2019年10月号
えほんおじさんです。
「タコのたこあげ」(年少版こどものとも10月号)という作品は、
彫刻刀で厚紙を彫る「紙刻繪」という手法で描かれたそうです。
だからでしょうその「太い線」が、2、3歳児の時期の自己主張を大いに物語っています。
特にタコ君の表情の豊かさは、ちょうどこの時期の子どもそのもの。
それゆえすぐに子どもたちの共感を呼び起こすことが見て取れます。
他方、「ヴィンセントさん(こどものとも10月号)」の方は、
ほとんどその表情を動かしません。極めて微妙な表情変化なのです。
そしてヴィンセントさんの行動も、毎日決まった時間に起きて、
決まった時間に寝るという規則正しい暮らしを繰り返しています。
ところがそんなヴィンセントの仕事は子ども達の夢を実現するという
壮大なものなのです。これも心が「内化」する年長さんの心に
ちょうど見合っているのではないでしょうか。
それでは、今日もごゆっくりお楽しみください。
◆年少版こどももとも 2019年10月号
「タコのたこあげ」 山ア克己/作
◎作者紹介
山崎克己 1954年東京都うまれ。
絵本に「ひとくちどーぞ」「おふろだいきらい」「ミケがじゃまして」
「かめのおひるね」「キャラメル」「ふろしきでんしゃ(BL出版)」などがある。
◎ストーリー紹介
タコくんが凧屋さんで凧を八つ買いました。海の上でタコが凧をあげました。
その凧にちょうちょが飛んできました。
「すこしやすんでいったらどーお? (海の上ですからね)」と、タコくん。
ちょうちょは凧にとまって一休み。そのあともちょうちょがどんどん、
どんどんやってきて、凧にとまります。凧はもう満員です…。
◎絵本の特徴
ユーモアいっぱいのおおらかな絵本。タコの凧あげって、だじゃれみたいで面白いタイトルですね。
タイトルだけ聞くと、タコが八本の足で凧揚げを楽しむんだろうな…と、そのままの内容を想像します。
しかし、ちょうちょさん、という予想外の存在が登場してきて、物語は意外な方向に展開していきます。
作者の山崎さんは、子どものころに凧揚げをよくやっていたそうで、そのエピソードを別紙の
“絵本のたのしみ”のほうに書いていらっしゃいました。この絵本の意外な展開は、
子どものころに慣れ親しんだ遊びから発想されたからこそなのかもしれません。
子どもの遊びをみていると、いつも大人の予想を超えてダイナミックに展開していきますね。
子どもは大人より経験が少ないからこそ、ボーダーラインをいとも簡単に超えていきます。
しかし、それこそが、新しい未来を作っていくエネルギーになり得るのだろうと思います。
子どもの発想力を大事に守り育てていくために、絵本のちからを借りてみるのも良いのではないでしょうか?
ぜひ子どもたちと豊かな発想力の世界をお楽しみください。
◎子どもの反応
ちょうちょがいっぱい凧にとまるところで大喜びしていました。
◎読み手の感想
脱力するようなおおらかな絵が良いですね。読んでいるとリラックスして、楽しい気分になります。
明るくて、はっきりした色も良い。もっと若いころはもう少し抑えたトーンの色味が好きでしたが、
最近はこういう明るい色も好きになりました。
タコ君の表情もなんともいえず、面白いです。どの場面でも感じていることが手に取るようにわかるので、
きっと子どもたちはすぐに共感してしまうのではないでしょうか。
話は変わりますが、つい先日下の子の誕生日でした。下の子は無類のタコ好きです。
2週間ほど前に市場で見た生きたタコを買ってほしいと言うので、おじいちゃんとおばあちゃんが
市場までタコを買いに行きました。氷の中に数時間いたタコはもうずいぶん弱ってはいましたが、
まだ生きていて下の子かそれをしばらく触って楽しんでいました。
リアルで見るタコはイラストで描かれるタコとは別物で、なんだか得体のしれないぐんにゃりした生き物です。
赤くもありません。あのタコがいつの間にデフォルメされてこんなに親しみやすくてかわいい仕上がりに
なったんだろう? とその歴史を知りたくなります。人の想像力って面白いですね。
ついでに言うと、きっとイラストでよくみるタコは、ゆであがったタコなんだろうなあ。
◆こどものとも 2019年10月号
「ヴィンセントさんのしごと」 乾栄里子/文 西村敏雄/絵
◎著者紹介
・作家 乾栄里子 1964年東京都生まれ。東京造形大学デザイン科卒業。
絵本に「バルバルさん」「バルバルさん きょうは こどもデー」「ふくろうのダルトリー(ブロンズ新社)」
「ちびうそくん(PHP)」などがある。
・西村敏雄 絵/1964年、愛知県生まれ。東京造形大学デザイン科卒業。
絵本に「バルバルさん」「どうぶつサーカスはじまるよ」「もりのおふろ」「もりのおふとん」
「まてまてタクシー」「さかさことばで うんどうかい」「アントンせんせい(講談社)」
「ライオンのすてきないえ(学研)」など多数ある。
◎ストーリー紹介
ヴィンセントさんは、毎朝7じに目をさまします。顔を洗って着がえ朝ごはんです。
朝ごはんをおえると、帽子をかぶってカバンをさげて家をでます。
ヴィンセントさんが古い建物の前でとまりました。「ヴィンセントじむしょ」と看板にかいてあります。
事務所の郵便受けには子どもたちから手紙がきます。ヴィンセントさんはイスにすわると、手紙を読みはじめました。
「ぼくのところにはゆきがふりません。ゆきであそびたいです」南の島のトントより。
ヴィンセントさんは、「きょうはこのてがみにしましょう」といって、なにか調べはじめました…。
◎絵本の特徴
人気絵本「バルバルさん」を描かれた乾さん、西村さんコンビの最新作です。
今回の主人公も、バルバルさんと同じくおじさんです。丸顔でちょび髭、
緑色の蝶ネクタイがよく似合っています。ヴィンセントさんは、規則正しい日常を
おくっているようですがその仕事は特別。世界中の子どもたちから来た手紙を読んで、
その夢をかなえたり、困ったことを解決したりするのが彼の仕事です。
ヴィンセントさんは、仕事に対してとても真面目に、真摯に取り組んでいるのが
絵本を読んでいればよくわかります。
例えば今日のお題は、南の国の男の子の「雪で遊んでみたい」という希望を叶えること。
ヴィンセントさんは、淡々としかし情熱的にその仕事をやりとげます。
絵本の冒頭は、「パンやのくまさん」に似ているので、ヴィンセントさんの静かな日常を描くのかな…?
と思わせておいて、この壮大な展開。しかし当のヴィンセントさんはいたって普通なところが
この絵本の一番の魅力です。どんな壮大な仕事でもヴィンセントさんにとっては日常。
これならどんな無理難題でもやってくれるんじゃないかな…?と 思わせてくれます。
さすがプロフェッショナル! 絵本を読み終わる頃には、みんなヴィンセントさんにどんな手紙を書こうかな、
と考え始めているはずです。
◎子どもの反応
あまりわかりやすい反応はなかったのですが、熱心に聞いていました。
◎読み手の感想
ヴィンセントさんにはあまり表情が無いのですが、よく見ると場面場面でちょっとづつ表情が変わっていて、
ヴィンセントさんの心の動きが想像できて楽しくなります。
若いころからあまりあまり感情が表に出ない人だったのか、長年の修行? の成果なのか…。
ヴィンセントさんがこんな完成された“おじさん”になるまでにはきっといろんなことがあったんだろうなあ。
時々、街で見かける完成された“おじさん”のバックグラウンドを想像したりするのが好きです。
でも、この“おじさん”って最近ではあまり見かけない気がしませんか?
ほとんど絶滅危惧種だと言ってもいいかもしれません。
きっと時代が変わって全体的にみんな年齢より若くなり、欲望や消費の在り方が違うものになって
きたせいなんじゃないかと私は思っていますが。
知っていましたか?日本の絵本の90%はホンモノではないんです。 | |
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