3月号2

 えほんおじさんです。

 今月号の
●ちいさなはりねずみ 年少版こどものとも 2018年3月号

は、始めての「散歩」での失敗談。
この年齢は好奇心がいっぱいだから、どうしても注意力が
薄れてしまいます。でも、その体験はとっても貴重。
親としては難しいところですが、素晴らしい「自然」とその危険、
そして大いなる優しさに出会うチャンスを潰さないことも大事
だと思います。

 一方、
●かもつせんのいちにち かがくのとも 2018年3月号

 では、とにかく「じっと見る(もちろん心は大いに動いていますが)」
ということをすれば、いろんなことがわかってきます。
絵本はこんなにも幅の広い体験そさせてくれます。


 それでは、今日もごゆっくりお楽しみください。

◆年少版こどものとも 2018年3月号
「ちいさなはりねずみ」八百板洋子/文 チャルーシナ・ナターリヤ/絵


◎著者紹介
・作者 八百板洋子
福島県生まれ。ブルガリアのソフィア大学大学院に留学。
絵本に「ほしをもったひめ」「猫魔ヶ岳の妖怪」など多数。

・画家 ナターリヤ・チャルーシナ
ロシアのレニングラード市に生まれる。
同市美術アカデミーのグラフィック科を卒業。
絵本に「もりのてぶくろ」「りすともりのあしおと」など。

◎ストーリー紹介
 ある静かな夕方です。森の中をかあさんはりねずみと5ひきの
子どもたちが歩いていました。一番うしろは一番ちいさなはりねずみ。
初めて歩く道にうれしくてあっちをフンフン、こっちをフンフン。
好奇心いっぱいのハリネズミは、みんなから離れていろんなものに
出会います。花、川、犬、そして食べられそうになる狐と優しい
アライグマ。

◎絵本の特徴
 美しく繊細な絵で彩られた表紙。思わず手に取る方も多いはず!
 少し彩度の低い落ち着いた色使いでありながら、鮮やかで豊かな
森の姿がありありと描かれています。
 小さなハリネズミがおかあさんや兄弟たちから離れて一人で
様々な動物たちと出会うお話は、世界を少しづつ広げていく時期の
子どもたちの気持ちに寄り添います。ハリネズミが出会うのは
ほとんどは親切な動物たち。でもすごく怖いキツネにも出会います。
親切な動物たちは、小さなハリネズミをこの世界に歓迎して迎え
入れ、ちょっと怖いキツネは危ない目にあったとき自分で自分を
守らなければいけないんだよ、と示唆しているようです。
最後にはちゃんとおかあさんが迎えに来てくれて、仲良くお家に
帰るという展開に安心しますね。丁寧な言葉と、絵。子ども
たちの目をまっすぐに見て真剣に描かれた絵本だということが
伝わってきます。奥行きのある森の世界での冒険を、ハリネズミと
一緒に堪能してください。

◎子どもの反応
 森の中にいろんな植物を発見して喜んでいました。
サクランボがたべたいなー、と読み終わった後に
つぶやいていました。

◎読み手の感想
 ナターリアさんの絵は本当に美しいですね。
前回の「りすともりのあしあと」の時もその風景の美しさと
リスのかわいらしさにため息が出たのを覚えています。
デフォルメの加減も素敵ですね。リアルさを残しつつ親近感を
持てる可愛さの、このさじ加減は作家さんによっていろんな
やり方があるのだとは思いますが、ナターリアさんの加減は
絶妙ですね。
 前回の作品も八百板さんが文章を書かれていましたね。
お二人の世界観やバランスが、この見事な調和を生み出している
のでしょう。しかし、外国の方の描く色味と日本の色味って
どうしてこんなに違うんでしょう? 絵具の違いなんかもあるん
でしょうが、見ている風景の色味がそもそも違うんだろうなあ。
くすんだ色が大好物なので、こういう色味の絵本は嬉しく
なりますね。

◆かがくのとも 2018年3月号
「かもつせんのいちにち」谷川夏樹/作


◎著者紹介
・作者 谷川夏樹
1976年生まれ。13歳から独学で油絵を描き始める。
油彩、アクリル画の平面作品と平行して、実物のコンテナを
用いた作品など、コンテナをテーマとした作家活動を続けている。
著書に「AloAloha!コンテナくんハワイの旅」
「コンテナくん」などがある。

◎ストーリー紹介
 朝、港に貨物船がとまっています。
ガントリークレーンが大きな荷物をつぎつぎ積み込んでいます。
この貨物船は倉庫のある港から工場のある港へきめられた時間に
荷物をはこびます。荷物が積みおわるといよいよ出発。貨物船は
ゆっくりと港をでていきました。重い荷物を運ぶ貨物船は急に
止まったり曲がったりすることができません。ここは船員たち
(たった5人の乗組員)の腕の見せ所。前を進む船、すれ違う船、
横切る船の向きを正確に見張ります。

◎絵本の特徴
 海に出ると、向こうのほうに大きな船が行きかうのを見たことの
ある子どもたちも多いと思います。小さい船。中くらいの船。
大きい船。今回の「かがくのとも」は大きな貨物船が主人公です。
そのスケールは大きなものへの憧れを持つ子どもたちの心を
引き付ける事と思います。
 貨物船の運ぶのは鉄の板をまいたコイル、というもの。
コイルはたったひとつでもぞう3とうとおなじくらいの重さが
あります。大きなトラックでも一度に二個しか運べないような
コイルを、貨物船なら一度に百個以上運べるのです。
 文章で具体的な大きさや重さが実感として情報を伝え、
はっきりとした線で的確な描写力をもって描かれた絵は、
さらに深い知識を視覚で伝えます。しかしその言葉にも絵にも
柔らかさやふくらみがあり、船の有機的な一面をとらえています。
船に乗る船長さんの一日も丁寧に描かれて、大きな大きな船の中
での人々の息遣いには親近感を覚えます。
 画面の展開も見事。船の中時間を淡々と描いたシーンから一転、
巨大なコンテナ船にぶつかりそうになる画面では、暗雲が立ち
込め波が荒立ち、向こうからこちらに向かってぬっと入ってくる
黒っぽい大きな船に一気に緊張が高まります。大きいと思っていた
貨物船よりも、さらに大きなコンテナ船。こういう情報を
さりげなく物語の中に取り入れているのもこの絵本の素晴らしい
ところではないでしょうか。そしてそのあとの美しい、穏やかな
朝焼けの海。
 「かがくのとも」にふさわしい、情報量と物語性をあわせもつ
一冊です。船に興味のない方にも、ぜひ読んでいただきたいと
思います。

◎子どもの反応
 船の中の断面図に思いを馳せ、(トイレ行きたくなったら
どうするか? とかを真剣に検討)コンテナ船の大きさに
驚いてどれくらいおおきいのかを想像したり。いろんな角度から
楽しんでいました。絵が素晴らしいと、子どもたちはこちらが
誘導するまでもなく、ありとあらゆる発見をしますね。

◎読み手の感想
 長男は、2歳くらいのころとにかく船が好きでした。
海が近くにあって、行きかう船を眺めによく散歩に
出かけたものです。遠くに見える船はおもちゃのように小さく、
ゆったりと動いているように見えますが、近くで見る船はとにかく
巨大で、その全容すらつかめないことに驚いていました。しかも、
船の外側には少し傷があったり、緑の藻がくっついていたり、
フジツボがくっついていたりして、遠くで見るのとは全然違う姿を
見せてくれます。息子はとにかくその巨大さに尊敬というか憧れの
まなざしを向けていたように思いますが、私は船の有機的な部分を
垣間見るのが好きでした。
 この絵本を描いた谷川さんは、コンテナに並々ならぬ愛情を
感じている方らしい、と別紙“かがくのとものとも”から知り
ました。私もコンテナって結構好きです。私の場合は古びて別の
用途で使われるようになったものの、畑の一角や家の庭などで
置き去りにされているようなコンテナが好みです。多分物置として
使われていたのでしょう。ツタなどが絡まり、さび付いて塗装も
はげかけ。きっと日本中や海外にまで行き来していたコンテナが
今はこんなところでひっそりと生きているというか静かに
さびていくというその風情にぐっときます。JRとかそういう文字を
見つけるとさらに嬉しい。谷川さんは、どんなコンテナが好き
なんでしょう? 他の本も読んでみたいな、と思いました。




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