10月号紹介

 えほんおじさんです。

 ファンタジー(こどものとも年少版 2018年10月号
「ぺちゃくちゃ ばーぶー」)作品の中の自然、
すなわち風や葉っぱや小鳥たちと、赤ちゃんや子どもたち、
そしておばあちゃんは、ごく当たり前に「こころ」を通わせます。
風はおばあちゃんの思ったことを葉っぱに伝え、葉っぱは
小鳥たちに伝えます。

一方、かがくのとも 2018年10月「バッタ」は、
超リアルな観察眼でその姿と生態を捉えています。
そして、観察眼がクローズアップで「バッタ」を捉えると、
そこにバッタの「こころ」が見えてくるような気がします。
また捕まえてその肌に触ると
「体のあたたかさが感じられ、どくどくどくとお腹の動き」
も伝わってきて、そこには生命体のもつ「こころ」の存在を
感じることがでいます。


 それでは、今日もごゆっくりお楽しみください。

◆こどものとも年少版 2018年10月号
「ぺちゃくちゃ ばーぶー」たかどのほうこ/さく


◎対象年齢 2〜4才向け
◎作者紹介 たかどのほうこ(高楼方子)
 函館市に生まれる。東京女子大学卒業。
絵本に「まあちゃんのながいかみ」「まあちゃんのまほう」
「まあちゃんのすてきなえぷろん」、
幼年童話に「みどりいろのたね」、「グドーさんのおさんぽびより」
「 おーばあちゃんはきらきら」、
長編の物語に「4ミリ同盟」「十一月の扉」「緑の模様画」
「ココの詩」「時計坂の家」「老嬢物語」「ニレの木広場のモモモ館」
がある。

◎ストーリー紹介
 赤いベンチで編み物をしているおばあさん。
「だれかとおしゃべりしたいなあ」
おばあさんのこえをきいたのは…そよ風たち。
「赤いベンチで編み物をしているおばあさん。
 誰かとおしゃべりしたいんだって」
そよ風たちのおしゃべりをきいたのは…木の葉たち。
その木の葉たちのおしゃべりをきいたのは…。
さらに小鳥、赤ちゃん、お兄ちゃん、お母さんへと
おばあさんの願いは伝えられ……。

◎絵本の特徴
 楽しくてやさしい、伝言ゲームのような絵本です。
伝言ゲームと言っても、伝わっていくうちに内容の変化していく
伝言ではなくて、みんながベンチに座っているおばあさんのことばを
そのまま伝えていきます。言葉を伝えるのは、そよ風や木の葉、小鳥。
美しい詩的な表現ですね。
 小鳥は赤ちゃんに、赤ちゃんはお兄ちゃんに、お兄ちゃんは
お母さんに。自然と人間の緩やかなつながり。人間も赤ちゃんの
頃は自然に近いところにいて小鳥たちとお話ができる、というのは
本当にありそうな気がします。最後に出てくるお母さんもとても
おおらかな人です。子どもたちが言うことをそのままにうけとめ、
家事もほったらかしておばあさんに会いに行く、という展開が
素晴らしい。子どもたちが自然のことばをせっかく大人に伝えても、
大人のほうでそれを無視したり嘘だと思ったりしているケースが
世の中にはたくさんあるのかもしれないな、と感じました。

 作者たかどのほうこさんは「まあちゃん」シリーズでおなじみ
ですね。ファンの方も多いはず。おおらかでユーモアのある作風で、
読んでいると楽しい気分になる作品ばかりです。空白の多い絵ですが、
だからこそ伝わる世界の広がり。読んでいる子が遊ぶ空間がたっぷり
あります。ぜひ子どもたちとこの世界の中で楽しんでくださいね。

◎子どもの反応
 おにいちゃんがあかちゃんの言葉が分かった時に「すげえ!」と
言って喜んでいました。そのあとは、あかちゃんのまねをして
遊んでいました。

◎読み手の感想
 たかどのさんの作品に出てくる登場人物たちのゆるさが心から
好きです。絵が上手過ぎないのも良いですね。洗練された線も
もちろん好きですが、たかどのさんの絵のようにどこかスキのある線
というのも素敵です。そのスキに親近感を覚え、世界の中に入り込み
やすくなります。いろんなことを許さない世の中です。子どもたちに
まで完璧な子どもたち像を求めてしまうような社会というものが
あります。
でも、それでは子どもたちの心の世界は広がりません。子ども時代に
どれだけ心の広がりを持てるかで、その後の人生は大きく違って
きます。絵本は、世界を広げる助けになると、私は自分自身の経験か
ら信じています。
 母親として、この絵本に出てくるお母さんのようにおおらかに
なれなくても、こういう考え方があるということを知るだけでいい。
私が伝えられないことを絵本は伝えてくれます。
 高楼方子(漢字表記の著者名)さんには、「まあちゃん」シリーズ
に代表される、上記説明のような世界と、もう一つの「漢字表記の
著者名」による長編作品の世界があります。
それらの本格的ファンタジー作品は、日本にはほとんどないので、
稀有な作家だと言えましょう。


◆かがくのとも 2018年10月
「バッタ」 槐真史/さく 廣野研一/え

◎対象年齢 5・6才向け
◎作者紹介
・作者 槐真史 1965年、神奈川県生まれ。博物館学芸員。
 絵本に「せみのこえ」がある。
・画家 廣野研一 1982年、埼玉県生まれ。イラストレーター。
 絵本に「カブトムシの音がきこえる」がある。
◎ストーリー紹介
 草はらを歩いていると、何かがぴょんととびだしてきました。
トノサマバッタです。捕まえて、親ゆびと人差しゆびで胸をもって
みます。手でもっていると、体のあたたかさがかんじられ、
どくどくどくとお腹の動きがつたわってきます。
 さあ、バッタを観察してみましょう。


◎絵本の特徴
 リアルな絵で描かれたトノサマバッタの絵本。虫の好きな子には
最高です。トノサマバッタは、その堂々たる体躯で日本のバッタ界に
おける王様として君臨し続けてきました。もちろん人間の位置づけ
であり、そんなことはきっとトノサマバッタは知らないと思いますが。

 数か月前、NHKの「昆虫すごいぜ!」という番組で香川照之さんが
トノサマバッタについて熱く語っていました。香川照之さんの本気を
見せつけられ、ちょっと感動すらしてしまうような番組で、お勧め
です。子どもたちの虫嫌いが加速している今、色々なアプローチで
子どもたちに虫の魅力を伝えていきたいところです。

 虫界の中でもアイドル的な位置づけのテントウムシやちょうちょ、
ヒーローであるカブトムシやクワガタのことは、あの手この手で紹介
されていますが、バッタはそれがトノサマバッタであろうとも地味な
立場です。でも、この絵本におけるトノサマバッタは、大空をバック
に力強く羽ばたいています。主役としての存在感に圧倒されます。
 文章を書いた槐さんは、博物館の学芸員として長年虫たちと向き
合っていらっしゃいます。絵本にもつぶさに観察してきた方だから
こその細かいエピソードがちりばめられています。しかしあくまでも
子どもたちが観察していて見られるであろうシーンが多いので、
観察するときの参考にしていただけると思います。
 この絶妙な匙加減が素晴らしいですね。絵はリアルではありますが、
本物よりも少し肉感的に描かれています。それがバッタの鼓動や
体温を伝えて、異物としてのバッタというより、人間に近い存在
としてのバッタを主張しているような気がします。涼しくなって
きたので、草むらに虫とりに出かけてみるのもいいですね。

◎子どもの反応
 食べながらうんちをするバッタに大喜び。バッタの中では
トノサマバッタが一番好きだと言っていました。
理由は殿様だからえらいから、だそうです。

◎読み手の感想
 バッタ…。そのなかでもトノサマバッタは、ちょっと怖い…。
と思っているお母さん、先生。わたしも同じです。ショウリョウ
バッタくらいなら小さいし、草に似た外見をしているのできれい
だな、と思えるのですが。10月号のかがくのともの表紙を見た
ときは、結構なインパクトでした。
 虫が苦手な人と一緒に話していて、虫のおなかのところが苦手、
という意見が一致するのですが、そのおなかのところがばっちり
見えている絵が表紙です。でも実物よりつるっとしていて艶感が
あるので、そんなに怖い、という感じはないです。
 読んでいると、トノサマバッタの魅力が伝わってきますし、
この絵本を子どもたちに読んでやりたい…! という気持ちに
なります。でも、きっと触れない。子どもたちの虫嫌いを加速
させているのはきっと私たち世代の虫嫌いによるところが大きい
のではないかと責任を感じている次第です。幸いわが子たちは
虫の好きなおじいちゃんやおとうさんの影響で虫が大好きです。
その気持ちを失わないように、積極的にリアルな虫の絵本を
読んでいきたいとおもいます…!




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