夏にふさわしい絵本

 えほんおじさんです。


 夏にふさわしい年齢別月刊絵本2冊の紹介。
「まなつのかわ」は、かなり前の子どもたちの夏体験です。
もはやこんな「真夏の川」は体験できないでしょう。
だから、そんな体験は「絵本」でするしかないですが、
この絵本はこれ以上ないリアリティで描かれていますから、
もうできない体験ができます。

「かぶとむしが にげた!」はノンフィクション絵本。
カブトムシを飼っていたらこんな体験をすることでしょう。
あたり前でしょうが「カブトムシ」は、飛ぶんですよね。
その音にびっくり。「カブトムシ」を飼っていれば別でしょうが、
こんな体験も絵本なら飽きるまでできますね。


 それでは、今日もごゆっくりお楽しみください。

◆ちいさなかがくのとも 2018年7月号
「かぶとむしが にげた!」たしろ ちさと/さく

◎作者紹介
たしろ ちさと 東京都生まれ。絵本作品に
「せかいいちまじめなレストラン」「5ひきのすてきなねずみ」
シリーズ。
「すずめくんどこでごはんたべるの?」「だんごむしのおうち」
「じめんのしたの小さなむし」などがある。


◎ストーリー紹介
 カブトムシ見つけたよ。ぼくのカブトムシ。
名前は“かぶのしん”にしよう。
ぼくが「かぶのしん」をおいておでかけしているあいだに…
「かぶのしん」が逃げちゃった! ちゃんとふたを閉めておいた
のに、どうして外に出られたんだろう? 探しても、ぜんぜん
見つからない。その夜、ぼくが眠っていると、まっ暗な部屋の中で
突然「ブウウーン」という大きな音が!

◎絵本の特徴
 もうちょっとで夏ですね。そろそろ雑木林にはカブトムシが
出てくる頃でしょうか?
早朝、樹液に群がるカブトムシを捕まえに行くのを楽しみに
している子どもたちも多いことでしょう。立派なツノをもった
カブトムシはいつでも子どもたちのあこがれのまとです。
去年捕まえたカブトムシを卵からそだてている方もいらっしゃると
思います。きっといまごろさなぎになっていますね。

 カブトムシは比較的飼いやすい虫です。今は昆虫ゼリーなんかも
市販されていますので、飼ったことがないという方は今年ぜひ
チャレンジしてみてはいかがでしょうか?
 さて、この絵本では、飼っていたカブトムシが逃げ出して
しまいます。カブトムシは意外に力があるので、飼育ケースの蓋を
きちんと閉めないといけないみたいです。閉められていない蓋くらい
もちあげてしまうんですね。そのちからもちっぷりに驚きます。
カブトムシは夜行性ですから、夜暗い場所で飛びます。男の子は
その音で目を覚まします。…見つかってよかった!
 作者のたしろさんは、色々な生き物の絵本を描かれていますが、
いつも温かく柔らかい目線を生き物たちに注がれています。
虫嫌いの方もついかわいいと思ってしまうのではないでしょうか?
 暑い夏が始まります。でも、夏にしかできない体験があります。
カブトムシと過ごす夏も素晴らしい体験になることでしょう。

◎子どもの反応
 楽しそうに聞いていました。カブトムシが逃げるところでは、
歓声をあげていました。そういえば去年の夏、カブトムシを部屋で
飛ばしてあそんでいたなあ。。もしかするとあの時のことを
思い出したのかもしれません。

◎読み手の感想
 我が家でも数年続けてカブトムシを飼っています。去年の
カブトムシの卵から、今年は10匹近くが成長し、蛹になって
いっています。
私は直接世話をしていないのですが、夫や子供たちがその成長を
喜んで私に見せてくれます。あの丸まると太った幼虫が、角の
生えた蛹の姿になる…。なんだか理解の追いつかないはなしです。
虫って本当にすごいですね。
 数年前、羽化したカブトムシを段ボール箱の中に入れていて
(15匹くらいいたでしょうか?)外に置いていたら、段ボールの
蓋を持ち上げて10匹ほどのカブトムシに逃げられてしまったことが
あります。そのときの音のすさまじさ。家の中にいたのにも
関わらず、「何の音だろう?」と思って外に出たほど大きな羽音
でした。だから、この絵本をよんで、あの時のことを思い出し
ました。そうそう、カブトムシって力が強いんだよね。
この絵本の男の子は窓を開けて眠らなくてよかった!
 減ってしまったカブトムシを見て息子たちががっかりした顔も
思い出して、さらにうんうん、と思いました。


◆こどものとも 2018年7月号
「まなつのかわ」菊池日出夫/作

◎作者紹介
菊池日出夫 1949年、長野県生まれ。絵本作品に
「さんねんごい」「かぶともり」「むかし日本狼がいた」
「たぬきのおやき」「やまばと」「はっけよい」
「みんなで うどんづくり」「ほたるさわ」「みんなで もちつき」
「みんなで いねかり」などがある。

◎ストーリー紹介
「ミーン ミーン ミーン」
あついなつのある日。いつもいっしょに遊ぶ5にんの仲間と、
いぬのラッキー。
「どうだ、きょうはちくまがわにえんせいしてみらっちょ」
みんなで川に遠征です。川では魚をとったり、いけすをつくったり。
みんなでみずあそびをたのしみます。
「のらっこの絵本」シリーズの最新作。

◎絵本の特徴
 菊池日出夫さんが故郷・長野県佐久市での少年時代をモデルに描く、
「のらっこの絵本」シリーズ。本作はそのちょうど10作目です。
作者の体験を通して描かれる世界のリアリティがすばらしい。
シリーズのどの作品を読んでも、出てくる子どもたちと一緒に
子どもたちの日常を体感できます。説明文はなく、子どもたちの
セリフと絵だけ。セリフは、方言で書かれています。絵も決して
うまい絵ではないのですが、味わい深く、一度見たら忘れられない
ようなインパクトがあります。
 この絵本では、川に遊びに行った子どもたちが、魚をとったり、
いけすをつくったりしてあそんだあと、むこうぎしにおよいで
いきます。二人の少年は成功。でも、ひでちゃんはおぼれかけて
しまいます。ちょうどそこにいたあゆつりのおじさんにたすけて
もらってめでたしめでたし…なのですが、川に潜む怖さもしっかり
描かれているところが、この絵本のさらにすばらしいところだと
思います。
 川は、浅く見えても結構流れが速く、足を取られます。それに
急に深くなっているところもあります。夏場になると、川の事故の
ニュースなどもよく見ますね。多分楽しく川遊びをしていたので
あろう子どもたちのことを思って心が痛みます。
「いけないよ」「あぶないよ」といくら言って聞かせるよりも、
体験して体で覚えるのが一番なのですが、なかなかそんな危険は
冒せませんよね。登場人物のひでちゃんが身をもって体験した
恐怖を、臨場感をもって疑似体験することで、川の持つ怖い側面も
子どもたちに伝えられたら…と思います。

◎子どもの反応
 食い入るように見ていました。言葉が面白いみたいで、
まねをしていました。ひでちゃんがおぼれたシーンでは、
川底の骸骨を気にしていました。

◎読み手の感想
 私も大好きなのらっこのシリーズ!
 正直、最初のころは絵が雑な感じがして、あんまり好きでは
ありませんでした。でも、読めば読むほどハマっていくんですね。
五人の少年たちと一緒に遊んでいる気分になります。子どもたちの
体温や息遣い、手触りを感じます。それくらいのリアリティが
あります。
 作者の菊池さんが過ごされた少年の日々が、郷愁としてではなく
今流れている時間として出現しているということのすばらしさ!
 もし、これが郷愁として描かれたのであれば、ここまで引き
込まれないはずです。
 おそらく、菊池さんは心の中で少年時代の時間に戻ることが
できる方なのでしょうね。
次回作にも期待しています。




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