3月号

 えほんおじさんです。

 今週紹介の月刊絵本は、ほぼ同年齢(3〜5歳)を対象と
していながら、表面上ほとんど共通性はありません。
それだけに月刊物語(かがくえお含んでいます)の
守備範囲の広さを証明する示す2冊となっています。

 それでは、今日もごゆっくりお楽しみください。

 1冊目。
●スプーンのおうじさま(こどものとも 年中向き 2018年3月号)
は、今時珍しいけれどとても大切なことである「働くこと賛歌」な
絵本。
 毎日張り切って楽しく仕事をし、家(引き出しに)帰ってくる、
日常の大切さ。そこへ働くのは嫌いといいはる「スプーンの王子様」
がやってきます。ところがある日、その「王子様」が赤ちゃんの
スープ運びをやるのです。そしてその楽しさを語り出しました。

もう1冊、
●もう いいかあい? はるですよ(ちいさなかがくのとも 2018年3月号)
の方は、山(山神)が春を迎える大自然の営みのお話。山は目に見える
ものから見えない「モッコ」たちまで、あらゆる生きものを住まわせて
います。その住んでいるものどもが次から次へ春を感じて芽吹き、
目覚めようと「もう、いいかあい?」と山に言います。でも山は
どっしりのんびり、「もういいよお」とはなかなか言いません。
さて、山(山神)はどんなふうに春を迎えるのでしょう。

とはいえ、2冊とも日常に起こっていることでありながら、
ファンタジー絵本なのです。


●こどものとも 年中向き 2018年3月号
 「スプーンのおうじさま」黒ア美穂/文 鬼頭祈 /絵


◎著者紹介
・作者 黒ア美穂
群馬県生まれ。保育士として子どもたちとふれあいながら、
子どものための物語や劇の脚本を多く書いている。
絵本は本作がはじめて。

・画家 鬼頭祈
1991年、静岡県生まれ。京都造形芸術大学日本画コース卒業。
広告、雑誌など多方面で活躍。絵本は本作がはじめて。

◎ストーリー紹介
 山本さんちの台所に食器棚がありました。一番上の引き出しには
スプーンがいっぱいしまってありました。大きいスプーンはカレー
やシチュー、中くらいのスプーンはアイスクリームやヨーグルト、
小さいスプーンは紅茶やコーヒー、そのときどきにみんなはりきって
でていき、たのしく仕事をするのでした。
ところがある日、家のなかはしんとして、それから何日も引き出しは
しまったまま。スプーンたちはたいくつしていねむりばかりして
いました。「ほぎゃあ!ほぎゃあ!」という声がして、目をさました
スプーンたちは「なにがあったのかな?」とさわぎます。そして
引き出しがあけられ、入ってきたのは銀のスプーンでした。
かんむりのついた箱にはいり、あしもとにはあおいガラスだま。
「ぼくはね、スプーンのおうじさまだよ」銀のスプーンはつんと
していいました…。

◎絵本の特徴
 いつも食器棚の中でじっと待機している、スプーンたちが
主人公のお話です。子どもたちにとってスプーンはなじみ深いもの
の一つだと思います。
欧米では「銀のスプーンをくわえて生まれてきた」というような
言葉がありますね。銀のスプーンは当時裕福な家庭でしか使われ
なかったことから、“裕福な家に生まれた幸運な子ども”という
ような意味で使われていた言い回しです。現代ではそこから少し
転じて、銀のスプーンではじめての食事をすれば食べるものに
一生困らない、という意味にもなっているようです。このお話に
出てくる銀のスプーンはきっとそんな思いを込めて誰かから
贈られたものなのではないかと想像します。特別な箱に入って、
足元には青いガラス玉。普段使いのシンプルなスプーンたちが
びっくりするのも当然ですね。
 本人も自分が特別きれいなスプーンだということをわかっていて、
つんとしています。自分で自分のことを「スプーンのおうじさま」
だ、なんて名乗ることからも自信たっぷりなのがわかりますね。
面白いのはほかのスプーンたちの表情や反応です。
ちょっと困ったような顔をして、みんなで顔を見合わせている
ところなんて、文章では書かれていなくてもスプーンたちの気持ち
が手に取るように絵から読み取れます。
そんなちょっと困ったスプーンのおうじさまも、初めて赤ちゃんの
口に食べ物を運ぶ、というお仕事をしたときに自分自身の本来の
姿に気づいたようです。働くことの楽しさに目覚め、みんなとも
仲良くうまくやっていくようになる。
 子どもの絵本ですが、集団生活をうまくやっていく知恵が
描かれていて、大人が読んでもはっとさせられるような表現
ではないでしょうか? この絵本の文章を書かれた黒崎さんは
保育士さんでもいらっしゃるので、子どもたちの集団と向かい
合ってこられたのでしょう。こればダメとかあれはダメとか
いう形で禁止するのではなく、物語を経験することで本人が
何かに気づくように仕向けるというようなスタンスをこの物語
には感じました。物語が生きる力をはぐくむということを体で
感じていらっしゃるのだろうと想像します。
 絵もシンプルですが表情が豊かで、一本一本のスプーンに
生命が宿っています。
絵本を作るのが初めてというおふたりの強力なタッグ。
園での読み聞かせにもぴったりな一冊です。

◎子どもの反応
 眠る前に読んだので、じっと静かに聞いていて、読み
おわったらすっと眠りについていました。ホッと安心する
絵本なのでしょうね。

◎読み手の感想
 ちょっと昭和の匂いがするような絵の中に見え隠れする洗練。
今の若いイラストレーターさんたちの画風なのかな?
 こういうタイプの絵をよく見かける気がします。
漫画家さんにもいらっしゃいますね。こういうセンスって
どこから来たんだろう? 絵も文章もやはり時代を反映する
ものなので、現代の感覚というものがこの絵にははっきり
現れているように思います。
 そして私はこういう絵が好きです。上手いからあえて線を
減らす、みたいな上手い人にしかできない技法は単純に
うらやましい。さらさらと描いているようですが、きっと
そこに至るまではたくさんの訓練をされてきたのでしょう。
 この絵本は文章と絵のバランスが面白かったです。ちょっと
説明しすぎかな? というような文章を絵が受け止めて、
程よい隙間をつくってくれる。絵では描き切れない部分を
文章が支えている。お二人とも絵本が初めて、だからこその
新鮮さやエネルギーを感じました。


●ちいさなかがくのとも 2018年3月号
「もう いいかあい? はるですよ」富安陽子/文 松成真理子/絵


◎著者紹介
・作者 富安陽子
1959年、東京都生まれ。和光大学人文学部卒業。
児童文学に「やまんば山のモッコたち」「菜の子先生」
絵本に「まゆとおに」「おにのサラリーマン」など多数。

・画家 松成真理子
1959年、大分県生まれ。京都芸術短期大学卒業。
絵本に「じいじのさくら山」「ふでばこのなかのキルル」
「たなばたまつり」など。 

◎ストーリー紹介
 雪がやみました。雑木林のカエデのこずえでちっぽりちっぽり
ふくらんだきのめがこそっといいました。「もういいかあい?」
山はねむそうにいいました。「まあだだよお」
やわらかい東風がふいて、ちょろちょろさらさらととけたゆきが
流れになって谷にくだってゆきます。
山はぽかりとめをさましました。すると地面のしたから小さな声が
きこえました。「もういいかあい?」
やまはあくびをひとつしてこたえました。
「もういいよう」

◎絵本の特徴
 冬から春に変わっていく山の様子を彩るおおらかな美しい言葉と、
柔らかで鮮やかな絵。暖かい春の日差しのような絵本ができあがり
ました。
 大きな山はゆっくりゆっくりと目を覚まし、植物や川は
そわそわといそいで。この絵本には春というものが見事に表現
されています。春はいつもこんなふうにしてやってくるんですね。
 グレーだった冬の山が少しづつ色づいてくる様子や、空の色…。
画面をめくるごとにどんどん春になっていく。画面の展開を見て
いるだけでもわくわくしてきます。
 絵を描かれたのは、松成真理子さん。松成さんの体の中にある
春が画面にあふれ出てきたような絵が、春を待つ私たちの気持ちに
寄り添ってくれているようです。
 文章を書かれたのは言わずと知れた童話作家・絵本作家である
富安陽子さん。「やまんば山」のシリーズでも皆さんおなじみかと
思います。言葉遣いの面白さが際立っていてついつい引き込まれて
しまいます。独特の表現でありながら耳障りはやさしく、すっと
体の中で溶けていくようです。
 長年の子どもの本を書かれてきた富安さんの境地のようなものが
見えますね。富安さんの言葉が体の中に春を呼び込んで、読み手と
子どもたちを温めてくれることと思います。

◎子どもの反応
 ふとんのなかでぬくぬくと読み聞かせするのにぴったりな絵本
でした。春に思いを馳せながら読んだわたしの気持ちに、こどもの
気持ちも寄り添ってあたたかい時間を過ごせたと思います。

◎読み手の感想
 今年は寒い日が続いていますね。春なんてまだまだ先…。
果たして春なんて来るのかしら…とすら思えるような日々です。
 この絵本を読んで、確信が持てました。春はもうすぐそこまで
やってきています。静かに、静かに、音もたてずにやってきて、
ある日突然、世界は春になるのです。
本当は突然じゃないんですけどね、でも毎年、春というのはある日
突然やってくるという印象です。そのがらっと変わる様子をいつも
不思議な気持ちで眺めています。
 富安陽子さんの自然に対するまなざしや、その描写力はすばらしい
ですね。今上の子に「やまんば山のモッコたち」を読み聞かせして
いるのですが、お若いころからその文章力には光輝くものがあります。
そのころから歳を重ねて、さらに言葉にふくらみが出てきた感が
ありますね。以前、富安さんの講演会をお手伝いさせていただいた
際に、いま“ちいさなかがくのとも”にとりくんでいらっしゃると
いうお話を聞きましたが、その絵本が多分この絵本なのだと思います。
あれは3年ほど前でしたので、あれから練りに練ってこの美しい
絵本になったのだなあと思うと感慨深いです。
 この絵本もじっくりじっくりと土の中で育って、いまやっと
明るい日差しの下で花を咲かせたのでしょうね。




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