2019年1月号

 えほんおじさんです。


 昔ばなしには形や法則があります。
けれどもその内容となると意表をつく設定がとても多く、
思わぬ展開にびっくりさせられます。今月号のこどものともは
もその例にもれません。

 全くみかんのならない一山に、たった一つだけ巨大なみかんがなり、
「中を覗くと仙人が碁をしていた」など誰がそうしたものなのでしょう。
こうした不思議な昔ばなしを伝えたきた私たちの先祖は素晴らしいです。

 しかしながら、現代の優れた「創作絵本」も負けてはいません。
「すきとおりすけのすけ(こどものとも年少版 2019年1月号)」
という絵本は、見えないものを、その世界を壊すことなく、見える
ようにしました。これまた意表を突かれてしまいます。

 それでは、今日もごゆっくりお楽しみください。

◆こどものとも年少版 2019年1月号
「すきとおりすけのすけ」大槻あかね/作


◎作者紹介
大槻あかね 1973年、横浜生まれ。東京造形大学絵画科卒業。
雑誌「広告批評」の表紙を担当、矢野顕子のグッズデザイン映像企画制作、
クラムボンのCDジャケットアートワークなど多ジャンルで活躍。
絵本の仕事に「あ」「絵くんとことばくん」「けいとだま」などがある。

◎ストーリー紹介
 すきとおりすけのすけさん。いないようにみえるけど、いるんです。
とりのフンがぴちゃ、とくっつく。ボールだってはねかえる。
ペンキがかかって、ほらみえた。

◎「見えぬけれどもあるんだよ」という金子みすゞさんの言葉を
思い出すような絵本です。全体に薄く透明感のある色彩で描かれた表紙。
文字も薄く薄く、作者の名前すらよく見ないと見えないほどです。
それがかえって見るということを意識させて、見えるということは
どういうことなのか、という深い問いかけにもつながっていきます。
私たちの日常生活の中では見える=在る、と感じがちです。
そうでなければいろいろ不便な点も確かにありますね。
しかし、空気の中に、闇の中に、見えないものを見出す子どもは少なく
ありません。子どもの世界は「無い」よりも「ある」ことのほうが重要で、
真実なのでしょう。だってそのほうが世界は面白い。
 この絵本の主人公である「すけのすけ」は、そんな狭間で生きています。
「すけのすけ」は透明人間です。透明だけど、存在していて、こころも
からだももっています。
誰にも知られることなくひっそりと生きている「すけのすけ」。
その静かな心持ちを象徴するかのような淡い色。「すけのすけ」は
ペンキをあたまからかぶってしまい、かたちが出現。初めて人に
話しかけられました。初めて、人と手をつなぎました。そのささやかな
初めてが、じんわりと心にしみわたります。そして、すけのすけが
知ってしまった新しい孤独を思います。
 子どもたちにはどう伝わるのでしょうか。カタチを見ることができない
存在を信じることができる子どもたちなら、きっと「すけのすけ」の存在を
素直に受け入れることができるのではないでしょうか?

◎子どもの反応
 透明人間じゃ、と喜んでいました。まだまだ、透明人間というものを
「実在する」と信じているわが子。「すけのすけ」に出会えるといいなあ、
と思いながら読みました。

◎読み手の感想
 象徴的な言葉と絵で描かれた哲学的な絵本ですね。
別紙の“えほんのたのしみ”で作者のことばを読んでいると、
作者の大槻さんは、何かを作るとき何か大きなちからに動かされている
ような感覚がすることがあるそうです。
それを読んでいて、なんだか巫女さんのようだな、と思いました。
 大きな大きな、人というものの存在を超えるなにか。それを神様と
呼ぶひともあるのかもしれません。そういうエネルギーに身を任せられる
ひと、を今まで何人か見てきました。本人たちの意思を超えるエネルギーは、
そのひとを孤独にもするでしょう。精神力も体力も必要でしょう。
でも、出現した作品のすばらしさに、ご本人も打たれるのだと思います。
 「すけのすけ」は、作者の分身なのでしょうね。これからもすけのすけに
寄り添われて、深い意識の探求ともいえる作品を生み出していかれる
のだろうと思います。

 あるみかんの木に一つだけ、とても大きな実がなった。
ひと抱えもあるような巨大な実だ。さらに不思議なことに、
中から話し声や「ぱちん」という物音がする。皮に穴をあけて
のぞいてみると、なんと中には二人の老人がいて、のんきに碁を打っていた……。
伊豆地方に伝わる、みかんの産地ならではの昔話を、静岡県在住の画家が、
美しく力強い版画で絵本化しました。

◆こどものとも 2019年1月号
「せんにんみかん 伊豆の昔話」福知伸夫/再話・絵


◎作者紹介
福知伸夫 再話・絵/1968年、東京都生まれ。武蔵野美術大学版画科卒業。
絵本に「つないで つないで」「ひらいてみると」「こちょこちょ」
「ぱかぱか」「おつむ てんてん」「やあ、こんにちは」
「ずるがしこいジャッカル」「とってください」「ひとつ ひまわり」
「ひらいてみると」「つないで つないで」「たけのこ ぐんぐん」
「もりのなかから」「こすって こすって」「ふじさん おはよう」
「なぞってみたよ」「びんぼうがみさま」「わっしょい わっしょい」
「バナナだんちょうの だいサーカス」「すういの とん くにゃり」
などがある。

◎ストーリー紹介
 昔あるところに、たくさんのみかん山をもつ男がいた。
ある年のこと、どのみかん山もびっしりみをつけているのに、ひとつだけ
ちっとも実をつけていない山があった。「どうしたんだろう?」ふしぎに
おもった男がそのみかん山をあるいてみるといっぽんの木のしげみのおくに、
おおきな実がひとつだけなっていた。その実は、男が山にいくたびに
ずんずんずんずん大きくなっていった。やがて、みかんはひとかかえも
あるほどに大きくなった。「もうとっていいだろう」と男はみかんを
こつこつ指でたたいてみると、中から声がする。男はふしぎでたまらなくなり、
指の先で小さな穴をあけ、のぞいてみると…。

◎絵本の特徴
 なんともユーモラスなお話。こどもたちといっしょにあはは、
と笑いながら読めること間違いなしです。
 このお話は、静岡県沼津市西浦地区の木負という土地に伝わるお話だそうです。
木負でおいしいみかんが作られるようになった由縁を語るいわゆる由来譚だと、
別紙の“絵本の楽しみ”に書いてありました。
由来譚というと、もう少し意味ありげだったり、わかりやすい理由付けが
されているものを想像するのですが、このお話は違います。なぜか実が一つも
ならないみかんやまに一つだけなった大きな大きなみかんの中で、ふたりの
仙人が碁に興じている。その設定だけでもかなり面白いのですが、指でみかんに
穴をあけた男が、多分あまり碁の強くない髭の仙人に男が次の手を指南して、
負けていた仙人が急に強くなる。そしてもう一人の仙人に指南がバレて
みんなで大笑い、というなんともいえない展開。もう一人の仙人も「ずるだ!」
と怒り出すわけでもなく、「人間に見られてしまった!」と驚くでもなく、
ただただ大笑いしている。この突き抜けた明るさが、素晴らしい。
 そして、登場人物たちの表情にもご注目ください。言葉よりはるかに多くの
ことを語っています。生き生きとして、エネルギッシュです。この強さが、
私たちを明るいほうに導いてくれるようです。文章と絵を手掛けられたのは、
月刊絵本でおなじみの福知伸夫さん。つい先月もちいさなかがくのともで
「ひらいてみると」という絵本を描かれていました。こんな短期間の間に
絵本を2冊も刊行されるのは、大変なご苦労もあったのではないか、
と想像するのですが、どちらの絵本もそんなことはみじんも感じさせない
楽しい絵本です。それにしても福知さんのジャンルの広さや、表現の幅の
広さにも驚きます。

◎子どもの反応
 仙人の存在に興味津々。どういう生態なのかとしきりに聞いてきました。
よく考えてみると、私も仙人についてあまり知らない。二人で知恵を
出し合って仙人について話し合いました。

◎読み手の感想
 楽しい絵本でした。ひとりで読みながら思わず爆笑。こういう展開の
読めない絵本好きです。ミカンの中にいた仙人が、たくさんの実りを授けて
くれるお話、と書くと全然違う展開を想像しますよね。いたずらがバレて
しまった仙人が、楽しそうに男に投げかけた碁石が、おいしいミカンの種に
変わった、なんて面白すぎます。昔話には、こういう奇想天外な物語が
ありますね。どういう経緯で、この形にたどり着いたのか、ということに
ものすごく興味があります。
 相変わらず、福知伸夫さんの描かれる絵本は面白い。ユーモアに
あふれた方なのでしょうね。いつも絵だけで笑わせてもらっています。
わが子が0歳のとき「こちょこちょ」には大変お世話になりました。
最近さらに表現の幅も広がっていらっしゃるようですので、今後も
楽しみにしております。




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