絵本などを探しています

 フランス在住のMさまからの質問です。
遠いところからありがとうございます。

●質問
えほんおじさん、または川口様

こんにちは。
川口様のメールマガジンを、絵本検索中に偶然みつけました。
川口様のご意見に賛同するところが多く、嬉しく思っています。

 ところで、今、探している本が2点あるのですが、どうもうまく
見つけられないので教えていただけたらとメールします。


1)「〜あげる」「〜くれる」についての絵本を探しています

 私は在仏でして、娘(3歳半)には日本語で接し、日本の絵本を
読み聴かせしています。
 しかし、日本語の会話の難しさというのがありまして、
それを絵本を通じて教えることができれば
自然かつ楽しいと思い、そういう本を探し中です。

 今、娘がピンとこないらしいことは「〜あげる」「〜くれる」
です。
「ママ、隣のおばさんが私にお菓子あげたの」
というふうに娘は使うのです。

 隣のおばさんにしてみれば、「お菓子をあげた」のですが、
もらった側としては「お菓子をもらった(くれた)」わけで、
普通の日本人は疑問にも思わず使う事柄ですよね。

 仏語にはこういう観念がないので、比較(無意識のうちに)
している子供にとってピンとこないようです。

 そこで「そう、おばさんがお菓子くれたのね」と言いつつ
間違いに喚起させてはいても、
その場では正しくまねはするものの、観念として定着しません。

というわけで、こうした言葉使いに気がつくことのできるような
絵本、ありませんでしょうか。


2)4〜5歳向けの、日本昔話集を探しています

 日本の家族が『3さいだもん おはなししましょ』
(学習研究社刊)という本を贈ってくれました。

 童話集のかたちになっていて、
「さるかに」「狼と7匹のこやぎ」
「ブレーメンの音楽隊」「一寸法師」「北風と太陽」
など、有名な童話が入った100ページほどの本です。

 コンセプトは悪くないと思います。
しかし、絵がどれも最悪です。

 そして100ページしかないので、話の展開を説明する
文章に対応する絵柄を載せることができず、
結果として、読み聞かせしても本人がピンとこない
(絵を頼りに理解することができない)ことが多く、
残念です。

 童話別に、1冊ごとに絵本を買えば問題は解決ですが、
私達は長距離移動することが多いので、
持ち運びしやすい形態の童話集をと探しているわけです。

 その意味で、上記の本は形態・コンセプト的には理想的でした。
しかし、絵に魂のない絵本はゴミ同様だと思っています。

 これは独り言ですが、特に幼児向けの日本の昔話の絵本に、
アニメぽい絵柄を挿絵に使っているものが多い印象があり、
購入する気にもなれません。
リアルな絵を求めているわけではありません。西洋の童話に
対してはなかなか味のある挿絵を見つけることができるのに、
不思議です。

説明がてらで長くなってしまいました。
お返事いただけましたら幸いです。

○答え
 ご質問ありがとうございます。

私の意見に賛同する点が多いとのこと、とても嬉しいです。

さて、ご質問ですが、


1)「〜あげる」「〜くれる」についての絵本を探しています

 これは困りました。
このような質問は始めてですから。


> 普通の日本人は疑問にも思わず使う事柄ですよね。

 確かにそうですね。考えたこともありませんでした。

 でも、よく考えてみれば、幼児はやはりこの問題に
混乱する時期があることに気づきます。

 まして在フランスとのこと、非常に難しい問題のようです。


 「あげる」は、
「やる」「与える」のへりくだった言い方(謙譲語)だそうで、
ここには、自己と他者ということと、日本語の敬語の問題が
加わっています。

「絵本を読んであげる」
「絵本を読んでやる」

 このどちらを使ったらいいか、いまだに迷っています。
HPでも、混在していることにお気づきでしょう。


 「くれる」も難しいですね。
「くれる」には、乱暴な言い方ですが「与える」と、
他人が好意をもって「与える」という両方の意味もありますね。
「もらう」は、「他人の好意を受ける」が本義のようです。


 このように難しいのですから、
「幼児は正確に使えなくてもいいのではないか」
というのが私の意見です。


「自己と他者」の問題

※これにはとてもいい絵本があります。「わたし」です。

HP解説をお読み下さい。


 5、6才から「自己」がはっきりしてきますから、
自然にうまく使えるようになると思います。

 ただ、これは日本語環境にいる子どものことですね。
在フランスですので、その点ハンデが大きいです。

 私の知る限り、そこに焦点があたった絵本はみあたりません。
 おそらくこの問題は、いかにたくさんの言葉に触れるかしか
ないように思います。

 在フランスですから、結局どれだけたくさんの本を読んで
あげるかではないでしょうか。
(日常会話の語彙数は非常に少ないですからね)


 ごめんなさい、いい本があるかもしれませんので、
今後は気をつけて、見ていきます。
みつけたら連絡致します。


2)4〜5歳向けの、日本昔話集を探しています

 こちらの質問には、自信をもって答えることができます。

●日本の昔話全5巻

  1 はなさかじい
  2 したきりすずめ
  3 ももたろう
  4 さるかにかっせん
  5 ねずみのもちつき

 いまの日本では、このシリーズが最高だと思います。
各巻50、60話、合計301話の日本昔話が集められています。

 日本語・共通語で書かれています。

 もしどこか地方のご出身であれば、 自由に地方語に変えて
読むことができます。

 ただしこのシリーズは昔話集ですので、「絵」はさし絵が
少しあるだけです。

 赤羽末吉さんのさし絵はとてもいいですが、在フランスで、
日本の風景や文化になじみ薄いとすれば、昔話集より、絵本の
ほうがいいかもしれません。

 その場合にはシリーズは、あるにはあるのですが、シリーズ全体 どれもいいというのは今のところないといっていいでしょう。
そうすると、ばらばらに選んでいくしかありません。


 たとえば、

画家では、赤羽末吉さん、太田大八さんのもの、
文章では、稲田和子さん、瀬田貞二さんのもの、
小沢俊夫・赤羽末吉コンビのもの、

といった具合にです。


 私のHPに「むかしばなし絵本」一覧をつくっています。

選書の際のご参考にどうぞ。

>『3さいだもん おはなししましょ』という本を贈ってくれました。

 せっかく日本のご家族が送ってくださったのに
申し訳ないですが、このようなお話集は問題だと思います。
お子さんの反応のほうがまったく正しいといえるでしょう。


> 特に幼児向けの日本の昔話の絵本に、アニメぽい絵柄を挿
> 絵に使っているものが多い印象があり、購入する気にもなれません。

 おっしゃる通りで、確かにこういった絵本が本屋さんを
覆っているのは事実ですが、一方「日本の絵本」は世界一
レベルが高く芸術性ももっとも優れているのです。

 昔話にとって最も大切なことは、「むかし」の雰囲気ですね。
「むかしの世界を体験」できないとだめですね。
アニメや現代的な画風が昔話に合うはずはありません。




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