2019年5月号

 えほんおじさんです。


 5月号のこの二作品の主人公は全く対照的です。

 「ちいさなかがくのとも」の主人公は、川の中の岩、全く動きません。
 しかしながら、岩の上や周りでは刻々と「事件」が起きています。
そう、定点観測絵本ですね。物語がそこにあります。

 他方「こどものとも」の主人公は、クリーニング屋さんの「アイロン」。
繰り返される日常のに飽きたのか、ある日、窓から飛び出して、街じゅうを
縦横無尽に飛び回り、ありとあらゆるものにアイロンをかけていきます。
そしてアイロンをかけられたものたちは、みんなひらりぺらりと伸ばされて、街は大騒ぎ。

 こんなに動き回る「主人公」も珍しいですが、
「ひらりぺらり」となった世界のものたちにも「物語」があります。


 それでは、今日もごゆっくりお楽しみください。

◆ちいさなかがくのとも 2019年5月号
「ちいさないわのいちにち」 笠野裕一/作


◎作者紹介
笠野裕一
1956年、宮崎県生まれ。東京農業大学を卒業。
絵本作品に
「ふねがきた!」
「おひさまぽかぽか」
「たんぼのぎょうれつ」
「ふねをまつ」
「ぼくんちのゴリ」
「ぼくのながぐつ」
「ゆびあそび」
「うみべのいちにち」
「じてんしゃにのって」
「ちいさなふね」などがある。

◎ストーリー紹介
 ちいさな岩に朝がきました。朝いちばんにやってきたのはトンボです。
トンボはちいさな岩の日のあたっているところにとまると、しばらくのあいだじっとしていました。

 つぎにやってきたのはセキレイ。
セキレイたちはちいさな岩にとまるとうれしそうにおっぽをピョンピョンふりました。

 つぎはカエル、そのあとつりざおをもったおじさん、サギ…ちいさないわには、
いろんな生き物がやってきて、去っていきます。

◎絵本の特徴
 森を流れる川の浅瀬にある小さな岩がありました。その岩のまる1日を定点観測した絵本です。
岩は四角く、上半分川から出ていて平らで、小さな動物たちがとまったり、人が座ったりするのに
ちょうどいい大きさです。
 朝から夜まで、岩はもちろん動きませんが、岩の上や周りではいろんなことが起こっています。
この絵本の主人公は岩で、岩が主人公の幼年絵本はきっと数少ないだろうと思います。
岩を擬人化することもなく、淡々とした語り口で描かれていますが、絵は岩をあらゆる角度から切り取り、
ダイナミックな展開を見せてくれます。作者の笠野さんは、何度もこの岩のモデルになった岩を取材しに
行ったそうで、その粘り強い観察の成果が、この絵本の丈夫な骨になっているのでしょう。
 笠野さんと言えば、船の絵本をたくさん描いていらっしゃいます。穏やかな色使いと、
はっきりした線に見覚えがある方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
つかづ離れずの対象との距離感が、ノンフィクション絵本作品にぴったりで、穏やかながらも
強い印象を残す作品が多い作家さんです。
別紙の“えほんのたのしみ”に「還暦を過ぎた今、体力的に問題がでてきています」と
書かれていらっしゃいましたが、ぜひまだまだ作品を残してほしいです。

◎読み手の感想
 笠野さんの絵本が出てくるたびに書きますが、うちの長男の0歳から3歳ごろは、
笠野さんの作品に育てられたと言っても過言でないくらいに笠野さんの絵本が大好きでした。
「ちいさなふね」という012の絵本は、毎日毎日読んでいて、どの絵本よりも喜んで聞いてくれました。
 長男が生まれたばかりのころはまだ鹿児島のマンションに住んでいて、子育てというものが
さっぱりわからず、しかも相談できる相手も近くにはおらず孤独でしたが、笠野さんの「ちいさなふね」を
読むと長男が笑ってくれるのでその笑顔に何度も救われました。ちょっとしてベビーカーで散歩できる
ようになってからは、歩いて行ける港まで、これもほぼ毎日通って船を見ていました。長男は船のことを
「ぽんぽん!」と言って喜びました。
というのも、笠野さんの「ちいさなふね」の文章で「ちいさなふねがぽんぽんぽん」という繰り返しがあり、
その「ぽんぽんぽん」というところが何よりも長男のお気に入りのフレーズだったからです。
そういうわけで、笠野さんにはものすごく感謝しています。
この感謝の気持ちを、いつかご本人に伝えたいくらいです。
今回の作品も笠野さんらしい、静かで、でもユーモアが漂っていて、いい作品だな、と思いました。

◆こどものとも 2019年5月号
「くもにアイロン」 おおぎやなぎ ちか/文 山村 浩二 絵

◎作者紹介
☆作家紹介
おおやなぎちか 秋田県生まれ。
・童話作品に
「オオカミのお札シリーズ」中川学/絵 くもん出版
「なみきビブリオバトル・ストーリー」
森川成美/作 赤羽じゅんこ/作 松本聰美/作 黒須高嶺/絵 さ・え・ら書房
・絵本作品に
「しゅるしゅるぱん」福音館書店がある。

☆画家紹介
山村浩二 1964年、愛知県生まれ。
絵本作品に
「くだものだもの」福音館書店
「おやおやおやさい」福音館書店
「おかしなおかし」福音館書店
「あのくもなあに?」富安陽子/ぶん 福音館書店
「うまはかける」内田麟太郎/文 文溪堂
「おかお おかお おかおだよ」スマ/文 童心社
「しきしきむらシリーズ」木坂涼/文 岩波書店

・童話作品挿絵
「妖怪一家九十九さんシリーズ」富安陽子/作
「絵物語古事記」富安陽子/文 偕成社
「日本の学校の怪談絵図鑑シリーズ」 常光徹/監修 ミネルヴァ書房

・著書
「怪物学抄」 河出書房新社
「創作アニメーション入門 基礎知識と作画のヒント」六耀社
「アニメーションの世界へようこそ」岩波ジュニア新書

◎ストーリー紹介
 カイダさんは、クリーニングやさん。毎日たくさんの洋服を洗濯します。仕上げはアイロンがけ。
ワイシャツ、スカート、シーツ、しわをのばしてすっきりと。何十年も使いなれたアイロンは
スイーッスイーッとすべります。カイダさんが、スーイスイとアイロンをすべらせていたそのとき、
アイロンがカイダさんのてからするりとぬけだしました。アイロンはかってに洋服をピーン。
「こりゃあいい」と、カイダさんはにんまり。

 ところが、あれあれ。電気スタンドも電話も椅子も、テーブルも、フンフンサッサッススイノスイと、
アイロンがけされてひらりぺらり。

 そしてアイロンは窓から外へ。犬ごや、郵便ポスト、電信柱にバス停も、車、高層ビルに大仏さん、
果ては雲やおばけまで・・・・・・、ひらりぺらり。さらにには街中も全部ぺらぺらにのばされていきます。

◎絵本の特徴
 奇想天外な着想で描かれる楽しい物語絵本。クリーニング屋さんのアイロンが、
街じゅうを縦横無尽に飛び回り、ありとあらゆるものにアイロンをかけていきます。
アイロンをかけられたものたちは、みんなひらりぺらりと伸ばされて、街は大騒ぎ。

 子どもたちにとって身近なアイロン。熱くて危険なので触らせてはもらえない子も多いことと思います。
でも、しわしわだった洋服が伸ばされてピーンとなる様はきっと見ていて面白いことでしょう。
そうすると洋服だけでなく、いろんなものをピーンとのばせば、なんでもかんでもぺらぺらになって、
もっと面白いのに。と、考える子どもたちももしかするといるかもしれません。
子どもたちの発想力は豊かで、大人には思いもよらないことを考えるので、絵本を発想する作家さんも、
きっと負けられないと思っているに違いありません。
 この絵本の作者のお二人も、きっと子どもたちの発想力を超えるべく、色々と試行錯誤の上に
この絵本を完成させたのだろうと想像します。まずは身近に目にするものをぺらぺらにしていき、
どんどん大きなものへエスカレートしていく。
 いろんなものがぺらぺらになって、人々が困ったり、面白がったりしている様子も細かく丁寧に
描きこまれていて、絵をじっくりみていると、そこにたくさんの物語が発生していることに気づきます。
子どものような発想力を、物語や絵の中にしっかり落とし込んで血を通わせる力量を持ったお二人の、
エネルギッシュな力作です。

◎読み手の感想
 手に届く、身近なものからどんどん大きなものへ、そして、異界までどんどん進んでいく。
想像力の翼が羽ばたく羽音が耳元で聞こえるような作品でした。
 この作品は、絵と文章が、別々の作家さんだったからこそ生まれたのではないかと思います。
お互いの発想力を戦わせて、超えていく力のバランスがちょうどよくまとまっていますね。
世界は画面の外にも広がって、広い空間を作り出しています。
絵に描きこまれた人たちの表情や、何をしているかを考えるのもとても面白かったです。
 世界がある日突然ぺらぺらになったとき、こんな風に変わってしまった世界を受け入れて
面白がれるといいですね。




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