リアリズム

 えほんおじさんです。


 今月の月刊絵本、2018年6月号の年中向きこどものとも
「しんやくんのマラカス」と
「かがくのとも・たまごとにわとり」
は、一方は物語、もうひとつは科学絵本で、それぞれ分野は
違います。ですがともにリアリズムに徹している絵本だと思います。

 「しんやくんのマラカス」は子どもたちの日常をリアルに描いた、
いわゆる「生活絵本」といわれる絵本です。ただしこの絵本は、
淡々とした二人の行為(=日常)を描きながらも、その日常を通して
「主人公・しんや君」と「なおちゃん」の内面が浮かび
上がってくるように描かれています。

 他方「たまごとにわとり」は、にわとり飼育農場の1日を
淡々とリアルに見つめて行く中で、「卵と鶏と人間」の関係が見えてきます。
とにかくリアルに「それ」を見つめていくと、そこに私たちの「驚き」があります。
「たまごを産むこと」と「人が生きていくということ」、そこにいろんな要素が
見えてくることによって、私たちの心が動いてくることに気づかされます。


 それでは、今日もごゆっくりお楽しみください。


◆年中版こどものとも 2018年6月号
「しんやくんのマラカス」石川えりこ/さく
 
◎作者紹介
石川えりこ 福岡県嘉麻市生まれ。
 2015年に「ボタ山であそんだころ」で、
第46回講談社出版文化賞絵本賞を受賞。
主な著書に「てんきのいいひはつくしとり」、
絵本に「ことしのセーター」など。

◎ストーリー紹介
 「ねえねえおかあさん。
  きょうね、ようちえんでおともだちができたんよ」
 幼稚園の砂場のうえは、藤のお花でいっぱいです。
藤のお花のいーい匂いにひかれて、であった男の子と女の子。
お昼ごはんのあと、男の子はちっちゃいゼリーのカップを4つ
もって砂場にいそぎます。
「―すなをいれてふったら、マラカスみたいやん」
ふたりはマラカスを作ってふって…。カシャカシャ シャカシャカ…。
風がふいて藤のお花のいーい匂いと、マラカスのいーい音。

◎絵本の特徴 
 この季節、いろんなところで満開に咲いた藤の花を見かけます。
藤棚の作る木漏れ日と、垂れ下がる薄紫色の花が美しく、幻想の
世界へ連れて行ってくれるようです。この絵本の主人公の
しんやくんはひとりで砂場に遊びに行って、そんな美しい世界を
発見します。風が藤の花の“いーいにおい”を運んできます。
 子どもたちの中にも、大勢でサッカーをしたり鬼ごっこを
したりするのが好きな子どもも、ひとりで自然や物と静かに
対話しているのが好きな子どももいます。(実際一人で静かに
遊んでいるように見えても、心の中はおおにぎわいで大騒ぎ
だったりするのかもしれませんね)どちらが正しいわけでも、
あるべき姿なわけでもなく、性質の違いです。
 大人は、お友達の多い元気な子どものほうが安心、と思いがち
です。実際、絵本にはそんな押しつけがましさがただようものが
多いですね。そういう意味では、福音館の月刊絵本という不特定
多数の子どもの目に触れる機会がある本に、静かでおとなしい
(に見える)性質の子どもが出てくるのは、素晴らしいことだと
思います。
 たくさんの子とわいわいにぎやかに楽しむのがあまり得意でない
子どもも、いつか同じような仲間に出会います。その時、二人の
魂が共鳴して、さらに美しく奥深い世界が展開されるんですね。
絵本の中で出会った二人が共有する世界の美しさは、息をのむほど
です。子どもたちの持っている深い感受性を、こういう形で肯定
することができるのは、絵本の持つ大きな力です。作者の石川さん
は、人のこころの機微をあるがままに繊細に受け止めることの
できる方なのでしょう。

 絵はシンプルですが、描くべきものはすべて描かれていて、
風やにおいや音まで感じることができます。絵における足し算と
引き算の上手な作家さんですね。

◎子どもの反応
 あまり聞きなれない語尾の博多弁に反応していました。
私もイントネーションが分からず、とってつけてような読み方に
なってしまって少し残念です。静かに聞いていましたが、読み
終わってからボソッと「こんどマラカスつくろう」と言って
いました。

◎読み手の感想
 最初ひとりでざっと読んだとき、この絵本は売れるのかなあ?
と思ってしまいました。絵本を売ることを商売にしていると、
目線が「売れる・売れない」になってしまう部分があり、すこし
フィルターがかかってしまいます。それは仕方のないことですが、
そのフィルターをかけて見てしまうと良いものを見落とす可能性が
あるんですね。そのあと子どもたちに読んで聞かせていると、
声に出して読んだほうがずっと良いなあと思いました。確かに
「売れる・売れない」フィルターにかけてしまうとこの絵本は
地味で難しい絵本ではあります。

 私は幼少期あまり友達の多いほうではなく、ひとりで手先に
ある物たちと対話していたので、この男の子には非常に共感する
ところがあります。大人になって、人の間でもまれて多少は
たくさんの人たちとコミュニケーションを取れるようになりました
が、まだまだ心の中には“あのころの心”が残っています。
“あのころの心”で読むと、染み入る絵本なんですね。
 ただ、長く生きていて大多数の人がこういう心を
あまり持つことがないのも感じます。
月刊絵本ですから、たくさんの部数が発行されます。
その中の同じような心を持つ子どもたちに届きますように。


◆かがくのとも 2018年6月号
「たまごとにわとり」 棚橋亜左子/さく

◎作者紹介
棚橋亜左子 1961年、東京生まれ。
多摩美術大学大学院絵画専攻科卒業。ボローニア絵本原画展入選。
絵本作品に「あったよ!野山のごちそう」「トマト」などがある。

◎ストーリー紹介
 夜明け前の農場に、元気ななおんどりのなきごえがひびく。
おんどりがなんどかなくうちに空があかるくなってきた。
農場の一日がはじまる。たくさんのめんどりと、おおきなおんどり。
そわそわと朝ごはんをまっている。
えさを食べおわると、おなかがいっぱいになったにわとりたちは、
地面をつついたりひっかいたり、砂あびをしたり。やがて、
めんどりは箱のような部屋にはいっていく。それはたまごを
産むための部屋。めんどりはすきな部屋にはいって静かに
たまごを産む。

◎絵本の特徴
 精密なタッチで柔らかく表現された美しい鶏に目を引かれます。
美しい艶を持つ羽は、大切に育てられている証でしょう。
ある農場の一日。鶏たちの暮らしを丁寧に描きます。
 鶏と言えば卵ですが、その卵はどこでどんなふうに作られて
いるのか? ということに興味を持つ子どもたちも多いこと
でしょう。私たちは毎日のように卵を使った料理を食べています。
目玉焼きや卵焼き、スクランブルエッグにオムレツ。スーパー
ではパックに詰められて売っています。整然と、大量に積み
上げられた卵のパックは壮観ですね。その卵の一つ一つが、
鶏が生んだものだということはもちろん知っていますが、
なかなか現実感がありません。
 鶏が一日に産む卵はひとつ! 今日買った10個入りの卵の
パックは10羽の鶏が昨日産んだものだということをリアルに
考えると、あらためてびっくりしませんか?
 大量生産、大量消費の時代では、食べ物の出どころは不透明で
切り離されています。可愛らしく美しく、清潔にパッケージ
された食品からは想像もつかないバックグラウンドがあります。
そのバックグラウンドを少しでも感じることは、現代において
とても大切なことだと思います。「食べ物に感謝しましょう」
みたいなスローガンはよく耳にしますが、感謝というのはもっと
根源的なところから湧き上がる気持ちです。カタチだけ感謝を
口にすることに違和感を覚える方が多いのもわかります。
感謝、とか感動、とかうわべだけの気持ちをあおるのではなく、
まずは知ること。知れば、素直な気持ちとしてすごいなあ!
 とか面白いなあ! とかそんな気持ちが湧いてくるはずです。

◎子どもの反応
 興味深く聞いていました。特に下の子は卵が何よりも好き
なのでうれしかったのでしょう。まじまじと見入っていました。

◎読み手の感想
 昔、鶏を飼っていたことがあります。残念ながら近所の猫or犬
(?)に喰われてしまいましたが、しばらくの間は毎日その鶏が
産む卵を食べていました。生みたての卵は味が濃くておいしい
ですね。鶏はわりと凶暴で、小屋に卵をとりにいくとつつかれたり
もします。まあでも、いちにちに一つしか産めない貴重な卵を
とっていくのですから当然と言えば当然なのかもしれません。
 今回のかがくのともで登場する鶏はずいぶん大切に育てられて
いる鶏ですね。読んでいて、ほっとしました。スーパーで売って
いる1パック200円前後の卵は、鶏舎にぎゅうぎゅうに詰め込まれて、
抗生物質が含まれたエサを食べて運動もしないような環境で
育った鶏の産んだものが多いと聞きます。そういう映像も見た
ことがあります。自分が鶏としての生を与えられたら…と思うと
ぞっとするような環境です。それを知ってから、わたしは
スーパーであまり卵は買わなくなりました。できるだけ平飼いの
鶏の卵を買うようにしています。少し高いけれど、スーパーの
卵よりもおいしいです。
昔、卵はとても貴重な食べ物だったそうです。
今でもそうあっても良いんじゃないかと私は思っています。
だって一羽の鶏が一日たった一個しか産まないのですから、
そのくらいの重みはあるべきじゃないですか?




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