講談えほん

 えほんおじさんです。


 今週も「幼年童話」の紹介です。
でもこの童話、現代ではちょっと珍しい一冊です。
というのも古く江戸期ではもうすでに庶民の楽しみだったし、
現代にも語り継がれた「講談」という話芸を「講談えほん」として
童話にしたものなのです。


 それでは、今日もごゆっくりお楽しみください。

◆講談えほん 「徂徠(そらい)どうふ」

読んであげるなら 5・6才から
自分で読むなら 小学中学年から

◇ジャンル
幼年童話

◇シチュエーション
寝る前に絵本・童話

●作者紹介
宝井琴調(たからい きんちょう)
講談師
1955年 熊本市生まれ
1974年 五代目宝井馬琴に入門
1985年 真打昇進
1987年 四代目宝井琴調を襲名
作品に「三方一両損」「子どもつなひき騒動」がある。

●画家紹介
ささめやゆき
1943年 東京生まれ
1985年 ベルギー・ドメルホフ国際版画コンクールにて銀賞
1995年 小学館絵画賞
1999年 講談社出版文化賞さし絵賞

絵本作品に、「ぽぽんぴ ぽんぽん」「おとうさんは、いま」
「ねこのチャッピー」「椅子ーしあわせの分量」

さし絵作品に、「三方一両損」「子どもつなひき騒動」「お父さん、牛になる」
がある。

◆ストーリー紹介
江戸のむかし、元禄という時代のおはなし。
芝の増上寺近くに、かずき屋七兵衛という豆腐屋がおりました。

「とーふー とーふー」

今朝も早くから、ある長屋の路地を売り歩いていました。

「一丁くれんか」

お侍が出したお皿に豆腐を乗せると、そのままあっという間に食べてしまいました。

「世の中に豆腐ほどうまいものはないなあ。第一安い。
 また、皮をむく世話もなければ骨もない」
「旦那、一丁四文でございます」
「細かいお金がないから後で払う」

七兵衛はよろしくお願いしますと立ち去りました。

次の日も長屋に行くと、呼び止められ、お侍は豆腐をぺろり。お代はまとめてという。3日目も同じ。
それでくわしく七兵衛さんが聞くと、お侍は学者の勉強をしていて家の中は本だけ。
それならとお侍が世にでるまで、握り飯を持って来ましょうという。

すると、
「断る!」
「豆腐なら商売もの、後でお金を返せばよいが、飯を恵んでもらうわけにはいかん」

それじゃあ、「おから」というものがあります、これも売り物ですから、
後でお金をもらえばいいですと、七兵衛さんは毎日おからを煮付けて持って行きました。

ところが、七兵衛さん、熱を出して七日も寝込んでしまった。
八日目、はね起きると、急いで長屋へ行ってみると、貸し間空っぽ。
そして七兵衛さんが店へ帰ってみると、火事で丸焼けになっていました。
力を落とす七兵衛さん、左官の長さんが間借りをさせてくれました。

そんなある日。
一人の男がやって来ました。
「さるお方に頼まれて、お見舞金十両預かった、お店の方も建て直すよう言われています。それでは」
と帰ってしまいました。

それからひと月ばかりたったころ、
「こんにちは」

◆解説
◎「講談えほん」とは
 この「講談」とは、講談師によって語られた(読まれた)「物語」で、
テレビなどない時代(絵解き説教はあった)ですから、
主に「耳で聴く文芸」(口承文芸)として庶民の娯楽でした。
それは古くは平安期に仏教説話(説教・布教の技法)から起ったようです。

詳しくは、旭堂南陵(きょくどう なんりょう) officia site
をお読みください。

 また、「講談と落語の違い」についても説明されています。
要するに、
「講談は地の文で筋の説明をしていきます。
 日時や場所、登場人物などもはっきり出し、
 実際にあった出来事のように話をしていきます。
 ここで地の文を読む時に、名調子などと呼ばれるような、
 流れるような読み方」をします。

 このお話「徂徠どうふ」には、講談でも落語でも語られますから
比較すると違いがもっとわかるかもしれません。

「落語 立川志の輔・徂徠豆腐」


「講談 一龍斎貞心・徂徠豆腐」


 さらに講談を昔話と比べると全く対照的です。
昔話の舞台は「昔、ある所」であって時と場所を特定しません。
そして講談は「実際にあった出来事のように話」をしますが、
昔話では「出来事があったかどうかわからない、ただあったとして
聞かねばなりません」。

 とはいえ、これらはいずれも「口承文芸」としての特質を持ちますから、
聞き手がイメージしやすいような語り口でなければなりません。
文学のように「細部」を描写しません。

 さて、この本「講談えほん 徂徠(そらい)どうふ」は、
語り口は講談の文体が主体となっており、その講談調の文章だけで
物語世界が成り立っています。ですからこの本は、えほんというより
「童話」に近いので幼年童話に分類しました。ただし舞台は江戸期元禄の
ころですので、あまりに背景に馴染みがないゆえ、どうしても「さし絵」が
重要になって来ます。さし絵が語るところを読まなくては、耳で聞くだけでは、
世界を結ばないでしょう。それゆえ「講談えほん」としたにかもしれません。

 こうしてみてくると「講談」の文体は、文章=テキストに近く、
現代における「読み聞かせ」の文体にとてもよく似ています。
だから「読み聞かせ」同じような楽しみを得ることができます。


◎「徂徠どうふ」の「徂徠(そらい)」について
いうまでもなく「徂徠」は荻生徂徠さんのこと。

【「荻生徂徠( おぎゅう_そらい)」1666年〜1728年)
 江戸時代中期の儒学者・思想家・文献学者。父は幕府将軍徳川綱吉の侍医荻生景明。
 弟は徳川吉宗の侍医で明律研究で知られた荻生北渓。
 朱子学に立脚した古典解釈を批判し、古代中国の古典を読み解く方法論としての
 古文辞学を確立した。また、柳沢吉保や八代将軍徳川吉宗への政治的助言者でもあった。
 江戸に生まれ、14歳の時上総の本納村(現・茂原市)に移り、25歳で江戸に帰って
 学問に専念した。元禄9年(1696)31歳で綱吉の側用人の柳沢吉保(やなぎざわ
 よしやす)に仕えたが、宝永6年(1709)44歳の時、吉保の失脚にあい、
 藩邸を出て日本橋茅場町に住み、私塾を開いた。やがて徂徠派を形成する。】

 徂徠には、この本のようなエピソードがありました。
徂徠にはこんなにも苦労した時期があったのですね。
徂徠は、「増上寺の僧正に七兵衛さんの話をいたしました。
すると『寺でもその豆腐にあやかりたいものじゃ』と僧正が
おっしゃったので増上寺への出入りとなった。
その際、その名前をいただいて『徂徠豆腐』と付けたそうである。

 この本の最後のページに、とっても繁盛する店が描かれています。
七兵衛さんの豆腐を塩も醤油もつけず食べると、徂徠さんのように
立派になれる、またその「おから」を食べると、大きな家に住めると
大評判になったということです。

◎【情けは人のためならず】
 物語やお話に「教訓」を求めるのは現代では否定されています。
物語やお話はただ「楽しみ」のためにあり、その表面にある教訓や
単純な教えにではなく、楽しみながら、もっと奥深くにあって、
多様な観点から、心に落ちるものです。
 このお話は、「情けは人のためならず」という教訓性に主題が
あるように読めないことはありません。まして江戸期の講談が
原話ですから無理はないように見えます。
 そしてこの本の主題において、「情けは人のためならず」とは
人に対して情けを掛けておけば,巡り巡って自分に良い報いが
返ってくるという意味で使用し、
「人に情けを掛けて助けてやることは,結局はその人のためにならない」
という誤った使い方はしていません。

 実際、七兵衛さんは困窮する徂徠さんに「情け」をかけています。
豆腐代をもらわず、なおかつ「おから」を毎日届けています。
しかし徂徠さんは「握り飯」は断っています。「恵んでもらう」のを
断っているのです。商売ものの豆腐は後でお金を返せば恵とならない、
商売ものではないものをもらうのは、そこにはどうしても
「哀れみの感情。かわいそうだから」が入りこみます。
つまり、金銭の貸し借りはあくまでも対等だという近代的な理屈がここにあります。

 徂徠さんは、そんな理屈で理性的に納得しようとしながら、
実際に七兵衛さんに返したのは、二十両という大金と「店」でした。
七兵衛があげた豆腐とおからは20文。これでは徂徠さんの理屈、
商売上の等価交換は全く成立していません。
つまり、もともと困った人を助けるという行為や情けの度合いを金銭で
あるいは計数で測ることはできないということです。そもそも「豆腐」は、
父から受け継いだものであり、そこには七兵衛さん一家の全身全霊(魂)が
入っています。たまたま20文ですが、その価値は測れないほどものが豆腐には
入っていたと考えるのが妥当でしょう。もともと人間と自然で作り上げる
「もの」というものはそいした性格があったのです。
「魂」と「物」は切り離すことはできないのです。それが証明されたのが、
徂徠さんの感謝の量です。20両と店でも足りないかもしれません、
徂徠さんの命そのものを救ったのですから。
七兵衛さんの「情け」は、人間の根源に発する他者との関係概念であり、
深い深い意味があったはずなのです。

だからこそ【情けは人のためならず】で、巡り巡って帰ってくるのではないでしょうか。




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