美しさ

 えほんおじさんです。


 「美しい」ものを美しいと言葉で言ってしまっては、
「美しさ」の持つより根源的なものの多くが見えなくなってしまいます。
けれども、その一部分でさえ「美しい」と言わなければ、とらえられないものもあります。

 例えば、「ちいさなかがくのとも」今月号の「ハンミョウ」の美しさや、
「てんにんにょうぼう」の衣(絹衣)の美しさをどう言葉で表現したらいいのでしょう。
それらは均整・一様であることを超えてしまっています。そんなとき私たちは、
「絵のように美しい」とでも言わざる得ません。つまり私たちはどこまでいっても
「絵」に頼らざる得ないのではないでしょうか。
 もちろん文学や詩(文学や芸術の言葉)は、いつもその努力を怠りませんが、
わかって欲しい相手が「子ども」となると、やはり「絵本」の持つ表現力の多さは
他に比べようがないのではと思うのです。


 それでは、今日もごゆっくりお楽しみください。

◆ちいさなかがくのとも 2019年7月号
「ハンミョウの みちあんない」廣野 研一/作


◎作者紹介
 1982年、埼玉県生まれ。イラストレーター。
絵本に「スズムシくん」「ぞうきばやしのすもうたいかい」などがある。

◎ストーリー紹介
 とうちゃんとハイキングにきた。山道をあるいていたら、足元から青い虫がとびたった。
青い虫は、サーっととんで、道の先にストンとおりた。近づいたらまた飛んで道の先にストン。
「ハンミョウじゃないか」と、とうちゃんがいった。そうっとそうっとちかづいてみてみると…。

◎絵本の特徴
 ハンミョウって見たことがありますか? 青色に輝く美しい虫です。
よく見ると、青色だけではなく、赤、白、緑…様々な色に彩られていて、
虫の好きな人の間では大変人気の高い虫だそうです。
7月の「ちいさなかがくのとも」はそんなハンミョウにスポットが当てられています。
ハンミョウは飛び方も独特。サーッと飛んで、ストン。サーッと飛んで、ストン。
まるで歩く人を森の奥に案内するかのよう。こんな美しい虫に案内されてたどり着くのは
どんな場所でしょうか。ファンタジーの始まりを思わせるような、ワクワクする出会いですね。
きっと散歩中にこの虫に出会ったら、嬉しくなってしまうに違いありません。
 この絵本を描かれたのは絵本作家・イラストレーターの廣野研一さん。
廣野さんの虫へのまなざしは愛にあふれ、読むひとが虫の可愛さや美しさに
注目できるように描かれています。本当に虫の好きな人なのだろうということが、
絵から伝わってきます。きっと虫の苦手な子も廣野さんの絵を見ると虫というものの
美しさや可愛らしさに、納得するはず。身近にハンミョウのいる方は、
ぜひ本物を探しに行ってみてください。身近にいない方も、きっといつか
出会えることを信じて、絵本の世界を堪能してくださいね。

◎子どもの反応
 わが子ふたりはハンミョウを見たことがあるそうです。
しきりに捕まえたときの話をしていました。

◎読み手の感想
 実はハンミョウという虫を私は見たことがありません。子どもたちは
見たことも捕まえたこともあると言うので、(なにかほかの虫と勘違い
していなければですが)きっと我が家の近くにも生息しているのでしょう。
虫が苦手なので、子どもたちがいろいろと捕獲してくる虫箱の中身など、
あまり確認することもなく過ごしているから、もったいないことをしているのかもなあ…。
 この絵本に出てくるハンミョウは本当に美しいですね。どこかの博物館の展示で、
ハンミョウがたくさん並んでいるのを見てなんて美しいんだろう、とため息をついた
ことがあります。虫好きの人にとっては、虫は生きているほうがテンションが上がるの
でしょうが、虫の苦手なものにとっては標本のほうに魅入られたりします。
きっと何か理由があってこんなに美しい姿をしているのだろうと思いますが、
こういう姿の虫って不思議ですね。異世界への水先案内人みたいな風情に、
色々と想像力が掻き立てられます。


◆こどものとも 2019年7月号
「てんにんにょうぼう」長谷川摂子/再話 中井智子/絵


◎作者紹介
・画家 中井智子 1980年、京都市生まれ。東京芸術大学美術学部卒業。以下の作品があります。
「はちかづきひめ」長谷川 摂子 再話
「はなこ野の花 野のきつね」しん きみこ 作

・再話者 長谷川摂子(1944〜2011年)島根県生まれ。
東京大学大学院哲学科を中退後、公立保育園で保育士として6年間勤務。
著書に以下の本があります。 

「うみやまがっせん」上沢 謙二 原案 / 他
「ゆきこんこ」降矢 洋子 絵
「どいてどいて」井上 洋介 絵
「ひらひら ころころ あきまつり」沼野 正子 絵
「うーら うらら はるまつり」沼野 正子 絵
「かさ さしてあげるね」にしまき かやこ 絵
「ともだちさがしに」高久 明実 絵
「おっきょちゃんと かっぱ」降矢 奈々 絵
「どてのしたてやさん」吉田 道子 え
「たあんき ぽおんき たんころりん」降矢 なな 絵
「ことろのばんば」川上 越子 え
「きょだいな きょだいな」降矢 なな 絵
「こうちゃんこがつく」古川 タク 絵
「どろんこ」英 伸三 写真
「あかちゃん こんにちは」沼野 正子 絵
「めっきらもっきら どおんどん」ふりや なな 絵
「こいのぼり」英 伸三 写真
「こねこを だいたことある?」降矢 洋子 絵
「みず」英 伸三 写真
「クリスマスの ふしぎな はこ」斉藤 俊行 絵
「くらい くらい」やぎゅう げんいちろう 絵
「さくら」矢間 芳子 絵・構成
「おじょらぽん」さいとう としゆき 絵
「まほうのコップ」藤田 千枝 原案 / 川島 敏生 写真 / 他
「ぐやん よやん」ながさわ まさこ 絵
「はちかづきひめ」中井 智子 絵
「おでかけばいばいのほん3冊セット」やぎゅう げんいちろう 絵
「ぎょうざ ぎゅっ ぎゅっ」立花 まこと 絵
「ねこのミロ」しも ゆきこ 絵
「ふしぎなはこ」斉藤 俊行 絵
「くっく くっく」小川 忠博 写真 / 他
「ペンタとぼく」アンヴィル 奈宝子 絵
「たいこたたきのパチャリントくん」スズキ コージ え

◎ストーリー紹介
 むかしむかし、ある村にひとりもんの若い男がいた。
あるとき、山の畑ではたうちをしていた男は、天からすきとおるように
きれいな衣をなびかせた、美しい娘が三人おりてくるのを見た。
その天女たちは衣をぬいで川で水浴びをはじめた。
そこで、男はすきをみてその衣を一枚とってかくしてしまった。
水あそびをおえて岸にあがった天女たちのなかのひとりが衣がないとさわいでいる。
ふたりの天女は先に天にのぼってしまい、衣のない天女はひとり残されてしまった。
「たいせつなころもをなくしてしまったが、おまえさまごぞんじないか」
と男にたずねたが、男はしらん、といって、天女をうちにつれていってしまった。
こうして天女は男ととくらしているうちに、やがて夫婦になって、たろうという子どもまでうまれた。
ところがあるとき天女は、衣のありかをしり、天にかえっていってしまった。
夕顔のたねをたろうにわたし、「まけばぐんぐんつるがのびててんにとどくから、
あとでのぼってきなされや」といいのこして…。

◎絵本の特徴
 7月7日と言えば、七夕。笹の葉に、願いを書いた短冊をつり、色とりどりの紙で飾ります。
織姫と彦星のお話の絵本も色々ありますね。話の大筋はだいたい同じですが、おとこが
牛飼いだったり、この絵本のように百姓だったり、少しづつデティールが違います。
デティールの違いはあれど、どのお話でも、天女の羽衣を男が盗んで、その男と天女は
夫婦になり、子どもが生まれるが、天女は羽衣を見つけて天に帰ってしまう。
男は天女を追いかけて、天に登り再会を果たすが、大きな河に隔てられてしまう。
そして7月7日、一年に一度だけ会えることになって、お話は終わります。

この7月号の「こどものとも」は、新潟の昔話を元にしているそうです。
昔話は口から口に伝わるうちに、その土地の風習や風土と重なり合って、
少しづつ違う味わいになっていくのが面白さのひとつですね。
 文章を書かれたのは長谷川摂子さん。「めっきらもっきらどおんどおん」
「きょだいなきょだいな」など、絵本史に残る名作をたくさん残されている作家さんです。
残念ながら2011年にお亡くなりになられましたが、そのお名前は100年後にも作品と共に
語られることでしょう。奥深い物語世界を展開する言葉には、書き手の「我」を
感じさせません。その分たくさんの隙間があり、読み手がその隙間から物語世界の中に
ぐっと入っていくことができます。ですから長谷川さんの言葉は、絵の力を最大限に
引き出し生かします。「我」のない言葉に触発された画家さんの想像力が何にも
邪魔されることなく、豊かに響きあうのだろうと思います。

 今回の絵を描かれたのは中井智子さん。淡い優しい色づかいの中の、力強い線にはっとします。
印刷された絵でこんなに美しいのだから、原画はさぞや…と思いを馳せてしまいます。
特にユウガオのつるがどんどん伸びていくシーンは圧巻です。強い生命力が画面の中で躍動し、
その勢いに息をのみます。
文章も、絵も美しい絵本。七夕の前にぜひ子どもたちに読んでみてくださいね。

◎子どもの反応
 読んでいる途中で、七夕の話だ!と気づいた上の子。
七夕のお話は牛飼いが出てくる別の絵本をよく読んでいたので、
ちょっと違うな、と不思議そうにしていました。

◎読み手の感想
 登場人物の表情をあまり強く描かず、背景でその心情を表すやり方に読んでいる人の
気持ちも吸い寄せられて、少し靄のかかった幻想的な世界の中引き込まれていることに
気づきます。きっと、天女を妻にした男はずっとこういう心情で暮らしていたのでは
ないのかな…、と。美しい天女を妻にしたけれどどこか現実味がなく、常に心には
不安が巣くっていたのでしょう。こういう羽衣伝説に登場する男って、小心者っぽいわりに
大それたことを平然とやりますよね。羽衣を盗んだのは自分なのに、天女が天に帰って
しまうとなんとなく被害者っぽく悲しんだりしていて、不思議です。
でも、これは象徴のお話であって、そういう現代的な解釈を入れないほうが良いのだろうと
も思います。何でもかんでも自分の物差しで測ろうとすると、世界はどんどん小さなものに
なってしまいます。天女なんて、きっと私の短い物差しでは測れない存在なので、
色々な解釈を入れず、物語を受け止めていこうとおもいます。




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