目測を誤る

 えほんおじさんです。

 大人になってから絵本についてかなりの時間(40年)勉強しました。
絵について、文章について、そして子どもの世界について。
それで、新刊などの初見で、その絵本や童話の「価値(その成長と
切り離せない美とか芸術性)」がかなりの程度わかるようになってきました。

 それでも時々目測を誤る場合(「え、この絵本のどこがそんなに
いいんだ!」)があります。
 なぜ目測を誤るのか、その原因ははっきりしています。
それは私が「大人」だからです。なかなか子どもの感性や想像力や思考法
(子どもは耳の文化の中に生きている)に到達できないからだし、
絵本を楽しむのに「読んでもらうこと」をしないで、黙読してしまうからです。
「読んでもらうこと」は本当に難しいですが、私はせめて子どもたちに読んでやって、
その価値を判断しなければと肝に命じています。
なぜなら「絵本とは、子どもが大人になるから読んでもらう本のこと」なのですから、
これを忘れると子どもの本の評価など全くできないはずなのです。


 それでは、今日もごゆっくりお楽しみください。

◆こどものとも 2019年2月号
「ウーペンせんと ろうがんきょう」 朱彦潼/さく


◎作者紹介
 朱彦潼(しゅげんどう) 1988年、中国・南京生まれ。
東京芸術大学映像研究科アニメーション専攻修了。
 アニメーション作家。絵本は本作が初めて。

◎ストーリー紹介
 遠くの村にすんでいるおばあちゃんがランランをたずねてきました。
明日、ランランをおばあちゃんの家につれていってくれるのです。
ランランがすむのはたくさんのお店がならぶおおきな町です。

 おばあちゃんとランランは、おじいちゃんのために「ろうがんきょう」
をかいました。次の日おばあちゃんとランランは、おおきなフェリーで川を
のぼってから、小さな「ウーペンせん」にのりかえました。
「ウーペンせん」は小さくて屋根のついたまっくろな亀のような舟です。
しばらく舟にのっていると、きゅうに嵐がきました。
ぐらっと舟がゆれ、ランランはろうがんきょうを川におとしてしまいました…。


◎絵本の特徴
 中国の作家さんが描いた絵本。作者・朱さんはアニメーション作家で
いらっしゃるとのことで、絵本は本作が初めてだそうです。
柔らかい色合いとダイナミックな構図、親しみやすい登場人物の表情が特徴的です。
主人公のランランに焦点を絞って、近すぎず、遠過ぎない距離感で感情移入しながら
物語を体験することができます。
雄大な風景の切り取り方、川と共に生きる人たちの日常の見せ方がとてもさりげなく、
余計に自分自身が持っている身体感覚の延長として感じ取ることができるのではないかと思います。

 突然嵐が来て、おじいちゃんにあげる老眼鏡を落としてしまうランラン。
悲しくなって泣いていると周りの大人たちがみんなで一生懸命、夕方暗くなるまで
探してくれます。たかが老眼鏡です。でもそれを“たかが”とつゆほども思わず
探してくれる人々の姿には胸を打つものがあります。
物があふれ、時間に追われている世界の中に暮らしていると、こういう感覚は失っていくのでしょう。
人々の素朴さや共同体というものが残っている場所でしかなかなか見られない光景なのではないかと思います。
 この絵本を読む子どもたちには、この世界の中に“奇跡”ではなく、まだ“日常”としてこういうことが
起こり得るのだと信じてほしいですね。そして大人としても村の人達の対応を見習っていきたいと思います。
こころにじんわりと染み入る良い絵本です。

◎こどもの反応
 「ウーペンせん」という不思議にも思える舟に乗れたこと。嵐をなんとか切り抜けたこと、
川に落とした老眼鏡を川で生活するする人々みんなが暗くなるまで探してくれたこと、
そして誰かがその「老眼鏡」を届けてくれたこと。そういった事の成り行きをドキドキして
聞いてたに相違ありません。黙って真剣に聞いていました。
そして最後に「そうか、魚が眼鏡を探してくれたのか」とひとりでごとのようにいっていました。

◎読み手の感想
 水の描き方がとても美しく見入ってしまいました。
静まり返っている河の水面を繊細に色を変え描いている場面も素敵だし、
荒々しい嵐の波もどこか柔らかさを残しているところがいいなあ、と思いました。
日本も昔は小舟を使って人や物資を運搬していたと聞きますが、もうそんな風景は
見ることがないですね。
私の父が子どものころはまだ少しそういうものが残っていたと聞きます。
この絵本の主人公のランランは作者のお母さんがモデルになったそうなので、
もしかすると中国でも少しづつ小舟で行きかう人々は減っているのかもしれませんね。
でも、ドキュメンタリー番組などで見る中国の田舎は、日本よりも田舎らしさが
残っているような気がします。
 この絵本には、川のそばで生きる人々の良い部分に焦点が当たっています。
大人になると、生活の中には良い部分と悪い部分、どっちでもない部分があると
いうことを痛感しますが、良い部分をたくさん見ることは、心の中に生きる基準
というか規範を作るときに大きく影響してくると思います。
特に子どもたちには、それが大事なのではないかと思います。

◆こどものとも 年中版 2019年2月号
「ぞーっくしょん!」とみながまい/作


◎作者紹介
 とみながまい 東京都生まれ。CM、アニメーション、映画などの監督をする。
絵本に「あずきのあんちゃんずんちゃんきんちゃん」「りんごさんとるりさん」
「こんこんとやさしいやさい」など。

◎ストーリー紹介
 ぞうさん公園のすべり台は、子どもたちに大人気です。
夜、公園にだれもいなくなると、ぞうのすべり台の鼻がうごしはじめて…
ぞ、ぞ、「ぞーっくしょん!!」とおおきなくしゃみをしました。
そしてゆらりゆらりとあるきだしました。

 「ただいま」と、ぞうがいうと「おつかれさま、ゾウタロウさん。」と、
おくさんのゾウコさんがでむかえました。ハナコにチビゾウもとびだしてきました。
おふろでおとうさんのゾウタロウさんは子どもたちにすべり台のはなしをたくさんします。
寝るまえはすべり台になるれんしゅう。次の日の朝、ゾウタロウさんはくしゃみがとまりません。
こまっているゾウタロウさんをみてハナコがいいます。「私がお父さんのかわりにすべり台になる!」

◎絵本の特徴
 温かみのある愛らしく優しい黄色い表紙。
「かわいい!」と思わず手に取ってしまう方も多いことでしょう。
 内容のほうも明るく楽しくユーモアにあふれています。ゾウさんがすべり台でいる間、
ずっと我慢していたくしゃみは「ぞーっくしょん!!」。
ダジャレみたいでくすっと笑ってしまいます。
そして、ゾウさんは実は二人の子供がいるやさしいお父さんでもあります。
子どもたちは立派な滑り台として任務を全うしているお父さんを尊敬していて、
いつかお父さんみたいなすべり台になりたいと思っています。
ゾウさんのすべり台は、いかなるときもうごかず、くしゃみもじっとがまんしているんですね。
なんと涙ぐましい…。立派なすべり台への道はなかなかたいへん。
次の日、かぜをひいてしまったおとうさんのかわりに、ハナコが公園にいって、すべり台になります。
でもがまんできなくて「ぞーっくしょん!」こどもたちはびっくりしますが、すぐに大喜び。
なんどもなんども鼻をくすぐって、ハナコにくしゃみをさせてあそびます。
この時の子どもたちの顔の楽しそうなこと!
 お父さんすべり台の時とは違う躍動感にあふれています。
ハナコと子どもたちが種を超えて仲良くなっているのが手に取るようにわかります。
子どもたち同士というのは心が通じ合いやすいのでしょうね。
子どものころ想像したこうだったらいいな、とか楽しいな、という気持ちが
ぎゅっと詰め込まれた絵本です。

◎子どもの反応
 近所に「ゾウさんすべり台」はありませんから、楽しんだことはないはずなのに、
すぐに絵本の中の子どもたちと一体化したようです。
そのすべり台が実はゾウタロウさんで、ゾウ家族のお父さんだったのでびっくり。
しかもその想像世界がとてもスムーズだったのか、何回も「ゾウさんすべり台」で遊べたようです。

◎読み手の感想
 うちの近くに公園はありません。田んぼや山に囲まれた場所なので、必要もありませんでしたが…。
同じ小学校に通う子どもたちの中でも、住宅街に住んでいる子どもたちは公園で遊んでいました。
住宅街の友達と遊んだとき、滑り台やシーソーのある公園に初めて行きました。
保育園や学校以外で遊具で遊べるなんてうらやましい!と心底思っていました。
滑り台は普通で、ぞうさんの形はしていませんでした。それでも、公園という存在は
憧れの対象だったように思います。
高校生になってから、街で遊ぶようになり、街の中の公園によく行きました。
滑り台はゾウだったり、タコだったり。
街のど真ん中は子どもが減っていて、子どもの遊ぶ姿はまばらで、むしろ高校生やサラリーマンの休憩所
みたいになっていました。子どもたちに遊んでもらえなくなった遊具たちが、所在なさそうで、
少し切なかったのを覚えています。
 この絵本に出てくる公園のように、生き生きと血の通った公園で滑り台として君臨することは
きっと幸福なことなんじゃないかと思います。




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