたち北にそれてる」
でも、道を間違えたおかげで、お宮の横にある古墳を見物できました。
いそいで引き返した二人は、11時30分、ついに野浜町の看板をみつけました。
この町は十字路を中心に商店や役場などがあつまっていました。十字路をすぎると、急に潮の香り。港を見学して帰りのバス時刻表をちゃんとメモ。ふたたび、岬へ向かいます。地図によるとあと3キロほどです。
郵便局の前をすぎたとたん、前方に三角形の山が見えてきました。

前方に〜

山はいたるところけずりとられ、灯台らしいものは、どこにもありません。
三角の山の左手にもうひとつ小高い山があって、これも岬のようです。その山の頂には白い塔がたっていました。
「シンちゃん、あっちが灯台のある岬じゃないの」
「ちがうよ。灯台のあるのは花香崎」
二人は浜辺に向かって走りました。野浜のさきっちょにたどり着いたのです。
白い砂浜が弓なりにつづき左右には岬がつきだしていました。
シンちゃんはいいました。
「あっちが草山崎、こっちが花香崎。こっちを登ればきっと灯台があるさ。だって地図にかいてあるもの」
もう12時30分でした。
シンちゃんは休む気はなく、採石場の上の山道に突進しました。
15分ほど登って、頂上らしきところにつきました。ところが灯台はありません。
「シンちゃん、灯台はあっちの岬だと思うよ」
「じゃあ、この地図間違っているというの。この地図お兄ちゃんが貸してくれたんだよ」
シンちゃんは横を向いてしまいました。
それからぽつりと、
「やっぱりあの白いのが灯台かもしれないね。地図が間違っているんだ」
二人は砂浜までおりてお弁当を食べました。シンちゃんはいつも手にしていた地図を放り出しています。
午後1時40分出発。
ともかく灯台のある岬まで行かなければ、安井くんとの約束が果たせません。
峠の頂上に喫茶店がありました、ちょうどおばさんが掃除をしていました。
「地図で見たら、灯台は花香崎の岬にあるってかいてあるんですけど」シンちゃんは聞きました。
「そうでしょうね。去年この草山にたてかえたの」
「灯台へいくのなら、その道を登ればいいよ」とおばさんは教えてくれました。
シンちゃんは口笛をふきふき急な坂道をぐんぐん登っていきます。
最後の急な坂道を一気にのぼりきると、
青い空に真っ白な灯台がそびえていました。
「やったー」
二人は灯台で少し遊びました。
「タモちゃん。ありがとう」
「ぼくはシンちゃんの後をくっついて歩いただけだから…」
でもシンちゃんは首を大きくふって、
「地図があったってだめさ。たよりなるともだちがいないと」。







読み聞かせのポイント
夏休みにはこの絵本のような地図旅行をしたらいかがでしょう。
小学校低・中学年なら、親子で行ってもいいですね。
しかし、夏はやはり暑すぎるでしょうか。この絵本の季節は秋ですから、そんな小旅行は秋にとっておいて、クーラーの部屋で、この絵本を床に広げ絵本・地図旅行はどうでしょう。これだと何人かで、「ここにこんな人がいる!こんなことを話しているぞ」などと発見や想像したことをみんなで語り合うのも良いかも知れません。
またこの絵本には最後のページに「絵索引」がついています。「コンバイン」はp12,p27、…、犬や猫のいる場面は数ページ、また他の絵本の登場人物「おふろやさん」の親子が歩いているなど、そんな見落とした所を前のページに帰って探す楽しみもありますよ。

絵本 ぼくらの地図旅行
◆年齢◆
親子で絵本(地図旅行)をいっしょに体験するなら小学校低学年から
自分で読むなら小学校中学年から


◆ジャンル◆
◆科学絵本

◆シチュエーション◆
◆ともだちとあそぼ!絵本
◆おでかけしよう!絵本


那須正幹 文:西村繁男 絵

編集・発行 福音館書店
発売 福音館書店

初版年月日:1989年01月31日 ISBNコード:4-8340-0826-6

56ページ 27X31cm 1995円(本体1900円+税95円)


通常版はこちら!  定価1995円(本体1900円+税95円)

「えほんおじさんセット」はこちら!  セット価格2195円(税込)

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 A Tragedy Never to Be Repeated(英語版 絵で読む広島の原爆)」
  那須正幹 文  田中利幸訳  ジョアンナ・キング 訳
●画家西村繁男さん関連図書
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「おふろやさん」
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「みんなであそぼう  650のあそびのヒント集」 有木昭久 案
「10才のとき  高橋幸子 聞き手  大木茂 写真」
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